建築・建材展 2006 会場レポート1(3月7日)~安全・安心志向に応える建材の出展が増加~

第12回「建築・建材展2006」(東京ビッグサイト・東5~6ホール)が、3月7日(火)に開幕した。出展社数は283社と過去最大の規模となり、来場者の出足も好調。午後にはかなりの賑わいを見せた。初日は、快適・健康・安全な住環境・商環境をめざす住宅建材、商建材の中から主に環境配慮型の製品や、健康建材、防犯製品など、ユーザーが安心して使用できる「安心建材」を選び、レポートしてみた。



■初めて目にする「ツキ板」に興味津々


 「えっ、これって何」と多くの方が立ち止まり、薄いシート状のものを手にしている姿が印象的だったのは『北三』のブース。原木を最小で0.2ミリという厚さに削った「ツキ板」と呼ばれる素材を実際に展示し、そのサンプルを持ち帰ってもらおうというプレゼンテーションが好評だった。ツキ板はそれ自体が単体で使われることはごくまれで、通常は金属、ガラス、アクリル、不織布、木といった基材に貼り付けてパネルにしたものが商品となる。従来は、そのパネルを展示していたのだが、素材の素晴らしさを訴えたいという意図から、今回のようなプレゼンテーションになったそうだ。合成樹脂などと異なり、無垢の木を薄くスライスした素材なので、自然の美しさと質感を味わえ、しかも環境にやさしいのが魅力。スピーカー、電気スタンドの傘、手帳などの表紙のほか、イタリアの高級家具にも採用されるなど、新たな用途もあるという。



 
ツキ板のサンプルを展示し、その製造過程をビデオで説明するプレゼンテーションに、
多くの来場者が興味を抱いていた北三のブース。



新たな用途に用いられているツキ板をディスプレイした空間。


■さらに進化するウィンドウ・フィルム


 用途に応じた各種フィルムの開発・製造を得意とする『住友スリーエム』。これまで、地震に強い飛散防止フィルム、衝撃に強く事故や災害はもちろんのこと防犯性の高い貫通防止フィルムなど、安全性に優れたフィルムを提案してきたが、今回新たに出展されたのが「ハイパフォーマンスウィンドウ・フィルム70」(仮称)。窓用の断熱フィルムだが、金属膜を使用しないナノテクノロジーによる光学機能膜により、透明性に優れているだけでなく、ビルの電磁波障害を抑えられるのが大きな特徴だ。なおブースでは、赤外線をフィルムがカットすることを実証できる簡単な実験コーナーを併設。自分の携帯電話を使って確かめることもできる。




断熱性能を確かめることができる実験など、
性能が目で見てわかる展示が好評の住友スリーエムのブース。



フィルムが赤外線を遮ることを自ら確かめられる体験コーナー。


■防犯性能の高いマンションドア~5万通りの組み合わせが可能に


 高い防犯性能が求められる玄関ドアだが、機能性だけでなくデザイン性も製品選びの重要なポイントとなる。三和シヤッター工業では、ドアパネル、ドア枠、錠前、エントランスユニットなどのバリエーションを組み合わせ、カラーなどのシミュレーションが簡単にできるシステムを構築した。それが最新のマンションドア「X-DOOR(エックスドール)」。その組み合わせは約5万通り。従来の製品でもオーダーすることはできたが、価格にはね返った。しかし、「X-DOOR」では防犯性能をはじめ、デザインを自由に選べ、しかも価格を抑えられるというメリットがある。




防犯性能に優れ、デザインのバリエーションが豊富な「X-DOOR」の
プレゼンテーションを行っている三和シヤッター工業のブース。


■室内環境中の気になる物質を迅速に測定する


 近年急浮上したアスベスト問題。また、従来から問題視されていたシックハウス症候群。これらの健康被害に関する測定・分析に関するノウハウを得意としているのが、三菱化学グループの『ダイヤ分析センター』だ。例えばアスベストの測定では、分析結果を出すまでにピーク時には2~3カ月かかっていたが、交替制の分析体制により1週間程度まで短縮。今後も、解体時のアスベスト問題が続くだけに、こうした迅速な対応はありがたい。一方、シックハウス症候群の原因となる化学物質の濃度測定に関しては、これまでは建材の一部をサンプルとした測定が主だったが、15.6立方メートル(4.5畳相当の空間)の大形チャンバーを用意。建材はもちろんのこと、家具や家電製品などをそのまま入れて、化学物質の放散試験を行うことができる。このほか、光触媒による化学物質濃度低減の実証試験、可塑剤や難燃剤などに含まれるSVOCの放散試験行うなど、三菱化学が培ってきた技術を幅広く紹介している。




アスベストやシックハウス症候群の原因となる化学物質の
測定に関するプレゼンテーションを行うダイヤ分析センターのブース。


■使いやすさを追求して生まれた形状


 手すりはストレートなパイプという概念を打ち破る、くねくね曲がった「クネット」。手すりを使って階段を昇ったり、立ち上がったりするとき、握力や腕力が低下したお年寄りにとっては力が必要となるため、適度に湾曲しているほうがつかみやすい。そのような機能性をもとに開発された商品で、比叡山延暦寺、湯島天神の男坂などの階段にも用いられている。




日本で「クネット」を製造販売しているクネットジャパンのブース。


■薬剤を使用しない防蟻処理


 住宅にシロアリを寄せ付けない防蟻処理といえば、日本では木材に塗布する薬剤をイメージするが、オーストラリアで開発された「ターミメッシュシステム」はステンレス製のメッシュだ。シロアリが侵入しやすい部位に施工することで防除できるので、健康被害などの心配がなく、薬剤より効力が長いという。




ノンケミカル メッシュ防蟻工法「ターミメッシュシステム」の
普及に努めるターミメッシュジャパンのブース。


■省エネという観点から見た建材とは


 特別企画「住まいと街の省エネを考える」では、既存の分譲・賃貸集合住宅におけるESCO(省エネ支援サービス)、リース手法などを活用したビジネスモデル、戸建て住宅の省エネ促進事業を紹介している。本企画に参加の各社ブースでは、省エネに貢献する建材・設備機器をはじめ、景観に配慮した材料の提案やこれらに関するパネル展示が行われ、関心の高い来場者が熱心に見ている姿が目についた。また、関連のプレゼンテーションが計9回行われ、短時間ながら当を得た内容であった。今後は、建材・設備機器単体による省エネ効果だけでなく、複合的な効果が求められる時代。こうした流れを先取りする、本企画をぜひ見ておきたい。




特別企画「住まいと街の省エネを考える」のプレゼンテーションの様子。


 (ライター・西村弘志)