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鉄骨の加工業、採算悪化続く、ゼネコンが単価抑制、需要増も安値受注に。

[ 2013年2月27日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 ビルなどに使う鉄骨の加工業者の採算悪化が続いている。2008年秋の金融危機後に鉄骨加工会社が激減する中、昨年から都心の高層ビル建設や商業施設で加工の依頼は増えてきた。だが、発注者のゼネコン(総合建設会社)は建設単価を抑制するため、加工賃を削減している。東南アジアの加工会社の参入もあり、国内業者は安値受注を余儀なくされている。

 大型商業施設「ららぽーとTOKYO―BAY」(千葉県船橋市)で年内完成予定の増築工事が進む。この施設で鉄骨加工を担う中堅加工会社、吉田鉄工所(前橋市)の吉田隆彦専務は「長時間の残業は当たり前。それでも採算はぎりぎりのラインだ」と語る。

 施主やゼネコンが細かな設計変更をするたびに穴開けや溶接など鉄骨加工をやり直す。「寸暇を惜しんで要望に応えるが、仕様変更への対価は少ない」(吉田専務)

 超高層ビルを手掛ける大手の鉄骨加工会社も収益は厳しい。上場9社の12年4〜12月期の最終損益は合計6億円の赤字。丸ビルや東京スカイツリーも担当した川岸工業の高梨雄介専務は「ゼネコンが適正なマージンを支払わないと鉄骨加工業は成立しない」と漏らす。

 大手加工会社は「高層ビル用鋼材の加工費は1トン12万円前後が採算ライン」という。1990年前後のバブル期には加工賃は1トン15万〜25万円だったが、現在は6万〜7万円の例もみられ、同部門では赤字となる会社があるという。新日鉄住金など鉄鋼各社は鋼材の値上げを打ち出している。鋼材など資材価格や人件費の上昇でゼネコンは、加工賃の圧縮を続ける公算は大きい。

 大手のJFEエンジニアリングは3月に鉄骨事業から撤退。駒井ハルテックも1月に大規模な従業員のリストラを発表した。川岸工業も11年に一部工場を閉鎖した。駒井ハルテックの田中進社長は「技術力の対価が得られない会社は撤退するしかないだろう」と話す。

 高層ビルなどが専門の大手加工会社はピークの81年から8割減り17社になった。中小の鉄骨加工業は最多だった73年の半分の約2200社だ。

 13年は東京・六本木の再開発や名古屋駅前の超高層ビル計画などが相次ぎ、インターネット通販の物流倉庫の新設も増えている。工事案件の増加とは裏腹に採算悪化と事業の縮小を迫られる国内の加工業者には海外勢の参入も脅威だ。羽田空港旅客ターミナルビルで現在進行する大型増築工事の鉄骨加工をタイのMCSが請け負った。

 日本の鉄骨加工会社の衰退は工事の遅延に直結するが、ゼネコンは日本製鋼材を海外で加工して日本の現場へ運び込む「逆輸入」に乗り出した。大口案件なら国内で加工するより採算面でも優位だと判断した。

 川岸工業の高梨専務は「人件費が安い東南アジア勢の指名が増えれば、国内加工業界の危機だ」と指摘する。寸分たがわぬ精度で仕事をこなす日本の鉄骨加工業は、大きな転機を迎えている。

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