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国産木材いまモテ期、加工を一工夫、高層ビルにも、鉄骨一体、耐火性高く。

[ 2017年5月2日 / 日経産業新聞 ]

 国産木材を建築に生かす企業が増えている。工法の進歩に加えて加工技術も高まり、戸建て住宅や低層建築にとどまっていた活用の場をスポーツ施設やオフィスに広げている。身近な木々の利用が木材の自給率を高め、新たな設備投資を呼ぶ好循環も見えてきた。

 一歩足を踏み入れると心地よい木の香りが鼻をくすぐった。東京・豊洲の「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」。東京ガスグループ、東京建物などが2016年12月に開いた陸上練習場だ。長さ60メートルの短距離走レーン6本を透明フィルムがビニールハウスのように覆っている。

 香りの正体はフィルムを支えるアーチ型のフレームだ。長野産カラマツの集成材を計636本使っている。木質部材を金具で組み合わせた上、2枚のフィルムを空気圧でレンズ状に膨らませて強度を保っている。工法の工夫で長さ109メートル、幅16・3メートルの建築物を木製フレームで支えられるようになった。

 自らも実業団の全国大会に出場する大西正裕さんは、この施設で小学生向けランニングスクールのコーチを務める。「木の香りでリラックスして練習できる。夜の体育館や屋外と違い、あっという間に時が流れる気がする」と笑顔を見せる。

人工林5倍に

 設計を担ったE・P・A環境変換装置建築研究所(東京・目黒)の武松幸治社長は、国産材を使った理由を「丸太の調達スケジュールが立てやすかった」と明かす。日本は国土の3割近くが人工林だ。戦後に住宅の建材を得るために植えた木の多くが今、使える状態になっている。

 林野庁によると、12年の人工林の体積は約30億立方メートル。1966年からの半世紀近くで5倍以上に増えた。日本集成材工業協同組合(東京・中央)の片岡辰幸専務理事は「国産資源が育って安定調達が可能になった」と話す。割安な輸入材に押されて需要が減った結果、価格も下がってきた。

 工法や加工の技術も高まっている。カラマツは弾力があり強度も高いが、割れやすい。かつては土木用途が中心だった。カラマツの板を貼り合わせて割れを防ぐ集成材の開発が進み、建築への用途が広がった。

 スタジアムに集成材を供給した斎藤木材工業(長野県長和町)の斎藤広社長は「国産材は日本の四季で育った。海外産の木材に比べて、高温多湿の環境でも長く安心して使いやすい」と話す。日本で流通する集成材原料の多くはまだ欧州産だが、長野産のカラマツを使うことで輸送面の環境負荷も減るという。

 東京都国分寺市、JR国分寺駅の近くで7階建てビルの建設が進む。施工を手がける住友林業によると、骨組みには北海道産と長野産のカラマツを、外装と床には多摩産のスギを用いる。耐火性を重んじる高層ビルの骨組みに木を使うのは、日本ではまだ珍しい。

 木化営業部工事チームの山木一彦係長が指さしたのは、一見するとただの木柱。じつは内部に鉄骨を入れて強度を高めた「木質ハイブリッド集成材」だ。4〜7階の骨組みの大半にハイブリッド材を用いるという。

 木材を使うのは、従業員が快適に働ける環境にしたいという、建築主のアロマ製品輸入販売会社、フレーバーライフ(東京都国分寺市)の希望だ。課題は価格と耐火性の両立だった。住友林業は耐火性が高い集成材を使う一方、接合部の簡素化や石こうボードなどの併用も進め、全て鉄骨で作った場合に比べて10〜15%のコスト増にとどめた。

 住友林業木材建材部木化グループの西出直樹マネージャーは「伐採が進まないと(森が荒れ)土砂崩れにつながることもある」と国産材を使う意義を訴える。輸入材のように為替に影響されず、価格も安定している。設計を担ったスタジオ・クハラ・ヤギ(東京・千代田)の八木敦司代表は「木材の量を調整すれば様々な予算に応じられる」と語る。

 木材の高層ビル活用は欧州が先行した。きっかけは1990年代の直交集成板(CLT)の登場だ。木目が直交するように板を重ね、強度と耐火性を高めた。国産材の主役であるスギは柔らかさが弱点。CLTなら高層建築にも道が開ける。

 日本CLT協会(東京・中央)によると、国内でCLTを使った建物はホテル、公共施設など約70カ所。新豊洲Brilliaランニングスタジアムも事務所などに長崎産ヒノキ・スギのCLTを使っている。CLT協会は17年の国内生産量を前年の4倍の2万立方メートルと見込む。

子供にも親しみ

 公共施設への国産材活用が進む背景には、木の良さを住民に知ってもらおうという自治体の意向もある。ゼネコンも商機をつかもうと対応する建材の開発を進めている。

 東京都江東区が18年4月に開校する小中一貫教育の有明西学園。柱などには竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド」を使う。建築基準法が求める1時間の耐火性能をクリアし、国土交通大臣認定を得た。原料は長野産のカラマツだ。

 江戸時代の木場の流れをくむ江東区には、今も木材問屋が集まる。地元には若い世代に地場産業に親しみを持ってほしいという思いがある。耐火規制が壁だったが「燃エンウッドで鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りと同じように計画できるようになった」(竹中工務店)。

 国産材の需要の高まりを見据え、設備投資に動く企業も出てきた。製材大手の中国木材(広島県呉市)は20年までに日向工場(宮崎県日向市)に約192億円を投じ、製材工場や木質バイオマス発電施設を増設する。

 日向工場のある宮崎県はスギ生産量が日本一だ。堀川智子社長は「国産材のニーズは高まっている。産地から安定して丸太を調達し、林業従事者の生産意欲も高めたい」と意気込む。16年に約43万立方メートルだった原木取扱量を、20年までに70万立方メートルに拡大する考えだ。

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