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多世代集う、シニア住宅――住み替え想定、生活とケア一体(住まいナビ)

[ 2017年5月17日 / 日本経済新聞 夕刊 ]

 不動産各社が、多世代がふれ合う新たな交流拠点としてシニア住宅の整備を進めている。年齢を重ねていく中での住み替えを想定し、健康な人の居住スペースと要介護者のケア施設、看護事業所などを一体的に開発。専門研究機関の知見を生かして認知症患者が住みやすい設備を導入したり、健康寿命を延ばすための新サービスを提供したりしている。

 「もういい年齢なのでいつか介護問題が出てくる。介護付き老人ホームも視野に入れていたところ、この物件に出合った」。東急不動産が手掛ける分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」(東京・世田谷)を購入した80代の男性は言う。

 同マンションは東京都が進める「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」の1号案件として整備。約3万3千平方メートルに及ぶ敷地内でブランズ、要介護の高齢者が居住する「ケアレジデンス」を併設したシニア住宅「グランクレール」、介護や看護事業所、認可保育所が入るコミュニティプラザと一体的に開発した。

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 購入者には完成後20年までは、ケアレジデンスに住み替えることを前提に東急不動産が買い取りを保証する仕組みを取り入れた。売却代金をケアレジデンスの入居費用に充ててもらうことを想定している。「(ブランズやグランクレールで)2世代、3世代で住む方々もいる」と東急不動産シニア住宅事業部の林靖人氏は話す。

 ケアレジデンスは日本初の試みとして、認知症研究で実績のある英スターリング大学の知見を生かした機能を採り入れた。例えば、水道の蛇口は最近ではセンサーを利用して手を触れずに水が流れる仕組みが多いが、ここでは古風なひねるタイプ。「認知症の患者は今よりも過去の記憶がより鮮明。30〜40代の時に親しんだものを使うことが混乱の回避につながる」と同大のレスリー・パーマ氏は狙いを説明する。

 トイレのドアの全面を黄色に、風呂場の手すりは赤色で統一したのは、衰えた記憶力に頼らずに色覚で空間の違いを判断してもらうための工夫だ。

 ブランズ、グランクレール双方の居住者が利用できるコミュニティプラザの一部施設では、近隣の住民が参加し、東京都市大学と共同で企画した地域交流プログラムも実施する予定。多様な交流が健康寿命を延ばすことにもつながるとの期待が背景にある。

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 多世代交流がコンセプトのシニア住宅はほかにも広がる。東京建物グループが19日に東京・世田谷に開業するシニア住宅「グレイプス用賀」。介護などの資格を持つコンシェルジュが健康状態などの相談に乗ったり、食事などの日常サービスを受けられたりする健康な高齢者向けの「レジデンスフロア」、要介護や認知症患者など向けの「ケアフロア」で構成する。

 敷地内に看護・介護事業所、さらには認可保育所も設ける。介護が必要になればレジデンスフロアからケアフロアへの住み替えられる。

 要介護の高齢者1人での居住を想定したワンルームのケアレジデンスが多い中、グレイプス用賀のケアフロアでは夫婦での居住を想定して約45平方メートルの1LDKや、約65平方メートルの2LDKタイプも用意。共用部にはカラオケや映画観賞が楽しめるシアタールーム、日比谷花壇と連携して精神機能の維持や回復につながるとされる園芸療法を行えるテラスなども設けた。

 東京建物は、介護職や看護師が対象の人材派遣会社のケアライク(東京・豊島)をこのほど買収。今後のシニア住宅の展開に向けた体制を整えた。同社は「年内に神奈川県や東京都の2カ所でシニア住宅の展開を予定している」という。

 野村不動産も4月、シニア住宅事業に参入すると発表した。1人または夫婦で暮らす高齢者を対象にした住宅で、健康増進を目指すエクササイズを提供するのが特徴。今後10年で40棟、合計5千戸分の供給を目指すという。

 2060年には総人口の約4割が65歳以上という超高齢社会を迎える。シニア住宅の進化は今後も続きそうだ。(企業報道部 加藤宏一)

賃料は通常より高額

 シニア住宅は手厚いサービスが魅力。ただ、賃料は通常の賃貸住宅に比べて高額だ。東京建物のグレイプス用賀の場合、月額賃料は14万2870〜42万8250円。ケアフロアでは見守りサービス費(1人、9万8280円)もかかる。

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