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耐震・耐火性能高いCLT――木造ビル、コストの壁に挑む、国産スギ有効活用のカギ。

[ 2015年9月6日 / 日経ヴェリタス ]

 欧州などでは、木造でも10階を超えるようなビルが建てられているのをご存じでしょうか。「木のビル」を可能にしたのが、直交集成板(CLT)と呼ばれる耐震・耐火性能の高い部材です。日本でも来年、CLTを壁や床に使った低層のホテルがお目見えします。国産材を使えば林業の再生につながるため、国は今年度の日本再興戦略に普及計画を盛り込んだほか、設計基準の整備を急いでいます。

 CLTは天然の木をノコギリでひいた「ひき板」を、繊維の方向が層ごとに直角に交わるよう互い違いに重ね、接着剤で圧着した木質材料です。木材は水分で収縮しますが、直交に重ねることで寸法変化を抑えられます。日本の木造建築では〓木造軸組工法が一般的ですが、CLTは強度が高く大きな面を作れるので、コンクリートに代わる材料として壁や床に使えます。

 今年2月には国産スギを使うCLTで阪神大震災を再現した耐震実験がなされ、5階建てでも十分な耐震性能が実証されました。厚みのあるCLTは耐火性能も兼ね備えます。一度火がついても炭化層が作られ、内部までなかなか燃えません。海外では石こうボードなどと組み合わせて耐火性を高めています。木材はコンクリートより〓熱伝導率が低く断熱性が高いため、快適な住環境を作れる利点もあります。外装材を施せば、耐久面で他の中高層建築物と大差はないとみられています。

 CLTは90年代から林業の盛んな欧州やカナダで普及し始めました。12年には豪州で10階建てのCLTマンションが建設されたほか、現在ノルウェーでは14階建ての工事が進んでいます。カナダでは目下、30階建てのCLTビルの建設計画も持ち上がっています。

 日本では16年春、2階建てながら、初の「CLTホテル」が登場します。エイチ・アイ・エス(9603)子会社のハウステンボスが開業する「変なホテル」の第2期棟です。72室の建物で国産スギ材のCLTを壁や床に採用します。設計と施工は鹿島(1812)で、一部は住友林業(1911)も協業します。

 強みは鉄筋・鉄骨コンクリート造のビルに比べ施工が簡単なことです。工場でCLTのパネルを製造し、現場で組み立てるので現場作業が短縮できます。運搬も容易です。英ロンドンではCLTの8階建てビルが、鉄筋コンクリート造より6週間短い12週間で建設できた例があります。鹿島の野出木貴夫建築設計統括グループシニアマネージャーは「日本でもCLTが普及すれば、建設現場の職人不足解消につながる可能性がある」と期待しています。

 HIS会長でハウステンボス社長も務める沢田秀雄氏は格安航空会社(LCC)ならぬ「LCH」(ロー・コスト・ホテル)を追求しています。初のCLTホテルで建設コストなどを検証し、将来は国内外で快適さと低コストを兼ねたホテルを展開する計画です。

 欧米に比べ日本がCLTで出遅れていたのは、法律面のハードルが高かったからです。日本の建築は建築材として認められた材料を使う必要があり、現在も壁や床などを全てCLTで作るには個別に国の認定が必要です。

 最近になってCLTが注目されたのは、林業再生の狙いが浮上したためです。スギを中心とする日本の人工林は第2次世界大戦後に植林され、植え替え時期を迎えています。木材の国内消費量の7割は安価な輸入材で、木材伐採量は成長量の5分の1にすぎません。森林荒廃を防ぐには国産材の活用が有効です。2015年の改訂版「日本再興戦略」では24年度までに国産材CLTを年産50万立方メートルと今の生産能力の50倍にする目標が盛り込まれました。

 制度整備も進んでいます。13年末にCLTの日本農林規格(JAS)が制定されました。国交省も来年に設計基準を設ける計画で、CLTも一般的な構造計算で設計可能になるのです。

 普及の壁はコストです。生産規模が大きい欧州では1立方メートルあたり500ユーロ(約6万6500円)ですが、日本では同15万円します。林野庁は同7万〜8万円ならコンクリート造と価格で対抗できる青写真を描きます。集成材メーカーの銘建工業(岡山県真庭市)は16年にCLTの専用工場を新設、パネルの大型化と生産コスト削減を狙います。

 大手企業もノウハウ蓄積に乗り出しました。竹中工務店はCLTを耐震壁に使う工法を開発、三井ホーム(1868)もグループ会社の事務所棟の一部にCLTを使い、断熱性や遮音性を検証します。三井ホームは主力の〓ツーバイフォー工法による商業建築事業に力を入れますが、同工法では5〜6階が限界なので、より高層の木造建築物でCLTを活用する狙いがあります。

 12年に設立した「日本CLT協会」の会員は当初の3社から230社以上に増えました。接着剤メーカーのアイカ工業(4206)など顔ぶれも様々です。コスト低減などが見えば投資材料としても注目されそうです。(本多奈織)

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