会場レポート(3月5日)
住宅・店舗・ビル用の各種建材をはじめ、設備機器やソフトウエア、工法、関連サービスなどを幅広く紹介する第19回「建築・建材展2013」(東京ビッグサイト/東5・6ホール)が開幕し、天候にも恵まれ多くの来場者で賑わった。開催規模は出展社数263社、出展小間数593小間と昨年より増加。快適で安全な生活のために必要な技術や製品・サービスが一堂に会する展示会にふさわしい盛りだくさんな内容となっている。本レポートでは、それらの中から注目の出展社を紹介しよう。
(ライター・西村弘志)
住まいの快適性を向上させる製品や技術は数多いが、機能性だけでなくデザイン性に優れたものが人気。まず、こうした特徴をもった製品を提案している2社を紹介することにする。
パナソニック
限られた空間を広く住まう新規格の建材
2012年12月に発売したArchi-specシリーズ。引戸、床材、収納からなる同社のハイスペック商品だが、メインとなるのは高さが最大2,500mm(幅は1,200mm)の引き戸「Archi-spec HIKIDO」だ。サイズが大きいだけに反りが気になるが、金属製フレームの採用により高い剛性を保持。吊り構造により開閉がスムーズで、しかもレールがないため掃除がラクで見た目もスッキリ。床材と収納を含めたArchi-specシリーズのターゲットは、モダンで個性的な設計を行い、こだわりを持ったエンドユーザーに人気の建築家だ。
まるでモデルルームのような『パナソニック』のブース。
大開口を美しく仕切る「Archi-spec HIKIDO」。
無垢材の質感を特殊化粧シートで表現した高性能床材「Archi-spec YUKA」(上)と、
天井ぴったりに方立を立て、棚板をのせるシンプル構造の「Archi-spec SHUNOU」によるモデルルーム。
立川ブラインド工業
あらゆるシーンで真価を発揮する調光・遮光ブラインド
メインとなるのは、2012年9月に発売した高機能ブラインド「パーフェクトシルキー」。機能やデザインはもちろんのこと、操作、取り付け、清掃がしやすく、あらゆるシーンで快適に使用できるヨコ型タイプのブラインドだ。ブース内は、「店舗施設」「オフィス」「医療福祉施設」「住宅」の4つのゾーンに分かれ、それぞれのシチュエーションにおけるニーズに対応するブラインドや間仕切りを提案。なかでも注目したいのが酸化チタンコートのスラットを採用した製品。防汚、抗菌、消臭効果を発揮するので、医療施設での利用が期待されている。商業施設用として展示している製品の中にはこのほか、ショールームでも見ることができない大型のものもあるので必見だ。
建築・建材展では初出展の『立川ブラインド工業』のブース。
高酸化チタンコートのスラットを使用した「パーフェクトシルキー」。
建築・建材展では出展規模は大きくなくとも、注目すべきブースが数多い。伝統工芸技術を現代建築に応用した、雅な趣のある提案を行っている3社を紹介しよう。
丸二
伝統工芸の唐紙を洋空間に映える壁紙として提案
奈良時代に中国から伝わり、今では日本の伝統文化として根付いている唐紙。そのような歴史と従来のデザインから和のイメージが強いようだが、こうした優れた文化を洋空間にも取り入れたいという同社。そこで、色使いをカラフルにそしてモダンなものとし、さらに独自の技術により素材の和紙に新たな質感を与えたものが「URUSHI STYLE」と「ANTIQUE STYLE」(いずれも参考出品)だ。シックハウス対策、防火認定を受けることで一般住宅や商業施設での需要が期待される。
カジュアルな感覚で使える唐紙を提案する『丸二』のブース。
伝統的な木版手刷りの手法と新技法を融合させて生まれた同社の唐紙。
漆の美しい色つやと質感を再現した「URUSHI STYLE」(左)と異素材のテクスチャーを表現した「ANTIQUE STYLE」。それぞれ9種類のバリエーションを用意している。
堀金箔粉
高級感あふれる金箔・銀箔の質感を低価格で再現
