会場レポート2(3月10日)~最新の技術により開発された注目の製品・サービス~
開催2日目を迎えた、第16回「建築・建材展2010」(東京ビッグサイト・東5・6ホール/出展社数251社、出展小間数530小間)。初日は冷たい雨が降るなか、24,377人もの来場者が訪れた。今回は、毎年ニーズの高い「安全・安心建材」をはじめ、新設された「耐震・高耐久建材ゾーン」をレポートしてみた。
(ライター・西村弘志)
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機能性のみならず美しい意匠にもこだわる提案
□200超層のフィルムで省エネ・快適な室内空間を実現
可視光線や携帯電話などの電波はを透過する一方、夏の暑さの原因となる赤外線をカットし、有害な紫外線を吸収するとともに、飛散防止の効果もある、『住友スリーエム』の窓用フィルム「マルチレイヤーNanoシリーズ」。今回は、網入りガラスにも貼れる「Nano90S」が新たに加わり、用途がさらに広まった。また、意匠性を高めることができる装飾用デザインフィルム「ファサラ ガラスシェード」も出展しており、「Nanoシリーズ」と組み合わせて使用することで、快適性・省エネ性・安全性に加えデザイン性が向上。ビルや店舗の窓際を明るく快適に、そしてファサードをより美しく仕上げることができる。
窓用フィルムをはじめ、様々な建築材料の展示を行っている『住友スリーエム』のブース。
「マルチレイヤーNanoシリーズ」の性能を体感できるコーナー。
「ファサラ ガラスシェード」の「ナノ・イルミナ」によるグラデーション効果。
最上部は「Nano90S」のみで透明だ。
□水や油をはじき、汚れが付かない化粧板が新登場
高圧メラミン化粧板「デコラ」を提案している『住友ベークライト』が、今回の展示会で発表する新商品「デコラ ロータス」(受注は4月から)は、撥水性・撥油性に優れたメラミン化粧板。水や油をはじくため、汚れが目立たず、水濡れなどもサッと拭き取るだけと簡単。以前からこのようなニーズはあったものの、ここまでの撥水・撥油機能を実現させたのは業界初。飲食店の什器をはじめ、キッチンまわりや洗面化粧台などに最適だ。
不燃メラミン化粧板やソリッドコアパネルなどの多彩な製品による
空間演出が美しい『住友ベークライト』のブース。
キッチンカウンターに使用した「デコラ ロータス」。撥水性・撥油性が最も顕著にわかる。
水や油で汚れやすいキッチンキャビネットなどの扉面にも最適だ。
□機能性はもちろん優れたデザイン性を発揮する
『スガツネ工業』のブースでは、今回も新たな提案が目白押しだ。オリジナルの電動シャッターシステム「アーキテリアシャッター」は、ロートアイアンタイプに加え、面材にガラスを用いたタイプがラインナップされ、全面フラット仕様の特徴がより強調された。ドアの開閉機構では、軽くスムーズに開けられ、閉じる時には軽く押すだけでドアがゆっくりと閉まるソフトクローズ仕様の「開き戸用ドアダンパー」が興味深い。「隠し丁番」と合わせて使用すれば、丁番とダンパーがドアの表面・裏面いずれからも見えないため、意匠性を損ねることがない。ソフトクローズ仕様はドアだけでなく、家具の引き出しや重量のある引き戸にも採用でき、住宅はもちろん、オフィスや公共施設でも効果を発揮できるユニバーサルデザインとして有効だ。このほか、厚さ19mmの薄型LED照明は、「棚下灯」として開発された製品だが、ほかにも用途が考えられそうである。
独自開発の建築金物や機構部品を使った製品を毎回数多く展示している『スガツネ工業』のブース。
「アーキテリアシャッター」の実演には多くの来場者が関心を寄せている。
閉じた時に、ファサードの壁面とフラットになる「アーキテリアシャッター」。
面材にガラスを用いたタイプは、幅2500mmまで対応が可能だ。
ラクに開閉でき、デザイン性に優れた「開き戸用ドアダンパー」(ドア枠上部)と「隠し丁番」を装備したドア。
□適度な光も取り入れプライバシーも確保する
ブラインドは遮光するためのものだが、適度に光を取り入れたい場合もある。そんなニーズに応えて『ニチベイ』が開発したのが、スラットにポリカーボネートを採用した「グラスフェイススラットブラインド」。外からの視線を遮りながら、外光を適度に透過させる効果があり、室内環境の向上と省エネを同時に実現する「パッシブ採光型ブラインド」だ。今回はこの1月にリリースされ、より自然な透過性を発揮するスラットを装備した製品を展示している。このほか、実証実験で得られたブラインドの省エネ効果などをシミュレーションし、その結果をパネルや映像でわかりやすく展示。ブラインドメーカーとしての社会的責任も強くアピールしている。
美しくカラフルなブラインドがディスプレーされた『ニチベイ』のブース。
「グラスフェイススラットブラインド」の透過のイメージ比較を展示。
下が旧来のもので、上が新しいもの。
省エネ効果などをパネル展示や映像でわかりやすくプレゼンテーションしている。
□質感や色の異なる化粧板で新しいデザインをコーディネートする
『イビデン建装』ではこの2月1日、店装向け化粧板「イビボード」の見本帳「IBISHOP」に新柄33点を加えた。特徴的なのは、湖畔の森の木素材と、心が弾む北欧の街並みのカラーを取り入れた「style forest」。そして、東洋の繊細な工芸技術のような価値観と、神秘的な異国情緒あふれるカラーによる「field forest」。さらに、新しい質感を持つエンボス仕上げや、トレンドを感じさせる木目柄・単色カラーなどもあり、豊富なバリエーションから選べるので、デザインの幅がより広がったといえよう。
