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ゼネコン4社、前期最高益、人手不足、価格交渉優位に、今期も上振れ余地(決算深読み)

[ 2017年5月13日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 ゼネコン(総合建設会社)大手4社の2017年3月期の連結純利益は、いずれも2期連続で最高益を更新した。工事原価の4割前後を占めるとみられる労務費が当初想定ほどには膨らまず、期初予想からの上方修正が相次いだ。今期は大林組を除く3社が労務費の増加を見込み減益予想を出しているが、上振れ余地もありそうだ。

 4社合計の営業利益は5587億円と期初予想を49%上回った。首都圏を中心とした旺盛な再開発やインフラ整備需要を背景に、ゼネコンの価格交渉力が強まっており、工事採算が総じて改善した。

 労務費もさほど大きくは増えなかった。国土交通省のデータによると、建築着工単価は5年前の12年3月期から2割伸びている。これに対し、建設市場での労務費の目安となる公共事業の設計労務単価は同期間に1割しか上昇していない。

 理由はいくつかある。まずは省力化の工夫だ。「新工法が浸透しており型枠や鉄筋工の人手にはまだ余裕がある」と決算会見で大林組の原田昇三副社長は指摘。下請け業者とは長期の取引関係があり、あらかじめ一定程度の人手を確保しておくので、労務費は急には変動しにくい。また、「もうかりすぎていると施主に思われると営業活動に支障を来す」(業界関係者)ため、「労務費が重い」と強調してしまいがち、との事情もあるようだ。

 今期も労務費の行方がカギになる。慎重にみるのが鹿島、大成建設、清水建設の3社で、それぞれ2ケタの営業減益を見込む。鹿島は労務費上昇の影響が大きく、工事採算を示す完成工事総利益率(個別ベース)が建築分野で10・3%と前期より3・1ポイント悪化すると見込む。「東京五輪に向けた工事が本格化し、人手不足がより厳しくなる」(高野博信取締役)ためだ。

 一方、大林組は労務費が横ばい圏にとどまると想定。純利益は1%増の950億円と最高益を更新すると見込む。

 前期に最高益が相次いだこともあり、株式市場では「労務費が増加する」との想定には懐疑的な声が多い。野村証券の前川健太郎氏は「首都圏に工事は集中するが、人手不足も工事量も消費増税の駆け込み需要があった13年度と比べてもまだ低水準」と分析。「労務費の上昇は緩やかなペースにとどまりそうだ」と指摘する。

 実際、12日の株式市場ではゼネコン各社の株価が軒並み逆行高となった。例えば今期の純利益が4%減少すると見込む大成建設の株価は一時3%高の910円まで上昇し、年初来高値を更新した。

 ゼネコンは設計変更に伴う追加工事という業績の上振れ要因が出やすい業態ではあるが、ここ数年は期初予想と実績との差が特に大きくなっている。今期も同じことが繰り返される可能性があると、市場は見通しているようだ。

(大西康平)

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