「金箔・銀箔は使ってみたいが高価なので...」とあきらめてしまうユーザーの声をしばしば耳にした同社では、これまでに培ってきた金箔・銀箔による工芸品の装飾技術を生かして、壁紙感覚で使用できる金箔・銀箔の色と質感を持ったビニールクロスを開発。当初は、寺社仏閣などでの需要が多かったが、最近はホテルなどの商業施設でも採用するケースが増えているという。今回出展しているのは、金銀箔押風クロス「新金平押し柄ビニールクロス」と「新銀平押し柄ビニールクロス」。不燃・準不燃対応で、従来の同等製品に比べて変色の心配がなく、もちろん低価格。940mm×10mのロール単位で販売している。
本物の金箔・銀箔と見まがうようなビニールクロスを提案している『堀金箔粉』のブース。
「新金平押し柄ビニールクロス」と「新銀平押し柄ビニールクロス」。
ユーアイヅ
漆塗装をさらに進化させたUV利用の新技術
漆塗りならではのふっくら感、深み感、しっとり感はそのままに、傷が付きにくく速乾性に優れた漆塗りテイストの塗装技術「UV漆塗装」。1997年の特許取得以来、同社では品質と生産性の向上に努め、硬くて丈夫、紫外線による劣化が少なく、熱に強く難燃性で、コストダウン可能、しかも様々な素材に対応できる技術へとグレードアップした。そのため、会津塗りによる蒔絵などの伝統技法のみならず、近頃では鏡面仕上げのニーズを満たす技術としても高い評価を受けているという。提供された素材に塗装を施すのが本来業務だが、モダンなデザインにも柔軟に対応している。
色あでやかな漆塗りを彷彿とさせる『ユーアイヅ』のブース。
「UV漆塗装」を施したヘルメット(左)とイス。
伝統的工芸技術を生かして、地域ぐるみで長年取り組み地場産業として定着しているケースは少なくない。なかでも窯業は規模が大きく、現代の暮らしにも欠かせない存在だ。
多治見市美濃焼タイル振興協議会
居室でも使えるタイルの汎用性をアピール
昨年は、社団法人インテリアデザイナー協会(JID)とのコラボレーション企画が好評だった同協議会の展示。今年は「タイルと暮らす、素敵空間」をテーマに、インテリアコーディネーターの新治照美氏による住空間(リビング、ダイニング、ガーデン)のプレゼンテーションを行っている。このような空間ではこれまでタイルを使うことが少なかったが、使い方次第で快適な空間を実現できることがよくわかるモデル展示だ。同協議会のブース内には、18社が出展しているほか、タイルアートの体験コーナーも併設しているので、タイルのおもしろさとよさを知ってもらうことができる。
タイル表面にリブを設けて太陽光を天空に反射する
「美濃焼クールアイランドタイル」などの
展示を行う『多治見市美濃焼タイル振興協議会』のブース。
新治照美氏による住空間(リビング、ダイニング、ガーデン)のプレゼンテーション。
地球温暖化防止や環境保護に電力需給の逼迫という大きな課題をかかえている日本のエネルギー事情。そうした問題の解決につながる省エネ・創エネ・蓄エネ建材/設備に関する展示を紹介しよう。
カネカ
エコで意匠性に優れたハイブリッドタイプの太陽電池
太陽光発電の心臓部ともいえるのが太陽電池。同社では、「見た目がきれい」「屋根瓦として使える」「陰の影響を受けにくい」「製品そのものがエコ」という特徴をもった薄膜シリコンハイブリッド太陽電池を提案している。落ち着いたダーク系のカラーで外観デザインを損なうことがなく、最小2枚単位から使用することができるため、寄棟屋根などの複雑な屋根面にも搭載が可能だ。今回新たに提案しているのは、太陽電池パネルの表面に反射光を防ぐ加工を施した防眩タイプの「ヴィソラ」と「ソルティレックス」。今後は、従来品をすべて防眩タイプに移行する予定だという。
太陽電池パネルの施工実演を行う『カネカ』のブース。
瓦一体型太陽電池「ヴィソラ」(左)と化粧スレート瓦専用太陽電池「ソルティレックス」。
JX日鉱日石エネルギー
エネルギーの有効活用を図る省エネ・省CO2・エコロジーな蓄熱材
物質の凝固や液化に伴い放出または吸収される熱エネルギーを「潜熱」というが、パラフィン系潜熱蓄熱材「エコジュール」は凝固温度が生活温度領域(3℃~30℃)にあって高い融解潜熱を有するため、エネルギーの無駄がなく熱を蓄えることができる。同社では、この特徴を生かしてビル空調、住宅建材、自動車部品、定温輸送、調温衣料などの分野においてエネルギーの有効活用を図り、省エネ・創エネを実現。今後は、床暖房対応のフローリング、石膏ボードへの利用などが期待されている。
新たな利用が期待される蓄熱材を提案している『JX日鉱日石エネルギー』のブース。
