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地盤ネットホールディングス山本強社長――地盤の知識、消費者にも、建築業者との情報格差解消(成長の起点)

[ 2017年7月5日 / 日経産業新聞 ]

 戸建て住宅を建てる前の地盤調査を請け負う地盤ネットホールディングス。地盤改良まで一括で手掛ける同業者が多いが、地盤調査に特化したビジネスで業界2位に駆け上った。山本強社長(51)は消費者向けのアプリ配信や住み替えを提案する不動産サイトを始めるなど、新たなアイデアで事業拡大を目指す。

 地盤の安全性への関心が一気に高まったのは2011年の東日本大震災のときだった。震災後1週間は同社でも調査依頼が増えたが、なぜかその後はピタリとやんだ。

 「地盤ネットは調査だけで改良はしない」という話が広まり、地盤改良ができる同業他社に客が流れていたのだった。地盤調査に特化したことが裏目に出た形だったが、調べてみると被災区域内で過去に改良工事は不要と判断した約800件の物件では1件も被害がなかったことが判明。このことをアピールすると徐々に依頼が戻ってきた。「災害が起こらないと地盤が本当に安全なのかどうかは分からない。実績が信用につながった」

 これを機に、損保会社とも提携。それまで地盤ネットが安全と判断した地盤が不良だった場合は同社が被害の補償をしてきたが、リスクを軽減するとともに信頼も高められた。業績も12年末には前年度比の4倍に伸ばし、東証マザーズ市場への上場にこぎつけた。

 山本氏が1990年に新卒で就職したのは証券会社だった。やがてバブル崩壊に見舞われると、各業界が不振にあえぐなかで事業規模を維持していた不動産業に着目。94年に住宅関連会社に転職し、3年後には子会社の地盤調査会社に移った。

 ちょうどその頃話題になっていたのが地盤の手抜き工事。95年の阪神大震災を発端に欠陥住宅が問題となり、住宅建設時の地盤調査を義務付ける「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が2000年に施行された。地盤調査のニーズが拡大し調査会社も急増。ただ数値基準が異なり、結果の説明も不十分な会社が横行した。

 地盤調査を透明にすることが必要だと考えた山本氏は08年に起業。最初はスタッフ5人で、工務店や住宅メーカーからの依頼を受け住宅地盤の改良工事が必要かどうかを調査する事業を始めた。すると過剰な改良工事にかかるコストを削減するため、セカンドオピニオンを求めて施工業者から再調査の依頼が舞い込むようになった。

 国が定めた調査法にのっとり他の業者の地盤データを再解析した結果、地盤改良が必要とされた土地の約8割が改良の必要がないことが分かり工事の件数を4万件減らすことができた。地盤ネットの信頼度も高まり、新規の取引先が増えた。

 山本氏はさらに信用を補完するため12年末までにマザーズ上場を決意。監査法人などから財務のプロを雇い、従業員数を約50人に増やし、上場を果たした。

 最近では消費者向けサービスも始めた。15年には地域ごとの地盤の安全性が分かる「地盤カルテ」を発表した。16年には位置情報サービスと連携。スマートフォンアプリ「じぶんの地盤」を起動すると、浸水や液状化の可能性、地震の揺れ方などから地盤を100点を満点とする点数で評価してくれる。利用者は6月に12万人を超えた。

 「消費者に地盤に関する知識を持ってもらい、建築業者との情報格差を解消したい」。23年までに調査件数を年間20万件に増やし、売り上げ100億円を目指す。(高木雄一郎)

トップは語る
災害に強い物件提案

 地盤への関心を高めるため業界初となる不動産サイト「JIBANGOO(ジバングー)」を2月に開設しました。地盤アプリ「じぶんの地盤」で安全性が80点以上の地域にある不動産物件のみを掲載しています。

 住宅物件は駅から近いほど人気ですが、ジバングーでは駅から離れていても、災害時にも安心して住める物件を掲載しています。イメージに左右されない安全性を重視して不動産を紹介し、流通促進につなげたいと考えています。

 日本国外にも災害によって地盤が崩れやすい地域は存在します。フィリピンやインドネシアなどで地元工務店と協力し、地盤調査事業を展開する方法を模索しています。

 地盤調査だけでなく、地盤に応じた家の建て方や建材の開発も他社と共同で進めたいと思っています。地盤の強度によって工事の工程も変わってきます。秋からは地盤によって異なる横揺れの特性に合わせた住宅設計プランを提供します。消費者が地盤の調査から工事に至るまでの知識を持って選べるような仕組み作りをしていきたいです。

《山本社長の歩み》
1990年 関西学院大法卒、三洋証券入社
  94年 アイフルホームテクノロジー(現LIXIL住宅研究所)入社
  97年 ジャパンホームシールドに出向
2008年 前身となる地盤ネットを設立
  12年 東証マザーズ上場
  14年 地盤ネットホールディングスに社名変更

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