会場レポート2(3月4日)~日本の省エネ技術と注目の新製品の紹介~
2日目を迎えた第15回「建築・建材展2009」(東京ビッグサイト・東5・6ホール/出展社数278社、出展小間数606小間)。今回は、特別企画「最先端のエネルギー・環境技術を導入した近未来型エコ住宅"ゼロエミッションハウス"」(東6ホール)をはじめとする、エコロジー・省エネ関連の建材製品・技術をレポートしてみた。
(ライター・西村弘志)
地球温暖化抑制に欠かせないエコロジー&省エネルギー
特別企画「最先端のエネルギー・環境技術を導入した近未来型エコ住宅"ゼロエミッションハウス"」【協力:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)】
本年は、ポスト京都議定書として、2013年以降の温暖化対策に関する国際ルールが決定される年。太陽光発電システムや燃料電池など、住宅向け環境対応製品が注目されているが、本企画では、昨年7月の北海道・洞爺湖サミットで話題になった「ゼロエミッションハウス」の模型を展示。エコロジー&エコノミーが今後の課題となっている建築業界において、プロトタイプともいえる同ハウスで使われた太陽光発電システム、風力発電機、高効率照明、環境配慮型建材など10の先端技術をわかりやすく紹介している。
「ゼロエミッションハウス」の模型を展示する『NEDO』のブース。
「ゼロエミッションハウス」の模型。
最先端のエネルギー・環境技術に関するブース内ツアーの様子。
透明度と遮熱性能を両立させ、飛散防止性能も備えた窓用フィルム
時代を先取りして研究開発に取り組み、ユニークな建築材料を提案する『住友スリーエム』。本展示で紹介している「マルチレイヤー"ナノ"シリーズ」は、超極薄多層技術により厚さ50ミクロンに200層以上の高分子材料の膜を積層した窓用フィルム。金属を使わずフィルムを積層させることにより、近赤外線を効果的にカットし暑さを低減する一方、電波を透過するため携帯電話などの電子機器もストレスなく使える。また透明度が高いため、近隣の建物への反射が少なく、遮熱性能ならびに飛散防止性能も備え、省エネ性や安全性にも優れており、導入実績も多数。今後は、透明度や透過率の異なるバリエーションのニーズが高まると考えられている。
ユニークな提案で時代を先取りする『住友スリーエム』のブース。
「マルチレイヤー"ナノ"の遮熱性能を確かめることができるブーズ内の体感コーナー。
反射を利用して光を導く採光システム
建物が林立している都市部では、快適かつ健康的な暮らしを担保できるよう、斜線制限、日影規制、高度地区など、建築物の高さを制限する法律や条例が定められている。しかし、それでも十分な日照が確保できないのが実情だ。そこで、表面処理鋼板界のパイオニアである『東洋鋼鈑』が提案するのが、同社が得意としている銀めっきの技術を活かして開発した鋼板材<ミラーコートK>(反射率95%以上)を利用した「どこでも光窓」。鏡面になっているダクト内に自然光を取り込み、反射を利用して光を屋内の暗い個所へ導く採光システムだ。照明の使用を抑え、CO2の排出量を削減するエコプロダクツとして、工場や研究所をはじめ、一般の戸建て住宅でも使用されている。
光を導く「どこでも光窓」を提案する東洋鋼鈑のブース。
「どこでも光窓」によって導かれた光が、まるで天井に施された照明のように明るく輝いている。
光伝送技術を応用した照明器具
北海道・洞爺湖サミット会場で、国内最先端の技術として『マテリアルハウス』の「木漏れ日内蔵型光ダクト」「スカイシャワー」が採用された。同社が提案している光ダクトシステムは、取り入れた光を反射によって建物の中へ運ぶ仕組みだが、実用化にあたっては事前にシミュレーションを行い、室内の照度が一定に保たれるよう放光部の光量を調節している。光ダクトシステムの光伝送技術は、照明器具「ラインライト」にも応用されており、通常の照明器具よりも発光域が長く広範囲にわたって均一な光を演出。合わせて、光源を端部に内蔵する構造により、少ない光源で広いエリアを明るく照らすとともに、高所でのランプ交換の必要がなくなるなどメンテナンスの軽減につながる。「スカイシャワー」は、トップライトからの光を効率よく下方に届けるシステムで、吹き抜け効果をより高めることが可能だ。
光伝送技術を活かした提案を行うマテリアルハウスのブース。
