日経メッセ > 建築・建材展 > ニュース > 災害VS.技術、命守る闘い――制振装置を高層ビルに、震動幅を短く、時間は半分に(マンスリー編集特集)

日経の紙面から

災害VS.技術、命守る闘い――制振装置を高層ビルに、震動幅を短く、時間は半分に(マンスリー編集特集)

[ 2017年8月30日 / 日経産業新聞 ]

 大地震の際に高層ビルに大きな影響を及ぼす、ゆっくり繰り返す長い揺れ「長周期地震動」について、ゼネコン(総合建設会社)各社が対策技術の開発を進めている。

 規模の大きな地震が起きた際に生じる長周期地震動は、建物の揺れの周期が地震動の周期と近いほど共振し、高層ビルの上階ほどより大きく、長く揺れる特徴がある。

 竹中工務店と野村不動産は新宿野村ビル(東京・新宿)に2016年9月、長周期地震動対策の制振装置を設置した。建物の揺れと逆方向に動くおもりで建物の揺れを抑制する。東日本大震災などと同等の長周期地震動による揺れ幅を20〜25%抑え、揺れる時間を約50%短くできるという。

 鹿島や三菱地所子会社のサンシャインシティ(同・豊島)などは「サンシャイン60」の長周期地震動対策工事を16年8月に完了した。3種類の制振装置を組み合わせ、長周期地震動に備えることができる。1978年に完成したサンシャイン60は81年の新耐震設計基準で設計された建築物と同等以上の耐震性があったが、安全性を確かなものにするため14年3月から工事を始めていた。

 高性能のオイルダンパーと鋼製のダンパー、天井内のはりに設置する新開発の制御ダンパーを組み合わせて、効果がより発揮できるように配置した。

 避難バルコニー部など建物共用部での施工が中心で、専有部への影響を抑え、ビルの中心であるオフィスをはじめ商業テナントも通常通り運営できたことが特徴だ。

 長周期地震動が発生した際、建物の形状が長方形だと、短辺方向はゆっくりと揺れ、長辺方向は短い間隔で揺れる。清水建設は1台でこの2通りの揺れを抑制できる屋上設置型の制振装置を開発した。2つの異なる制振装置を組み合わせたことが特徴で、装置の軽量化と設置場所の省スペース化を図ることができるという。

 おもりを用いた制振装置に、揺れを回転運動に変換して制震効果を発揮するダンパーを組み合わせ、2種類の揺れに1台で対応できるようにした。新型の制振装置は一般的な装置に比べて重さと設置スペースを25%低減でき、屋上が狭くても設置しやすい。装置の導入コストも同等という。

 国土交通省は17年4月以降、一部地域の超高層建築物の新築物件について長周期地震動対策の強化を求めている。新築以外にも既存ビルの耐震改修の需要は根強く、関連技術の開発は今後も相次ぎそうだ。

 気象庁は長周期地震動について、発生が予測される地域を緊急地震速報で伝えるシステムを構築する。運用は18年度以降になる見込み。長周期地震動に関する防災意識は一段と高まっていく。

ニュースの最新記事

PAGE TOP