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都会の緑地に生物多様性、大成建設、再開発で自然再現、鳥類など、飛来・生息。

[ 2017年7月4日 / 日経産業新聞 ]

 オフィス街で緑地の重要性が注目されている。大成建設は再開発やビルの建て替え時に、見栄えを優先した人工的な緑地ではなく、自然を忠実に再現した緑地づくりを進めている。重視するのは生物の多様性だ。地域固有種のデータを集めた支援ツールも整備し、都会の森づくりに挑む。

 「ここに森を作れば、こんな生物がやってきますよ」。ある大規模再開発地域。地権者らに対し、タブレットを片手に状況を説明する大成建設担当者の姿があった。

 タブレットには「いきものコンシェルジュ」と呼ばれるソフトウエアが入っている。鳥類、チョウ類、トンボ類の3種の生物について、緑地に飛来したり、生息したりする可能性がある品種を予測することができる。

 例えば鳥類であれば、「メジロ」「シジュウカラ」「ツグミ」などの飛来可能性を3段階で示すことで、完成後の緑地における生物多様性がイメージしやすくなる。

 ソフトはこれまで工場や研究所の敷地内にビオトープ(水辺)を作るために使われていた。

 「生き物が来るか来ないかというシンプルな表示のため、難しく考えずに理解してもらえる」

 同社の鈴木菜々子主任はこう説明する。ソフトを開発したのは3年前。最近では水辺に限らず、都市計画などでもソフトを利用し始めた。

 年内には植物の情報をまとめた新ソフト「森コンシェルジュ」も導入する。こちらは地域に適した固有種の植生をまとめたデータベースだ。

 まず周囲の緑地にどんな種類の木や草があるかを調べて入力する。特徴は、周辺の緑地も合わせて大きな1つの森と見なし、欠けている樹種や草花を自動で割り出せることだ。例えば近隣の緑地でその土地に合った高木が植えられていれば、計画地では低木や草地を作ることで最適な生態系が構築できることになる。

 動物と植物。これら2つのソフトを使い分けることで、緑地に関わるコンサルティングや計画立案を迅速に進められる。

 これまで都市部での緑地計画と言えば、ヒートアイランド対策や二酸化炭素(CO2)削減が主な目的だった。

 潮目が変わったのは2010年。名古屋市で「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開かれ、環境省が生物多様性のガイドラインをまとめたことが契機という。以来、企業や自治体で生物多様性という概念が次第に定着してきた。

 そんな中にあって、大成建設は建設会社の中でも生物多様性の視点を先駆的に採り入れてきた。例えば同社が建設して01年に完成した札幌ドームは敷地内に生態系に配慮した緑地を整備。この15年間の観察で、周辺の鳥類やトンボ類が倍増したことが確認されている。

 都内で同社が手掛けた特徴的な事例は、東京・千代田の「大手町の森」だろう。14年に完成した大手町タワーの敷地の3分の1にあたる3600平方メートルの土地に100種類以上の樹木を植えた。

 「人工的な」庭園では使われないシダなどの雑草や斜めに伸びる木などもある。大成建設の環境本部生物多様性・アセスメント室の埴田直子室長は「自然な森の姿にこだわった」と話す。

 ただ、大手町の森のような大規模な緑地の場合は、調査にも計画策定にも時間がかかる。「生息情報の分析や地形の調査などに1年以上かかった。どんな案件でも同じことができるとは限らない」(鈴木主任)。

 そこで、より多くの顧客に身近に、かつ簡便に、緑地を検討してもらうために、今回、タブレットのソフトで「見える化」したのだとという。中小ビルなどの比較的小規模な緑地であっても、使いやすいのが強みだ。

 東京五輪・パラリンピックに向けて都心では再開発ラッシュが続く。大成建設のツールの活用がさまざまな場面でさらに広がるかもしれない。

(安田亜紀代)

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