会場レポート2(3月7日)~安心して使える建材・製品/地球環境にやさしい木質建材~
(ライター・西村弘志)
《機能性とデザイン性を併せ持つ製品を提供》
あっと言わせる機能性に優れた建築金物・家具金物
斬新なアイデアが盛りだくさんの建築金物・家具金物をはじめとする製品を提案している『スガツネ工業』。今回は、機能性はもちろんのことデザイン性にも優れた製品を数多く出展している。
今回最も目をひくのが、引き戸や開き戸の開閉機構に関する技術。引き戸や引き出しなどを閉める際に、完全に閉じるまで力を加えなくても、ダンパーによりゆっくりと閉じられる仕組みは、最近多くのキッチンキャビネットに採用されているが、同社では「ソフトクローズ機能」と称して大きな開口部でもその効果を発揮する。音が静かで、手を挟んだりする危険性が減少するため、住宅だけでなく老健施設での採用が増えているという。このほか、開いた扉がスッキリと納まる機構や、幅広い開口を確保できる連動引戸など、スガツネ工業ならではのアイデアがもりだくさんだ。
ユーザービリティーを考慮した使いやすさで定評のある、建築金物・家具金物を多数展示しているスガツネ工業のブース。
「垂直収納金物」の機能により、収納などの開いた状態(左)の扉を収納のサイドにスッキリと納めてしまうことができる。
引き違い戸のような動きで開閉しながらも、「ガラス扉用フラット引戸金物」の機能により閉じたときにはガラス面がフラットになる。
上吊式で左右双方向に、それぞれゆっくりと引き込む「デュアルソフトクローザー仕様」を施した引戸。
色にこだわりデザイン性に優れた不燃化粧板
世界約60カ国におよそ200のグループ会社を擁する、世界有数のファインケミカルメーカー『DIC』。今回の展示では、DICの印刷、色彩、樹脂成形の3つの基盤技術をもとにして「WOOD(不燃化粧板、腰壁システムなど)」「COLOR(不燃化粧板、カラージョイナー)」「STONE(人造大理石)」の3つの製品を紹介している。
「COLOR」ゾーンでは、一般的な化粧板は比較的淡い色が多いなか、同社が提案しているのはビビッドなカラーも含め50色のカラフルなラインナップを持つ「DIC フネン ソリッドカラー」。面材と同色のジョイナーも用意され、デザイン性をより高めることが可能だ。
「WOOD」ゾーンでは、印刷を施した化粧紙を巻き付けた化粧板「DIC フネン WO」を提案。突き板のようなマットな質感やあたたかみを表現しており、同色の「WO粘着シート」も用意し、建具や家具などに貼ることでトータルコーディネートも実現できるよう配慮。紙を使用しているため、リーズナブルでもある。
「STONE」ゾーンで提案しているのは、ポリエステル樹脂による人造大理石「DIC ハイセラミー」。ペールトーンと呼ばれる淡いカラーで、清潔感と爽快感を演出している。オフィスビルや公共施設などの洗面カウンター、店舗の什器、受付カウンターのほか、住宅のオリジナルキッチンにも使用されているという。
印刷インキメーカーならではの、豊富なカラーバリエーションを表現した『DIC』のブース。
50色のカラーラインナップを揃えた単色不燃化粧板「DIC フネン ソリッドカラー」。
天然木の質感やあたたかみを表現した木目調不燃化粧板「DIC フネン WO」。
空間を美しく彩り、快適さを演出する人造大理石「DIC ハイセラミー」。
海外トレンドを積極的に採り入れた美しいデザイン
商業施設ならびに住宅用キッチン扉などのメラミン化粧板の製造販売を行っている『イビデン建装』。今回は、ヨーロッパのトレンドを採り入れた新しいデザインを提案している。なかでも興味深いのが「フラットハンドルドア」。取っ手を廃して掘り込み引き手を採用したシンプルなデザインが特徴で、4種類のデザインによる、収納とキッチンのドアを用意。マンションでの採用が増えているという。
このほか、春に先駆け新しいデザインやカラーのメラミン化粧板もラインナップに加わった。近ごろは、インターネットの普及などにより海外トレンド情報がいち早く知れ渡るため、流行のサイクルが短くなっている。そのため、化粧板のトレンドへの速やかな対応が迫られているようだ。
トレンドに対応し、多彩なデザインとカラーを持つメラミン化粧板の提案を行っているイビデン建装のブース。
