日経メッセ > 建築・建材展 > ニュース > 日本一の高層ビル、勝算は?――三菱地所社長吉田淳一氏、オフィスの潜在需要喚起(そこが知りたい)

日経の紙面から

日本一の高層ビル、勝算は?――三菱地所社長吉田淳一氏、オフィスの潜在需要喚起(そこが知りたい)

[ 2017年8月11日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 三菱地所は東京駅北側で2027年度までに日本一高い390メートルの高層ビルを建設する。総事業費が4946億円に上る巨大な再開発事業だ。かつて日本一の高さを誇った横浜ランドマークタワー(横浜市)の建設では1000億円超の減損・評価損を計上した。リスクはないのか。吉田淳一社長に勝算を聞いた。

 ――なぜ日本一の高層ビルを建てるのですか。

 「外国人旅行客の誘致や国際金融拠点の構築に向けて世界に向けた情報発信が重要になる中、再開発する常盤橋街区は首都の玄関口の東京駅前にあり、日本一のビルを建てるのにふさわしい。日本を代表する重要なプロジェクトという気概を持っている」

 ――横浜ランドマークタワーでは多額の損失処理を迫られました。今回は投資リスクをどう見ていますか。

 「ランドマークタワーはビルの構造もやや特殊で修繕がしにくく、完成後もお金がかかる要因となった。反省を生かし、常盤橋のビルはメンテナンスのしやすさを重視している」

 「常盤橋街区は東京駅のそばというオフィス立地としては最高の場所だ。近隣にはメガバンクが本社を構えるなど金融機能も整っている。オフィスの潜在需要は大きい」

 「複数の事業者がおり、事業費の全額を我々が負担するわけではない。我々は丸の内の再開発では年1000億円前後の投資を継続している。常盤橋の再開発は10年かけて進めることを考えれば、投資額が突出して大きいわけではない」

 ――18年から20年にかけて東京都心でオフィスビルの大量供給を迎えます。供給過剰の懸念はありませんか。

 「(東京商工会議所ビルなどを建て替えて)18年に完成する『丸の内3―2計画』など当社のプロジェクトはテナントのメドはほぼついた。企業集積が高く、外国人観光客から高い評価を得ている皇居を抱える丸の内エリアなどは非常に競争力が高い。一方で東京五輪が開かれる20年以降を見据えると、東京の中でも苦戦するエリアも出てくる。地域ごとの優勝劣敗がはっきりしてくるだろう」

 ――働き方改革で在宅勤務も広がる中で、今後もオフィスの需要は維持できるでしょうか。

 「企業のニーズを先んじてとらえ、オフィスを設ける意義をしっかり考えないといけない。17年度中に丸の内地区の新本社に移転する計画だが、生産性の向上につながる職場環境をアピールできるしつらえにする。実際のスペースを説明材料として使えるようなオフィスのショールームの場にする」=随時掲載

聞き手から一言
丸の内収入健在
課題は「丸の外」

 三菱地所の2017年3月期の単体売上高のうち丸の内エリアの賃貸収入の割合は52%を占める。同エリアの賃貸収入は堅調で、日本最高の立地に保有物件を多く抱える「丸の内の大家」の強みは健在。常盤橋街区の再開発事業はその強みにさらに拍車がかかると期待されている。

 一方で働き方改革で在宅勤務が増えれば、オフィス需要は必ずしも安泰ではない。吉田社長は「従来とは異なるビジネスモデルの構築が必要になる」と話す。丸の内で稼げるうちに、「丸の外」の深耕に道筋をつけることも重要だ。

(加藤宏一)

 よしだ・じゅんいち 82年(昭57年)東大法卒、三菱地所入社。16年取締役執行役常務、17年4月、社長に。人事部門の経験が長く、人材のダイバーシティーや働き方改革に熱心。59歳

ニュースの最新記事

PAGE TOP