日経メッセ > 建築・建材展 > ニュース > 「ハイツ」に始まり、今や出尽くし感――マンション名は、漢字台頭の兆し。

日経の紙面から

「ハイツ」に始まり、今や出尽くし感――マンション名は、漢字台頭の兆し。

[ 2017年7月8日 / 日経プラスワン ]

 日本にマンションが登場して半世紀以上。東京や大阪には高層物件が立ち並び、外国人の入居者も増えた。見上げるマンションは庶民にとって憧れの的。そのネーミングには夢や希望、時代の雰囲気が表れている。

 タワーマンションが林立する東京の湾岸エリア。より上を目指すのは高さだけではない。三菱地所が手掛けた「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」(東京・中央)と隣の「同ティアロレジデンス」。名称の文字数は何と20を超える。

 クロノやティアロは、世界共通語として19世紀末に作られたエスペラント語。同社は「都心の輝き」との思いを込めたと言うが、入居者は呪文のような名称に苦労しそうだ。

 マンションは本来、大邸宅を意味する。日本では中高層の集合住宅を指す言葉として定着した。不動産情報の東京カンテイ(東京・品川)の協力を得て、東京23区と大阪市の分譲マンション名の移り変わりを分析した。

 カタカナ部分に注目すると、1970年代以前に多かったのは「ハイツ」「コーポ」「ハイム」など。今では昭和の懐かしさすら感じさせるが、当時はこれが最先端だった。「ロイヤル」や「ネオ」といった名前には、誇らしさが満ちあふれている。

 マンション名は時代を映す。80年代は郊外立地が増え、「グリーン」「パーク」が目立つようになる。ウオーターフロントの開発が進んだ90年代には「リバー」や「ベイ」「シー」が登場した。

 川(リバー)は本来、住居としてはマイナスの用語だったが、「再開発の進展やリバーサイドを舞台にしたテレビドラマの人気で、好印象の言葉に変わった」とマンション名に詳しい政策人口研究所(東京・新宿)の藤井多希子所長は指摘する。

 そしてバブル崩壊、リーマン・ショックなどを経て現在へ。時代にもまれたマンション名の今を読み解くカギの一つは外国人の登場だ。

 かつてはアモーレ、シャトーなど、外国人が首をかしげるキラキラネームがあったが、「さすがに恥ずかしくなったのか、最近は姿を消した」(東京カンテイの高橋雅之主任研究員)。代わって「レジデンス」「ハウス」などオーソドックスで分かりやすい名前が復活してきた。

 さらに、外国人の入居希望者や投資家に響くよう「日本を代表する地名を付ける物件が目立っている」(同)。その典型が「東京」。今回の分析では、「東京」を含む物件は2000年には30ほどだったが、今では350に大幅増。立地場所は都県境を越え千葉市にまで進出した。

 マンション業界の勢力地図の変化もネーミングに影響を与える。近年、大手の寡占化が進んだ結果、同じエリアで自社の物件が競合するケースが目立ってきた。

 住友不動産は東急東横線中目黒駅周辺の3カ所で「シティハウス」シリーズを分譲している。自社競合がなければ「シティハウス中目黒」で決まりのはずだが、後ろに「テラス」「ステーションコート」「レジデンス」を付けて区別している。その結果「名称は長くなりがち」(同社)。

 今や全国のマンションは10万棟を超え、業界からは「考えられる名称はほぼ出尽くした」との声も出る。では、今後のマンション名はどうなるのだろう。住居評論家の榊淳司さんは「長いカタカナ名が飽きられ、漢字が台頭する可能性がある」と予想する。その兆候は京都にあるという。

 探してみると、ずばり漢字4文字で言い切る「賀茂川邸」があった。「レジデンス」を「邸」に置き換えただけともいえるが、漢字にはカタカナにはまねできない和の気品が漂う。歴史上の名称を借りた「ライオンズ伏見桃山 指月城」は秀吉の故事が思い浮かぶ。確かにこれなら一国一城の主を気取れそうだ。

日本一低い?「タワー」5階

 東京都北区におそらく日本で最も低い「タワーマンション」がある。JR山手線田端駅から歩いて6、7分。バス通りから1本入った場所にお目当ての「ビクトリータワー田端2」がそびえていた。

 1、2、3......。数えてみると、なんと5階建て。ワンルームが13戸入る縦長の「タワー」を、周りからファミリーマンションや業務ビルが見下ろす。近くの不動産店を訪ねると「満室稼働中で、内覧は無理です」。駅近のタワマンはここでも人気がある。

 不動産業界では20階以上をタワーマンションと呼ぶが、あくまで自主基準。消費者庁に聞くと「5階建てでも、一概に不当な表示とはいえない」(表示対策課)という答えが返ってきた。(田辺省二)

ニュースの最新記事

PAGE TOP