扱いやすいゲルパックになっている「エコジュール」。
東日本大震災により再び注目を浴びている地震対策。そうした安全・安心への社会的ニーズが高まるなか、耐震・制震・免震にかかわる製品・工法についても紹介したい。
住友ゴム工業
木造住宅の地震の揺れを吸収する低価格な制震技術
レース用タイヤの研究・開発で同社が培った先進のテクノロジーをもとにして開発した高減衰ゴムにより、地震の揺れを最大で70%低減*する住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」。木造軸組工法ならびに2×4工法の2階建ておよび平屋住宅に適応し、地震の振動エネルギーを熱エネルギーに変換して揺れを効率良く吸収。本震の後に発生する余震の揺れも効果的に吸収し続け、建物の損傷を軽減する。特殊な構造と接着方法により、経年耐久性に優れ、メンテナンスも不要だ。なお、会場には高減衰ゴムの効果を体感できるコーナーを併設しているので、自らゴムボールを落下させるとさぞ驚くことだろう。
* 1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)相当の揺れを再現した振動台での実証実験の基づく。
優れた制震技術を提案する『住友ゴム工業』のブース。
優れた制震効果を発揮する住宅用制震ダンパー「ミライエ」(左)と、3月5日発売の2×4用「ミライエ・ツーバイフォー」。
JSP
断熱性能だけでなく新たな機能を付加した断熱材
石油化学原料をもとにして同社独自の発泡技術から生まれた高性能発泡プラスチック断熱材。省資源、環境保全に寄与する建材として幅広い産業分野で使用されている。なかでもポピュラーなのが、住宅の壁、床、天井(屋根)などに用いられる断熱材「ミラフォーム」。今回は、その断熱技術をベースにして開発された付加価値を高めた製品も展示している。たとえば、地下室などに利用できる湧水・排水処理機能を施したもの、防音室などで効果を発揮する遮音性を兼ね備えたもの、基礎まわりに最適な防蟻効果を持ったものなどの断熱パネルだ。
高性能発泡プラスチック断熱材に関する提案を行う『JSP』のブース。
最後に、森林の整備や地域林業の活性化に向けて有効活用が期待されている「国産材・地域ブランド材」に関する出展社と、照明など室内の可視光にも応答し、内装部材にも用途が拡大している光触媒に関する情報を提供する光触媒工業会を紹介しよう。
港製器工業
ブロック塀に代わる間伐材利用が可能なフェンス
地震の揺れで倒壊する恐れのあるブロック塀の代替として、同社が開発したのが「スーパーフェンス」。2mピッチのアルミ製の柱*の内側に約10枚の木製パネルをはめ込む構造で、パネルにはヒノキや杉などの間伐材**を使用するほか、透光性のあるアクリルパネルを挿入することもできる。同社は、本製品におけるアルミ製の柱の販売を本来業務としているが、要望があれば間伐材パネルをはじめとする面材の供給も行うとともに、今後はパネルを地産地消方式で調達する予定だという。なお、この取り組みは「おおさか地域創造ファンド」における平成24年度の助成事業にも選ばれている。
* 柱の設置に際しては、大阪市立大学地盤工学研究室の大島昭彦教授の指導に基づき基礎工事を行う。
** 間伐材を利用したパネルは、環境保全・林業活性化を目指す関西大学社会安全学部の亀井研究室の協力により開発。
「スーパーフェンス」の施工サンプルでブースを構成する『港製器工業』のブース。
光触媒工業会
関心が高まる可視光応答型の光触媒技術
同工業会は、光触媒に関する性能評価法の標準化、製品規格、認証制度、表示ガイドラインの作成などを行っている業界団体。3月5日に会議棟で行われた同工業会主催のセミナーでは、宮内雅浩氏(東京工業大学准教授)が特別講演として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」に基づき、最近話題の可視光型光触媒の性能と、その応用が期待できる効果に関して解説した。なお、光触媒ゾーンでは同工業会のブースのほかにも、会員企業10社による展示が行われている。
光触媒に関する情報を提供する『光触媒工業会のブース』。
宮内雅浩氏 (東京工業大学准教授)による特別講演「高感度可視光型光触媒の開発と実用化展望」の会場。