取っ手のない「フラットハンドルドア」により、スッキリとしたデザインに仕上がったキッチンキャビネット。
「フラットハンドルドア」のデザインバリエーション。
「craft work」と「vintage flavor」は、ペイントしたようなアンティークな木目調意匠のメラミン化粧板。ジーンズショップなどをイメージしてデザインされた新商品。
豊富な森林資源をベースに、優れた製品・技術を提案
カナダは世界有数の森林国。いまや、日本はもとより世界各国にとって重要な木材資源の供給国である。このように林産資源が豊富なカナダでは、安定した木材資源の供給を図るために6つの木材関連非営利団体と関連グループからなる非営利団体『CANADA WOOD』が設けられた。今回は、その団体をはじめ、同団体に所属するディストリビューターや日本の代理店が出展。構造材をはじめとする製材品や集成材、これらの材を用いた構法技術、二次加工製品の内外装材や木製キッチンなどを展示・紹介している。
なお、カナダ材ならびにカナダの製品や技術に関する問い合わせは、「BCウッド日本事務所」が窓口となっている。もちろん、日本語で対応してくれる。
カナダの建材ならびに製品、建築技術などを紹介する『CANADA WOOD』のブース全景。
ウエスタンレッドーシダーをふんだんに用いてデザインしたコーナー。ほのかに木の香りが漂ってくる。
OSB JAS構造用パネルと特殊な釘を用いた木造軸組工法により、壁倍率4.1という高強度を実現したエインズワース社のブース。同様に2×4工法でも従来より高い強度を発揮するという。
クロスラミネーテッドティンバー(CLT)と呼ばれる建築構法により、大スパンを実現したストラクチュラム・プロダクツ社のブース。この構法で9階建てのマンションが建設された実績がある。2、3年内には日本でもCLTを用いた建築物が建つのではないかと言われている。
《産業の育成と地球環境に有効な国産材の利用促進》
~「国産材ゾーン」~
戸建て住宅はもちろんのこと、集合住宅、商業施設、公共施設など、幅広い分野での活用が期待されている木材。なかでも、国産材の利用促進は地場産業の育成と合わせ、健全な森林の育成・整備といった観点からも注目されている。本ゾーンでは、構造材や化粧材だけでなく、建具、インテリア・エクステリア製品、木質系断熱材などの国産材製品も多数展示・紹介しているので必見だ。
国産無垢材と伝統技術にこだわったシンプル&モダンな扉
林産資源を活用する「自然への思い」、職人の技術の伝承と無垢材の使用による「モノづくりへの思い」、木の香りや質感を大切にする「住まいの扉に対する思い」という3つの思い。そして、美しいデザイン性、高品質、高耐久という3つのこだわりを大切にして、シンプルでモダンなインテリア扉を提案している『イマガワ』。今回は、2010年度「グッドデザイン賞」受賞した新無垢杉扉「漣」に加え、檜の間伐材を積層した材を用いた「華音(かのん)」を紹介している。
イマガワの無垢材による扉の展示に、来場者はブースの前で思わず足を止める。
檜の間伐材を積層した材。環境にやさしく、森林の育成にも役立つ。
職人技が光る組子が施された「華音」のマス格子ガラス扉。
間伐材を有効利用し、デザイン性に優れた「見せる」合板
今まで、パルプなどにしか利用されなかった北海道産の白樺間伐材を使った合板「ecoシラ合板」、カラフルな再生紙と北海道産木材を積層させたデザイン性に優れた合板「ペーパーウッド」を紹介している『滝沢ベニヤ』。接着剤もホルマリンを一切使わず、安心して使えるため、店舗や保育園の内装のほか、幼児家具などにも利用されているという。
2年前に発売した「ecoシラ合板」「ペーパーウッド」を展示・紹介している滝沢ベニヤのブース。
カラフルな積層の「ペーパーウッド」は、昨年のグッドデザイン賞を受賞している。
「ペーパーウッド」による棚。断面が美しいのであえて見せることができる。
やさしい風合いの「ecoシラ合板」を張った壁面。
茨城県産の間伐材を利用したコンパクトな建物
『根本建築研究室』が、森を守りたいという熱い思いから開発した「スタックハウス」。茨城県産の8cm角の小径間伐材木材の利用促進を目的として、平成23年度から開始した新しい取り組みである。現在は、趣味の部屋や勉強部屋、ショップや農作業の休憩所といったコンパクトな規模の建物しか建設できないが、将来は建築確認申請も取得できるスケールのものが実現するよう、モデルハウスで実証実験も行っている。
