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ゼネコン流「コンセッション」、インフラ運営、長〜く稼ぐ、準大手・前田建設、建設縮小にらむ。

[ 2017年2月10日 / 日経産業新聞 ]

 準大手ゼネコンの前田建設工業が建設会社の新しい稼ぎ方を確立しようとしている。もくろむのは道路や空港などのインフラ運営事業の拡大だ。2020年の東京五輪・パラリンピック開催後は建設市場が縮小するとの見方が有力。前田建設は長期間にわたって安定的に収益を支える柱としてインフラ運営事業に着目している。(関連記事14面に)

 「知多半島でとれたお米、どうぞ食べてみてください!」。1月下旬、知多半島道路の阿久比パーキングエリア(愛知県阿久比町)の一角では、地元で生産された米でつくった餅菓子などが振る舞われ、大きな人だかりができた。

土木のノウハウ

 愛知県内にある有料道路8路線を運営する愛知道路コンセッション(半田市)が地域をPRするために行った事業「愛知多の種(あいちたのたね)」の一環だ。イベントで一般の関心を高め、有料道路の利用者を増やすのが狙いだ。

 こうしたイベントは月1〜2回程度、複数のパーキングエリアで実施している。16年11月に現地産の牛肉をアピールしたときには、2日間あわせて1000人以上の人がブースに押し寄せた。

 愛知道路コンセッションの設立は16年8月。愛知県道路公社が管理していた有料道路8路線の運営権を県が民間に売却(コンセッション)するための特別目的会社(SPC)として誕生した。この会社に50%出資して筆頭株主になっているのが前田建設だ。2位株主が森トラスト(30%)。残りは大和リースなど3社が出資している。

 運営権の期間は30年で価格は約1377億円。愛知道路コンセッションはこれを30年かけて支払う。同社の主な収益源は有料道路の料金収入。大まかに言えば、収入と運営権の支払いとの差額が同社の利益になり、前田建設をはじめとする株主への配当の原資となる。

 利益を膨らませて配当を増やすには、有料道路に利用者を呼び込むのが近道だ。前田建設は有料道路周辺の飲食店や商店などの智恵を借りて集客イベントを企画した。物販収入を増やすため、パーキングエリアを2つ新設する。

 道路以外にも収益源を求める。ホテルの運営実績がある森トラストの協力を得て、中部国際空港がある島に150〜300室程度のホテルを設ける計画を練っている。有料道路の周辺にある畜産農家から牛ふんを集めてバイオガスを生産する構想もある。

 道路の維持・管理には本業の建設業のノウハウを活用する。「CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」と呼ばれる土木分野での3D(3次元)の設計手法を使うことを検討している。道路の3D図面に部分ごとの保守履歴をひも付け、点検の際などにタブレット端末から必要な情報をすぐ呼び出せるようになる。

 公社時代は3つある事務所がそれぞれ資材を発注するなど、業務の重複が多く、コストが膨らむ一因になっていた。今は事務作業をできるだけ本社に集約させている。事務連絡にスカイプを活用するなど、IT(情報技術)の導入も進める。「幅広い分野で効率化の余地がある」と愛知道路コンセッションの東山基社長は語る。

 なぜ前田建設がインフラの運営に乗り出しているのか。本業の建設事業では、東京都心部の再開発や大型物流施設の新設などが相次ぎ、受注環境は良好だ。

ストック型事業

 だが、そうした動きも20年の東京五輪・パラリンピックまでには一巡するとみられ、それ以後は人口減少を反映して建設市場も縮小するとの見方が大勢を占める。前田建設の前田操治社長は「中長期的に、請負の仕事の中心は既存の建物の維持・管理になる」と話している。

 一方、インフラ運営事業は一度受託すれば数十年にわたり、安定した収益が見込める。景気変動の影響もそれほど大きくない。建造物の建設を請け負って、その都度、収益を得るのが「フロービジネス」だとすれば、インフラ運営事業は「ストックビジネス」。売り上げ規模はそれほど大きくないが、利益は確実に得られる。こうした特性が前田建設の中長期的な経営方針と合致した。

 道路だけではない。前田建設は東京急行電鉄や豊田通商と共同で空港を運営するための会社を設立し、15年12月に仙台国際空港(宮城県名取市)の運営権を22億円で取得した。16年7月には運営を開始、収益向上策が動き出している。

 格安航空会社(LCC)を主な対象とする旅客棟を4月に着工、18年3月に竣工する。空港の1階部分を改修しており、旅客棟の竣工にあわせて飲食店を増やしたり、周辺の交通アクセスを教えてくれる案内デスクを設けたりする。

 9日に前田建設が発表した16年4〜12月期連結決算では、インフラ運営事業の売上高は46億円、営業利益は12億円だった。実質的に始まったのは今期のため、連結売上高に占める比率は2%弱、連結営業利益に占める比率も7%弱とまだ低い。だが、数年後にはこの数字が一変する可能性を秘めている。

 国や地方自治体が既存のインフラを売却し、民間企業に運営を任せることで収益をあげさせて税収につなげるのがコンセッションの主眼だ。国や自治体にとって財政の健全化は急務で、コンセッションの案件は今後も相次いで出てくる公算が大きい。

 前田建設でインフラ運営事業を統括する岐部一誠常務執行役員は「投資に対するリターンを考慮しながら、今後の参画案件を決めていく」と話している。

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