会場レポート1(3月8日)~特別企画展「光触媒展」/注目の機能性・意匠性に優れた建材~
快適、健康、安全な住環境・商環境を実現する建材とその関連製品などを紹介する、第17回「建築・建材展2011」(東京ビッグサイト/東5・6ホール)が開幕した。今年の展示規模は、出展社数257社、出展小間数567小間と昨年を上回り、多くの来場者で賑わっている。今回は、その中から特別企画展「光触媒展2011」と、近年注目度の高い「省エネ&エコロジー」にかかわる製品や技術について紹介することにしよう。
(ライター・西村弘志)
光触媒技術の向上と健全な市場形成・普及をめざして
~「光触媒展2011」~
太陽光などの光があたることで、防汚、防曇、抗菌、空気浄化など多様な機能を発揮する光触媒。その優れた性質を生かした製品が、いまや幅広い分野で活躍するようになってきた。従来は、十分な照度が確保できる外装部材での利用が中心だったが、低照度でも機能する可視光応答型光触媒の技術が向上したことにより、今後は内装部材などへ用途が拡大するものと期待されている。また、光触媒技術の建築・建材分野に占める比率は高く、本特別企画展でも13社(12ブース)が出展しているほどだ。
このように光触媒技術の進歩にはめざましいものがあるが、技術の向上と合わせ、高品質な製品の供給による健全な市場形成・普及をめざす動きもある。この業界を代表する『光触媒工業会』では、JIS試験法に基づく性能認証制度の運用を開始し、基準をクリアした製品には「PIAJマーク」を付与。国際的な標準化の動きにも対応し、地球環境の改善にもつながるグローバルな環境浄化技術として期待されている。
「光触媒展2011」の共催者でもある『光触媒工業会』のブース。
○汚れを分解するとともに耐光性にも優れた外壁材
昨年10月、『クボタ松下電工外装』から社名を改め、新たなスタートを切った外壁材・屋根材のトータルメーカー『ケイミュー』。光触媒にセラミックコートを施した「光セラ」は、付着した汚れを分解して雨の力で洗い流し、大気を浄化する機能を備えた外壁材。セラミックコートのUVカット機能が紫外線による色あせ・日焼けを抑え、優れた耐候性・耐久性を発揮する。
光触媒効果によりメンテナンスフリーの外壁を実現した『パナソニック電工』。その技術を生かし、可視光により汚れを分解し、雨により汚れを洗い流すセルフクリーニング機能を発揮する新製品を開発。現在、その実証実験を行いデータの裏付けを取っている段階で、2012年には正式に商品化する予定だという。
光触媒をコーティングした外壁材「光セラ」を提案する『ケイミュー』のブース。
「光セラ」の光触媒効果がひと目でわかる曝露実験結果。左側のきれいな外壁が、光触媒を施した「光セラ」外壁材だ。
実証実験中ながら、興味深い製品の開発が期待される『パナソニック電工』のブース。
一見すると、光触媒技術とは無関係に思われる『パナソニック電工』の「ショーウインドウの映り込み比較」。光触媒を施したフィルムは、反射を防止し映り込みが少ない(右側は反射が少ないため暗く見える)。店舗のショーウインドウや博物館などの展示ブースの需要が期待される。
○幅広く使用されグローバルに広がる光触媒
酸化チタン層に当たった光により発生した「分解力」と「親水性」が生み出す『TOTO』の「ハイドロテクト」の光触媒作用。空気をキレイにする環境浄化と、汚れを落とすセルフクリーニングを同時に行う。この光触媒の技術や経験は、塗料、フィルム、タイル、テント、ガラスなどの建材として国内外のパートナー企業11社にも使用され、「ハイドロテクトの輪」がグローバルに広がりつつある。
光触媒作用のプレゼンテーションに来場者が集まる『TOTO』のブース。
簡単に汚れが落ちることを実証する光触媒機能のデモンストレーション。
外装材からインテリア材まで、光触媒作用による製品を幅広く紹介している。
○屋外のガラス面に施す画期的な光触媒技術