豊富な質感とカラーバリエーションを揃えた『イビデン建装』のブース。
質感とカラーのコーディネートを楽しめる「style forest」(左)と「field forest」(右)。
新たに33点の新柄が加わりリニューアルを図った「イビボード」の見本帳「IBISHOP」。
□不燃化粧板に暖かみや質感のある天然木を表現する
印刷インクメーカー『DIC』ならではの色彩技術を生かした、新たな不燃建材が登場した。「DICフネンWO」は、天然木の「暖かみ」や「質感」を表現した非塩ビ素材の不燃化粧板。最大で長さ3030mm(6ミリ厚の特注)が可能になり、床から天井まで貼り継ぐことなく施工できるため、優れた意匠性を発揮できる。また、出隅や入り隅などに用いる同色の副資材も登場し、トータルコーディネートが容易にできるようになった。「DICフネンソリッドカラー」では、従来の42色に加え新しいカラーを10色用意。展示会などで評判のよかったものをラインナップに加えるという。
不燃化粧板の新シリーズと新色の提案をしている『DIC』のブース。
最大長さ3mを表したプレゼンテーションを行っている天然木目調不燃化粧板「DICフネンWO」。
新たに提案された「DICフネンソリッドカラー」の10色。
長く快適に安心して暮らすための製品・技術を提案
□S造やRC造ならば新築・既築でも対応する制震構法
地震のエネルギーを吸収して被害を免れる制震技術が注目されている。『E&CS』が提案している「トグル制震構法」もそのひとつ。まず、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の柱と梁で囲まれた長方形の空間に鉄骨フレームを固定。次に、その対角にヒンジで固定した2つのトグル腕と、残る2つの頂角の一方にヒンジで固定したオイルダンパーを、やはりヒンジで固定する。地震による変形が生じると、2つのトグル腕が躯体と一体化した鉄骨フレームより大きく変形し、オイルダンパーがテコの原理でさらに大きく変位して地震のエネルギーをより効率的に吸収するという仕組みだ。従来の制震システムに比べ小型化が図れ、外付けすることができるので新築だけでなく改修にも対応できる。すでに、公共施設やマンションなどで多くの採用事例があるという。
「トグル制震構法」を提案している『E&CS』のブース。
「トグル制震構法」(写真左)の施工イメージがひと目でわかる模型を使った展示。
□国土交通大臣認定を取得した新築木造住宅用制震システム
近年、ハウスメーカーを中心に木造戸建て住宅に制震装置を設置するケースが増えている。そこで、『東海EC』が提案しているのが、中小工務店向け制震システム「K・ブレースSiB」。東京工業大学との産学連携により生まれた技術だ。木造住宅の1階部分の柱と梁で囲まれた長方形の空間にK型の鉄骨ブレースを設置することで、平常時は筋かいとしての剛性を発揮、地震時には制震装置として働き、揺れを吸収する。木造3階建てにも対応しており、1棟に付き最低4個所施工するが、その位置などは同社が設計計算を行う。壁倍率は3.9倍と剛性に優れ、実証実験の結果に基づき国土交通大臣認定も取得しているので安心して使える。導入コストは、坪単価に換算して約2万円から。
産学連携で開発した木造住宅専用制震システムを提案している『東海EC』のブース。
ブースには、「K・ブレースSiB」の実大模型が展示されている。
□シンプルモダンでエコロジーな瓦を提案
太陽光発電がトレンドとなっている昨今、瓦屋根にもソーラーパネルを搭載できないか。そんなエコなニーズに応えて瓦メーカー『鶴弥』が開発したのが、スーパートライ110「FM306」。シャープ、京セラソーラーコーポレーション、カネカの瓦一体型ソーラーパネルとの葺き合わせが可能。施工性はもちろん、意匠性にも優れている。同社では、瓦の表面に特殊な釉薬を施し、太陽光を60%以上反射する地球温暖化対策瓦「サマースノー」も開発。小屋裏空間の温度上昇を抑え、エコな暮らしを実現する。
省エネでスタイリッシュな瓦屋根を実現した『鶴弥』のブース。
従来のようにソーラーパネルを瓦屋根の上に設置(写真上部)するのではなく、
瓦と一体化できるスーパートライ110「FM306」。
その他の興味深い提案
「三州瓦」を中心に窯業製品を展示している『愛知県三河の窯業展』。
屋根材以外にも、「三州瓦」を外壁として使用したプレゼンテーション。
「三州瓦」をガーデニングの材料として用いることも可能だ。
「OSBボード」に代わる新たな建材「OSSB」を提案している『パネルボードホールディングス』。
「OSSB」は、カナダにおける森林資源を守るために、カナダの麦わらを用いて開発された
「OSBボード」の代替品。現在は、豊富な中国産の麦わらを原料とし、現地の中国で生産されている。
ちなみに、販売権はオランダの企業が持っているという。
天井材として貼られた「OSSB」。「OSBボード」よりきめが細かく、内装材としても適している。
現在、日本では麦わらを原料としているためJASの認定がまだ取れていないが、
性能は「OSBボード」と同等かそれ以上とのこと。