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鋼鉄より軽くて強いCNF、車・断熱住宅へ実用めざす。

[ 2017年5月24日 / 日経産業新聞 ]

 植物からできた新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の実用化を目指す研究が盛んだ。鋼鉄より軽くて強いうえ、再利用がしやすい。自動車や住宅、家電の部材に応用すれば、低燃費車や断熱性に優れた住宅の実現につながる。国としても環境省が2016年度に研究事業を立ち上げ、支援に乗り出した。

 11日、富士山麓の富士スピードウェイにデンソーやトヨタ紡織、京都大学など約20機関の関係者が集まった。CNFを自動車の部材に使う環境省の研究事業で、展示会や発表会が開かれた。

 豊田中央研究所の臼杵有光リサーチ・アドバイザーは「19年度に試作車を作り、実用化につなげたい」と意気込む。CNFは紙に使うパルプを薬剤で処理して作る。太さが数ナノ〜数十ナノ(ナノは10億分の1)メートルで、重さは鋼鉄の5分の1と軽く、強度は5倍だ。CNFを使って車体を軽くし、走行時に出る二酸化炭素(CO2)を減らす目標を掲げる。

 すでに実現に向けた研究は始まっている。デンソーは、カーエアコンを収める大型容器の樹脂にCNFを練り込んだ。アイシン精機はエンジンの空気取り入れ口を、トヨタ紡織はドアの内側部分を、CNFを練り込んだ樹脂で作る計画を発表した。

 環境省は温暖化ガスを減らす目的で、CNFの活用を促す研究に17年度は39億円を拠出する。

 地球温暖化対策事業室の河田陽平室長補佐は「自動車のエンジンの効率化はほぼ限界。軽量化が燃費低減の鍵を握るなか、CNFに期待がかかる」と話す。CNFの特許や論文数は日本が世界をリードしており、技術や研究面の優位性を生かしやすいという。

 住宅でもCNFの活用が期待されている。静岡大学を中心に断熱性に優れた住宅部材の開発も進む。

 壁や天井の断熱素材は、内部の隙間に空気をためる。隙間が大きく、空気が増えると断熱性が高まる。住宅の冷暖房に使う電気やガスを減らしてCO2の排出量を抑えられる。

 断熱素材にCNFを使うと、隙間を増やしても十分な強度を保てる。まず静岡大がコンピューターシミュレーション(模擬実験)で隙間の大きさなどを計算し、断熱の効果や強度との両立を検証する。今後は住宅メーカーと協力し、実際に部材を試作する計画だ。

 もう一つの期待分野が家電だ。パナソニックが冷蔵庫や洗濯機の部材向けに研究を進める。ガラス繊維の代わりに使い、断熱性を高めたりリサイクルしやすくしたりする。

 CNFは国内産の木材から作れる。今は製造コストが高いが、将来は1キログラムあたり300〜1000円で作れる見込みだ。強度のある新素材としては炭素繊維が知られるが、同3000円程度かかるという。CNFの応用先は多い。

 今後は安定供給が課題だ。木材から作れるといっても、専用の生産設備がいる。十分な量の原料を調達できるかどうかも重要になる。環境省の助成に頼らず、企業が自ら事業に取り組む姿勢も大切だ。

 日本製紙などが生産を始めたが「生産できるタイプによって、適した用途などがそれぞれ異なる。どの会社のタイプが今後生き残るかは分からない」(河田室長補佐)。

 今後、車や住宅などで需要が高まれば供給不足に陥る可能性もある。世界でも新素材への注目は高く、今のうちに産学官が一体で実用化を急ぐ必要がある。

(草塩拓郎)

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