光触媒に欠かせない酸化チタンのトップメーカー『石原産業』。その知見とノウハウを生かして開発されたのが。ガラス面に施した光触媒膜が、紫外線により分解力と親水性を発現し、防汚、防滴、防曇、抗菌効果を発揮する。施工性に優れ、ガラス面の形状やサイズを問わず、網入りガラスや曲面ガラスにも使用できるのが特徴だ。
ガラス面に光触媒膜を施す「クリーンなの工法」を紹介する『石原産業』のブース。
○NOxを除去する効果が期待される光触媒テント
テント素材のトップメーカー『太陽工業』。今回紹介しているのは、汚れが落ちやすいだけでなく、環境にも貢献するテント。NOx除去効果が高い塩ビ系の膜材に着目した同社では、(財)関西環境管理技術センターで実証試験を行い、光触媒工業会の性能基準をクリアするNOx除去効果を確認。今後は、表面積の大きい膜材によるNOx除去効果を前面に打ち出していくという。
空気を浄化する光触媒テントをアピールする『太陽工業』のブース。
注目の機能性・意匠性に優れた建材》
○機能性・デザイン性に優れインテリアに使えるシャッター
斬新なアイデアが盛りだくさんの建築金物・家具金物を毎回提案している『スガツネ工業』。今回は、多用途に使えて機能性に優れ、しかもスタイリッシュな「デザインシャッター」を紹介しよう。シャッターといえば、ガレージなどのエクステリアをイメージしがちだが、この製品はキッチン、リビングボード、洗面台、書庫、オフィスなどのキャビネット用。素材はアルミで軽量、しかもスタイリッシュ。縦型と横型(片開き・両開き)があり、大きく開口するため物の出し入れをスムーズに行え、しかも開いたときにもすっきりと内部に納まる。用途に応じて、面付けタイプと掘込タイプから選べ、取り付けも簡単だ。
オリジナルの電動シャッター「アーキテリアシャッター」をメインに展示を行う『スガツネ工業』のブース。
オープンキッチンが増えている昨今。不意の来客があっても、キッチン内に置いた物を容易に隠すことができる「デザインシャッター」。裏面にはバネが施されており、軽くてスムーズな開閉を実現している。
横長タイプの吊り戸棚の扉は、スイングリフトアップする方が便利だが、背の低い人にとっては使いにくいもの。そこで生まれたのが、スイングリフトダウン金具(写真下側の扉に装着)。扉が下に降りるので、背伸びする必要がない。
○塗装より簡単に施工でき美しく仕上がるフィルム
産業分野、生活関連分野、ヘルスケア分野など幅広い分野における製品やサービスを提供している『住友スリーエム』。今回は、従来のフィルムでは施工がむずかしいレンガ張りをはじめ、コンクリートやスタッコ仕上げのように表面に凹凸があっても、容易に貼り付けられる「3Mスコッチカル ペイントフィルム」を紹介しよう。同製品は、ベースとなるアクリル製特殊フィルムで表面にインクジェットプリンターなどのデジタル印刷を施し、オーバーラミネートで表面を保護したもの。写真や細かいデザインにも対応し、下地の質感や風合いを生かした外観デザインを実現することができる。施工面では、加熱の必要がなく、圧着するだけととても簡単。また、フィルムは簡単にはがすことができるため、リニューアルなどが容易にできる。
様々な分野で使える製品を紹介している『住友スリーエム』のブース。展示だけでなく、わかりやすい実演も好評だ。
貼り付けたフィルムをブラシなどで圧着させ、アプリケーションテープをはがせば施工完了。柔軟性に富んでいるため、フィルムが浮いたり剥がれたりしにくく、スタッコ仕上げなど凹凸のある面でもきれいに簡単に貼れる。
窓に貼るだけで、「発電+遮熱+飛散防止+透明」効果が得られる、参考出品の「シースルー太陽光発電フィルム(仮称)」。会場では、発電量のデモンストレーションも行われている。
○独自の色彩技術により本物をしのぐ木質感を表現
