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災害VS.技術、命守る闘い――地震・火事・浸水...備え急務、防災機能強化、東京を大改造(マンスリー編集特集)

[ 2017年8月30日 / 日経産業新聞 ]

中小ビルをリノベ補強 木密地域→高層マンション

 日本経済は安全で安心な暮らしに支えられて発展する。豪雨に苦しみ、新たな犯罪リスクが高まる今、企業が技術と知恵を生かし、パワーを結集するときだ。不動産や建設など幅広い産業で防災・防犯の新しい取り組みが始まっている。

 東京・豊島の東池袋には「木密(もくみつ)地域」と呼ばれる古い木造住宅の密集地域が広がっている。場所は「サンシャイン60」など高層ビルのすぐ近くで、道が狭く消防車など緊急車両が通りにくい課題がある。

 野村不動産はこの地域を再開発している。最新設備を備えた共同住宅に作り直せば、災害に強くなる。開発の場所は、都電荒川線の東池袋四丁目停留場に近い約2660平方メートルの敷地。前田建設工業と共同で、地上36階建ての高層マンションを建設する。

 近隣に2つの広場を整え防災機能を高める。マンション低層部には店舗や子育て支援施設を導入し、地下では東京メトロ有楽町線の東池袋駅の出入り口と直結する。

 総工費は130億円を超える見通しで、戸数は230前後。すでに東京都に組合設立の認可申請を実施しており、10月にも本組合が設立される予定だ。2022年4月の完成時には周辺の風景は様変わりする。

 同社は近隣の東池袋5丁目の木密地域の再開発事業にも参画し、17年4月に地上20階建ての高層マンションの建設に着手した。7月には東京都小金井市のJR武蔵小金井駅前の木密地域を再開発し、地上26階建てと24階建てのツインタワーマンションに建て替える工事に着手するなど、木密地域の再開発事業を相次いで拡大している。

 住友不動産も木密地域での再開発を積極的に進めている。総事業費約480億円を投じて東京・西新宿に地上34階建ての超高層ビルを建設し、19年春の完成を目指す。延べ床面積は約6万1千平方メートル、4〜10階は住宅約100戸、12階以上はオフィスにする予定だ。

 計画地は西新宿6丁目で、木造住宅や老朽化した建物など計34棟が密集していた。一部は空き家で、防災や防犯の面で課題があった。住友不動産が土地を集約し、超高層ビルに建て替えれば地域の不燃化や耐震化が進み、防災機能が向上する。

 西新宿の高さ100メートル超のビルとして初めて、地震の揺れが伝わりにくい中間免震構造を採用。住宅フロアとオフィスフロアの間に免震装置を設置し、大きな揺れを抑える。エントランスホールは災害時に一時避難所として活用し帰宅困難者を受け入れる。敷地内に800平方メートルの広場を設け、災害時には地域住民の退避場所にする。停電時には非常用発電機でエレベーターなどに電力を72時間供給できる。

 同社は戸建て住宅事業で地震や風への対応も強化中だ。木造住宅用に、地震や風に耐える性能を高めた新型の耐力壁「パワーパネル」を開発し注目を集めている。在来工法と木質パネルを組み合わせる工法の商品に標準装備していく。

 耐力壁の強度を示す「壁倍率」と呼ばれる指標が、同社や他の多くの住宅メーカーの壁と比べて2倍以上の水準になる。地震や台風で家に圧力がかかっても、変形やゆがみを抑えることができる。この耐力壁なら、国の制度に基づく住宅の耐震等級のうち最高の「3」の強度を、3階建てでも確保できるという。

 1981年以前に旧耐震基準で建てられた建物の建て替えが急務となっているが、三菱地所レジデンスは既存の建物を生かしながら耐震補強するリノベーション事業に本格的に参入した。

 同社はマンションの1棟リノベーション事業に参入。「ザ・パークリモア」ブランドを立ち上げて今年、東京・港の物件を初めて引き渡した。現在はさいたま市の2物件を販売している。年間に手掛けるリノベーション物件戸数を現在の4倍の500戸規模に拡大する方針を掲げる。

 同社は14年5月に「Reビル」の名称で展開するオフィスビルのリノベーション事業についても組織体制を拡充している。Reビル事業部の人員を従来の6人から今年4月に14人に増やした。さらに親会社の三菱地所に提案営業のチームを設置、三菱地所設計にはReビル専門の設計チームを設けた。

 対応が必要なのは防火や地震だけではない。ゲリラ豪雨への対応が課題で、住宅メーカーなどが自然災害に強い商品を相次いで開発している。

 ミサワホームの「GENIUS(ジニアス)蔵のある家 防災・減災デザイン」は多様な自然災害に耐える構造や工夫を取り入れたが、特に局地的な大雨による浸水被害に耐えられるようにした。

 盛り土で玄関の床面の位置を高くしたり、水を防ぐ塀や自社開発の防水シートを装備したりして、敷地内に水が入るのを極力防ぐ。窓周辺などの隙間もふさいで浸水を抑える。それでも浸水が避けられないこともあることから、間取りでは行き止まりをつくらず、建物の南北両面に掃き出し窓を設けて排水しやすくするなどの工夫を凝らしている。

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