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インドの住宅市場拡大――日本総合研究所マネージャー田中靖記氏(新興市場の深層)

[ 2012年8月24日 / 日経産業新聞 ]

都市の中価格帯に需要 外資、省エネ型に商機

 人口12億人を擁するインドで、住宅市場の拡大が続いている。所得水準の向上や都市部への人口流入で中価格帯を中心に伸びている。ただ外資の参入には障壁が多く、国内市場の縮小で海外展開を急ぐ日本の住宅メーカーの進出は簡単ではない。日本総合研究所の田中靖記マネージャーに聞いた。

 ――インド住宅市場の現状は。

 「2011年の国勢調査によるとインド全体の既存住宅戸数は2億3600万戸で、01年に比べ32%増えた。住宅着工は年200万〜300万戸とみている。戸建てではなく集合住宅が主流で、富裕層向けで500万ルピー(約700万円)〜3000万ルピー、中価格帯が約50万〜500万ルピーだ」

 「政策金利が09年から順次引き上げられ、8%と高い水準にある。住宅ローン金利も08年ごろの7〜9%から順次上がって10〜12%で高止まりし、高級市場が冷え込んだ。一方、中間所得層の拡大などで、実需がある中価格帯を中心に住宅需要は増えている。高級住宅は供給が減った一方、高所得者層は増えており、半年〜1年程度で市況が回復するとみている」

 ――特に伸びるのは。

 「07年時点で約2700万戸の供給不足との推測があり、既存住宅は都市に約3割、農村に約7割あった。都市人口は11年の約3億8千万人から30年に5億8千万人、50年には8億9千万人まで膨らむとみられ、都市を中心に需要の増加が続くだろう」

 ――現地の住宅関連業界の動向は。

 「住宅大手は中間層向けの販売を強める傾向がある。有力財閥タタグループ傘下のタタ・ハウジングがグジャラート州に大規模な中価格帯の複合都市を建設する。一方マヒンドラグループは11年に割安な住宅市場への参入を表明した」

 ――外資企業が参入する際の課題は。

 「政府は不動産価格の高騰を懸念し外資企業の土地取得に制限をかけている。インドは土地登記制度の歴史が浅く、土地を取得した後でもともとの地権者を名乗る人が出てくる場合がある。ウッタル・プラデシュ州では政府系開発会社による農民からの土地収用を無効とする判決が出た。他の地域でも同じようなことが続く可能性もあり、土地取得のリスクは高い」

 「外資系では英国やオーストラリア系のデベロッパーが現地企業と合弁で住宅開発をしている。日本勢では双日がチェンナイで工業団地を手掛けているが、住宅メーカーは進出していない」

 ――外資はどんな分野に参入すべきか。

 「インド企業と組み集合住宅の設計や資材調達、プロジェクトの管理などを手掛ける事業は可能性がある。土地の取得や建設、販売は現地企業に任せるモデルだ。外資にとっては高級住宅なら採算が見込める。ホテルや病院の建設需要も多く、複合物件の開発はできるのではないか。汎用型物件では現地企業と差が付けづらいので、省エネ型を展開すべきだろう」

 ――建材・住宅設備ではTOTOやLIXILがインドに進出した。

 「省エネ型の窓や防火建材など付加価値の高い商品なら高級住宅向けに需要が見込める。インドは地域ごとに気候の差が激しく、デリーなど北部では冬は気温が10度以下になるが、チェンナイなど南部は熱帯だ。気候の変化に対応した建材の開発が重要だろう」

記者の目

足元は市況悪化

進出にバラツキ

 海外事業による生き残りの道を探る住宅関連各社は中国を中心に展開するが、もう一つの人口大国インドにも熱い視線を注ぐようになってきた。

 インドの足元の景気は利上げが響き2011年度の実質国内総生産(GDP)が6・5%の伸びと9年ぶりの低水準。現地進出済みのTOTOの張本邦雄社長は「デベロッパーが開発投資を抑え建設市況が悪化している」と懸念する状態だ。

 住宅メーカーは将来性にかけて早期に進出すべきか。外資への障壁が残ることもあり、各社の対応にはバラツキも出そうだ。(渡辺伸)

 たなか・やすのり 2008年大阪市立大文学研究科修了、日本総合研究所入社。インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)の市場調査・戦略コンサルティングに従事。

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