「スタックハウス」を提案している根本建築研究室のブース。
小径間伐材の角材を積み重ね、ボルトで固定しながら造る「スタックハウス」。
構造イメージがひと目でわかる模型も展示している。
《その他の興味深い出展社と企画》
姿は見えなくても優れた機能性を発揮する家具金物
ヘティヒ社は、ドイツのスタンダードな家具金物メーカー。その製品・技術をもとにして日本で営業展開しているのが『ヘティヒ・ジャパン』だ。今回出展しているのは、引き出し、ドア、引き戸、折れ戸に使われている金物。レール、ダンパー、ダンパー付きヒンジ、丁番など、いずれもユーザービリティーに優れた機能と目立たないサイズとデザインが特徴である。すでに、日本でもキッチンメーカーや家具メーカーなどで使用されており、建築設計事務所やデザイナーからのオーダーもあるという。
シンプルで美しいディスプレイが印象的なヘティヒ・ジャパンのブース。
「サイレントシステム」のダンパーの働きにより、途中まで閉じると静かに最後まで閉じる。
重さ50kgもある引戸でもダンパーの採用により軽々と開閉できる。
上吊り式になっているため、引戸の下部にレールがなく掃除がしやすくデザイン的にもスッキリしている。
カーペットの機能を左右する素材
カーペットの素材を構成するナイロン繊維を開発しているインビスタ社。その製品を日本の織物業界に提供しているのが『インビスタ・ジャパン』である。同社の素材には、通常のカーペットに使われる「ナイロン6」より緻密で強度の高い「ナイロン6.6」を使用。耐荷重性、耐熱性、耐久性に優れているだけでなく、汚れが目立ちにくいのが特徴だ。同社では、エンドユーザーであるゼネコンやデベロッパーに対する営業も重視。こうした努力が実り、六本木ヒルズや渋谷ヒカリエなどでも同社の素材を用いたカーペットが採用されているという。
カーペットの素材」を紹介しているインビスタ・ジャパンのブース。
同社が使っている「ナイロン6」より緻密で強度の高い「ナイロン6.6」。
「ナイロン6.6」の特徴をわかりやすく紹介しているパネル。
いやなニオイやアレルゲンに効果のある壁紙
カーテンやカーペットで定評のある住江織物から生まれたスミノエグループに属する『ルノン』。これまでに、同社ではインテリア関連の優れた製品を数多く開発してきたが、今回出展している次世代型機能性壁紙2点について紹介しよう。
「空気を洗う壁紙」は、悪臭と言われているアルデヒド属の8物質を、酸素による触媒作用により吸着・分解する。一方「アレルブロック」は、花粉やダニなどが原因となるアレルゲンを80%以上吸着し、花粉症などの症状を軽減する効果を発揮する。いずれもその効果は、壁紙の表面に付着する汚れを除去することで半永久的に持続し、しかもランニングコストがかからない。また、F☆☆☆☆仕様なのでシックハウスの心配もなく安心して使用できる壁紙だ。すでに採用実績も多く、さらなる普及が期待される。
「空気を洗う壁紙」のキャッチが目をひくルノンのブース。
「空気を洗う壁紙」のラインナップ。見た目には通常の壁紙と区別がつかない。
現場で吹き付け施工する硬質ウレタンフォームの断熱材
水の力で発泡する硬質ウレタンフォーム「アクアフォーム」で全国展開している『日本アクア』。無数の細かい連続気泡を現場で吹き付け、隙間なく充填することができるため、高断熱・高気密の節電住宅づくりに貢献。水を利用し、フロンガスを一切使わないため、地球環境にやさしい。2011年には、在来工法ならびに2×4工法などの木造住宅で16,000棟の施工実績がある。防耐火認定、省エネ4等級の型式認定を取得し、エコポイントやフラット35にも対応。断熱性能をより高めるために、遮熱性能に優れた「アクアシルバーウォール」などのアクアフォーム用部材も併せて提案している。
発泡する硬質ウレタンフォームを展示・紹介している日本アクアのブース。
現場吹きつけの実演コーナー。来場者は興味深く説明に聞き入っている。
壁用の透湿・防水シート「アクアシルバーウォール」は、アルミ蒸着層を設けることで高い遮熱効果を発揮する。
会場レポート1(3月6日)はこちら