世界有数のファインケミカルメーカー『DIC』。今回の展示では、印刷、色彩、樹脂成形の基盤技術からなる製品を、「Wood」「Color」「Stone」の3つのゾーンに分けて展示している。なかでも「Wood」ゾーンの主役は、突き板の質感やあたたかみを持つ塩ビシートに、耐摩耗性・耐擦傷性・耐汚染性に優れたUV塗装を施した天然木目調不燃化粧板「DIC フネン WO」。44柄から選べる豊富なバリエーション、害虫忌避技術(ムシテクト)、環境対応仕様により、病院や老健施設、教育施設や商業施設、オフィスや住宅などの内装壁面、腰壁、建具と幅広い用途がある。このほか、人造大理石やポリエステル化粧板なども展示されており、『DIC』の多様な製品を堪能することができる。
印刷インキメーカーならではの、色の美しさと豊富なバリエーションをイメージした『DIC』のブース。
「DIC フネン WO」は、木質感がリアルに表現されているので内装仕上げ材や建具に最適。耐摩耗性・耐擦傷性・耐汚染性に優れているため、床材(参考出品)にも使用できる。
3D効果で立体的に浮かび上がるエンボスタイプの「DIC フネン WO」(参考出品)。
木目をやさしく豊かに表現した製品だ。
その他の興味深い出展社と企画
○高品質の素材を用いた高性能な断熱材・遮熱材
木材・建材の輸入販売ならびにオリジナル建材の製造販売を手がけている『プレイリーホームズ』。建具、キッチン・洗面、無垢の床材・壁材、外装材、構造材、断熱材・遮熱材、換気システムなど多岐にわたる製品を扱っているが、今回特に力を入れているのは、優れた性能を発揮する断熱材「ウールフル」と遮熱材「アストロフォイル」である。
無垢の木にこだわり、その良さを発揮するために断熱・遮熱で住宅性能を高める提案を行っている『プレイリーホームズ』のブース。
天然素材のバージンウール(80%)とポリエステル中空糸(20%)を使用した羊毛断熱材「ウールフル」。断熱性、遮音性、調湿性、防虫性、安全性、VOC吸着性、耐久性、難燃性に優れている。
屋根や外壁に用いることで、優れた遮熱性を発揮するアルミ遮熱材「アストロフォイル」。屋根から侵入する熱量を36~47%カットする遮熱性能は、国土交通省の不燃材認定試験にも適合している。
○美しい陰影を創り出すオリジナルのデザインパネル
デザインパネルを製造・販売している『サカイ』が出展しているのは、無垢材、MDF、ケイ酸カルシウムなどの素材に表面加工を施した「リブ」。シンプルな直線なものから、カーブを描く複雑なものまで、デザインは多彩。これまでに3回にわたり、デザインコンペティションが行われ、多くのデザイナーが作品を応募している。
凹凸に光が当たると、美しい陰影を描く「リブ」。表面に塗装を施すだけでなく、突き板を貼った製品もある。
ライティングにより表情を変えるカラーステンレス材
カラーアルミ内装材の表面加工で培ってきたノウハウを生かして、新たにステンレス板材の表面加工に取り組んだ『ディー・ナイン』。本展では、発売したばかりの最新製品を展示している。熟練の職人が、ステンレス素材の表面に描くパターンは全部で15種類。その上にカラーリングし、ガラス質のハードコート仕上げを施した「G-Motion」は、これまでにない風合いと質感をつくりだしている。
ライティングの明るさや角度などで微妙に表情を変える「G-Motion」。耐候性に優れ、外装材としても使用することができる。
○国産材の魅力展 会場ステージ
東5ホール会場内では、林野行政の現状や、木材の先進的な活用事例、出展社製品プレゼンテーションなどを行う「国産材の魅力展 会場ステージ」が開催されている。プログラムは、本ウェブサイトの「特別企画」をご覧いただきたい。なお、「国産材の魅力展」の内容については、明日のレポート2で詳しく紹介する予定だ。
※プログラムは、都合により演題・講師が変更となる場合がある。
※座席は全席自由席(先着順、約40席、定員に達した場合は立ち見)。
多くの来場者が詰めかけ講演に耳を傾ける「国産材の魅力展会場ステージ」の様子。国産材に対する関心度の高さがうかがえる。
第2回目のレポートはこちら