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大阪市立大――人工光合成、革新の種に、住宅に電力、産学で挑む(解剖先端研究所)

[ 2017年9月6日 / 日本経済新聞 地方経済面 ]

 大阪市立大学人工光合成研究センターは植物の光合成をまねる「人工光合成」の技術を使った住宅の実用化に乗り出す。戸建て住宅最大手の飯田グループホールディングス(HD)と共同で、沖縄県の宮古島に同技術を使って電力などを供給する住宅を建てて実験を進める。天尾豊センター長は「人工光合成を利用した世界初の住宅になる」と力を込める。

化石燃料を代替

 人工光合成は太陽光を利用して水と二酸化炭素(CO2)から、酸素と栄養分を生む光合成を人工的に再現。無尽蔵といわれる太陽のエネルギーと、地上に豊富に存在する水とCO2を使って様々な有用物質をつくる。

 地球温暖化の防止に向けたパリ協定が発効し、世界的に温暖化ガスの削減技術が急務になるなか、実現すればCO2を減らしながらエネルギー源を生み出せるため、温暖化防止の切り札になる可能性がある。石油などの化石燃料を使わずプラスチックなどの工業材料をつくることも可能だ。

 同センターが発足したのは2013年6月。産学連携で新産業を生み出すテーマを探していた大阪市が、学内に優れた研究者が在籍していた大阪市大の「人工光合成」に注目した。大阪市大もこの新技術を活用して新産業を生み出して地域に貢献するとともに、大学としてのブランドを高める狙いもあった。

 大阪市は6億円かけて、同大杉本キャンパス(大阪市住吉区)の一角に研究拠点を建設。3階建ての拠点には企業が入居するスペースがあり、飯田グループHDは3年前から入り、共同研究を進めてきた。発足から4年が過ぎ、天尾センター長は「研究活動はようやく軌道に乗り始めた」と語る。

 人工光合成の実現には3つの技術が必要だ。(1)太陽光から光のエネルギーを取り出す(2)このエネルギーで水から電子を抜く(3)電子から目的の生成物を得る。天尾センター長はCO2と水に太陽光を当て、農薬などの原料になるギ酸を高効率で合成する酵素を開発した。

 飯田グループHDが宮古島で建設する住宅の場合、このギ酸を専用タンクにためる。放電してしまう電気エネルギーと違い、半永久的に保管ができる。電力が必要な時は、水素生成装置でギ酸を別の触媒と掛け合わせ、水素を生みだす。水素発電装置に移された水素は酸素によって分解され、電気と熱が発生する仕組みだ。

 現時点では燃料電池や太陽光発電などほかの省エネルギー技術に比べてコスト面などは劣るが、「CO2を消費する住宅」の可能性は大きい。わずか1時間の太陽光エネルギーは全人類が1年間に消費するエネルギーをまかなえる。植物の光合成による太陽エネルギーの変換効率は1%程度だが、それを上回る10%クラスが実現できればコスト的にも実用化が視野に入る。

基礎研究を集約

 ほかの企業との共同研究も順調に進む。新日鉄住金とは製鉄の過程で生まれるCO2と水素から人造石油をつくる研究を進めている。関西の地元企業では、堺化学工業と、15年から光を当てると水素を発生する光触媒を活用した新素材の開発に取り組んでいる。天尾センター長は「今後は関西の企業とも共同研究を広げていきたい」と意欲を示す。

 実現に向けて基礎研究も欠かせない。その一翼を担うのが、光合成に関連したたんぱく質の構造解析で実績を持つ神谷信夫教授だ。ノーベル賞候補とも目される神谷教授は発足から2年間はセンター長を務め、「基礎研究をけん引していきたい」と力を込める。天尾センター長も「産学連携と基礎研究は人工光合成の実用化に向けた両輪だ」と強調する。

 昨年4月には同センターが文部科学省の指定を受けて全国で唯一の「人工光合成研究拠点」になった。全国の大学などから人工光合成に関する基礎研究のテーマを公募して共同研究を進める役割を担い、国内の研究をリードする存在を目指す。(竹下敦宣)

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