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の導入例をもとにして、光ダクトの仕組みを紹介。
太陽光を上方に反射して都市を冷却
自然素材である<土>から作られる「美濃焼」。廃棄された後に再び<土>に戻るエコロジーな素材だが、笠原町美濃焼振興協議会では、さらに一歩進んだエコロジー&省エネにも挑戦している。名古屋工業大学との共同開発製品「クールアイランドタイル」は、外壁タイルに角度を付けて太陽光を上方に反射することで、道路や建物周辺への反射光と放熱を防ぎ、CO2の排出削減に貢献。大規模なビルが多い都市部では、ヒートアイランド現象を解消できるエコロジー&省エネ建材として期待される。表面に凹凸があるため、汚れなどの対策として、酸化還元触媒によるセルフクリーニング加工を施す。今後は、官公庁や公共施設での使用実績を足掛かりとして、全国へ普及させたいという意向だ。
「クールアイランドタイル」で美濃焼の新たな活路を見出した笠原町美濃焼振興協議会の展示エリア。
左:「クールアイランドタイル」を紹介する専用のブース。
右:「クールアイランドタイル」と従来のタイルの反射の違いを体感できるコーナー。
瓦が本来持っている風合いや耐久性を活かす
シンプル&モダンが主流となっている現代建築において、『淡路瓦工業組合』では瓦のよさを活かしながら、瓦の新たな用途を模索。本展示では、多くの設計者にリサーチして得られた結果に基づき新たな用途の瓦を開発した。それが、モダンなデザインの「壁瓦」と、<敷瓦>+<無垢材>の組み合わせによる「複合床材」。さらに、屋根瓦にはフラットな「平板瓦」も提案している。
新たな和瓦の用途を提案する『淡路瓦工業組合』のブース。
左:L形敷瓦とブラックウォールナット無垢材による「複合床材」。
右:ヨーロッパの石造建築を彷彿とさせる風合いの壁材「銀奏」。
周囲の環境や景観にもマッチする緑化システム
乾燥に強く土壌を必要としないコケ植物の特徴を活かして『モス山形』が開発した、屋上・屋根・壁面の緑化に適した「コケボード」。雨水が当たれば灌水も必要なく、メンテナンスが楽。しかも、軽量なため躯体への負担が少ない。そのため、工場をはじめ、マンション、商業ビル、公共施設、戸建て住宅と用途は幅広く、今後の省エネ効果が期待される。
屋上・屋根・壁面の緑化に「コケ」を提案する『モス山形』のブース。
自重の20倍の保水能力があるコケ植物を用いた「コケボード緑化システム」。
家づくりに関するその他の興味深い取り組み
FCではない会員組織でビルダーや工務店をサポート
建材を供給する商社『イビゲン』が、ビルダーや工務店をサポートするために、昨年設立した「BinOマスターズクラブ(BMC)」。夢のマイホームではなく「夢のためのマイホーム」、ビルダーが売りたい家ではなく「お客様が買いたい家」そして「売ってほしい」と望まれている住宅を提供する会員組織だ。ここでプロデュースされるのは、<Enjoy Life><Smart Life>といったライフスタイル提案型の住宅で、地球環境にも配慮した家づくりが行われる。従来のFC方式のようなロイヤリティーはなく、会員は加盟時の初期コストと建材などの材料費を負担するだけ。現在、全国で30社が加盟している。
「BinOマスターズクラブ」への加盟を提案しているイビケンのブース。
ライフスタイル提案型住宅「BinO」のイメージをカタチにしたプレゼンテーション。
質の高い住宅ストックを確保する長期優良住宅
これまでの日本の住宅の耐用年数は、欧米に比べはるかに短く、質の高い住宅ストックの確保が、省エネやエコロジーにもつながるため、国土交通省を中心に<長く快適に住める家づくり>が論議されてきた。このような政策に基づき、昨年11月末に成立したのが「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」。耐久性や耐震性などに加え、補修・リフォーム対応、住宅に関する履歴情報の蓄積と活用などの条件を満たせば長期優良住宅と見なすというものだ。本パネル展示は、この長期優良住宅に関する最新情報をまとめたもので、「安心で安全な街づくり」へのニーズに呼応して新設された「耐震・防災建材ゾーン」との連携を図っている。
国土交通省が取り組んでいる「長期優良住宅」のパネル展示。