日経メッセ > 建築・建材展 > ニュース > ゼロエネ住宅「20年に5割」というが...、費用の壁、熱気たたず、パナソニックやYKKAP、効果見える化へ懸命。

日経の紙面から

ゼロエネ住宅「20年に5割」というが...、費用の壁、熱気たたず、パナソニックやYKKAP、効果見える化へ懸命。

[ 2017年9月5日 / 日経産業新聞 ]

 温暖化ガス排出量削減に向けて、政府は2020年までに新築注文戸建て住宅の半分を「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」にする目標を掲げる。だが、16年度に建築されたZEHはわずか約1万2000戸、新築注文戸建て住宅に占める割合は1割に満たない。どうすればZEHが普及して地球温暖化防止に貢献するのか。企業が知恵を絞り始めた。

 「ZEHをつくりたいとは思っているんだ。だけどねえ......」。千葉県の中小工務店の経営者の歯切れは悪い。昨年、業界関係者から頼まれてZEHを建てたが、その後はさっぱり。結局、この工務店では、これまで1軒しか建てていないという。

 ZEHは、省エネルギー機能を高めたり、太陽光パネルを設けたりして電気代が実質ゼロになる住宅をいう。いいことずくめのようだが、この経営者はかぶりを振る。

 ひと頃より安くなっているとはいえ、太陽光パネルを屋根に敷き詰めるには、100万円単位の費用がかかる。場合によっては蓄電池も必要になる。照明や空調は効率の高い製品を選び、窓や壁、床も断熱性の高いものにしなければならない。結局、建築コストが膨らんでしまう。

補助金75万円

 工務店の経営者は「まともにつくったら通常の住宅より最低でも200万円ぐらい割高になる」と説明する。環境問題に関心のある人が施主になったとしても「費用のことを考えると、提案する気になれない」。

 一方、大手ハウスメーカーはZEHを積極的に提案している。積水ハウスは16年度に新築の74%をZEHで建てており、政府の目標を前倒しで達成した。積水化学工業や大和ハウス工業もZEHの比率が2割を超えている。大手の顧客は経済的に余裕のある人たちが中心であることに加え、環境に配慮しているというイメージを投資家や就職活動中の大学生に印象づけられる利点もある。

 だが、戸建て注文住宅の過半数はこうした大手ではなく、中小の工務店が建てている。大手に比べてブランド力で劣っていることが多く、施工費用が膨らむZEHを手掛けるのは難しい。

 政府が何もしていないわけではない。ZEHを購入した人には1戸につき75万円が補助金として支払われる。コストアップ分が200万円だったとしても、補助金で相殺されるため、負担増分は125万円になる。

 それでも、12年度から始めた補助金の支給実績は累計で約2万件。戸建て注文住宅が年に20万戸以上建てられていることを考えると、あまりにも少ない。

 125万円の初期投資をどれくらいの期間で回収できるのかが見えてこないと、自分の家をZEHにしようとする気にはならないだろう。そこに着目したのがパナソニックだ。

 「おおむね10年で回収できますよ」。パナソニックが開発したソフト「エネスケ」を動かすと、こんなメッセージが返ってくる。「『わかりやすいね』というお褒めの声をいただいている」(住宅エネマネ市場開発センターの桜井聡所長)

 エネスケは住宅が消費するエネルギーをシミュレーションしたり、省エネや再生エネにかかるコストを予測したりする。工務店がこれを使えばZEHの費用対効果を施主に説明しやすくなる。

 パナソニックはエネスケを無料で中小工務店に提供している。エネスケをきっかけに工務店がZEHを受注すれば、パナソニック製の太陽パネルや蓄電池の販売につながる可能性があるからだ。

 初期投資の高さが普及のハードルならば、低くすればよい――。そうした発想にたったのがリース会社のONEエネルギー(東京・港)だ。

 仮に太陽光パネルを備えるのに100万円かかり、電気代の節約効果が年10万円とする。最初に100万円払う代わりに、年10万円を10年間にわたって払うようにすれば、施主が感じる負担は軽くなる。ONEエネルギーはZEH向けを含めたリース先を18年までに1万件にする考えだ。

 東証マザーズ上場で、住宅・不動産・建設に特化したコンサルティング会社のハイアス・アンド・カンパニー。同社は独自に開発した断熱材を住設機器メーカーにつくらせている。さらに自社のコンサルタント先の工務店から断熱材の注文を集約、製造を一括発注している。スケールメリットを発揮させて、工務店が購入するときの単価を安くするのが狙いだ。

断熱性を体感

 ZEHの良さをアピールし、工務店に割高さを乗りこえさせようとする取り組みもある。

 YKKAPの「体感ショールーム」(東京・港)。「ここから中に入ってください」。担当者に促されて扉を開けると、そこは住宅の部屋になっていた。窓の外をみると、金属の板が住宅を取り囲んでいる。「この部屋の回りは巨大な冷蔵庫になっています。冬のセ氏0度の外気を再現しています」と担当者は語る。

 なぜ、家を冷蔵庫で冷やすのか。その疑問は体感ショールームで行われたセミナーで氷解した。「冷気がほとんど部屋に伝わってこないことを実感できたと思います」。工務店の経営者らを前に担当者は説明した。

 窓枠には軽くて丈夫なアルミニウムを使うのが一般的だった。YKKAPは断熱性の高い樹脂製の窓枠を使うように提案している。二重ガラスと組み合わせれば、屋外から受ける影響を6割削減できるという。高さ3・7メートル、奥行き10メートル、横幅27メートルという巨大冷蔵庫はそのことをアピールするためにある。

 パリ協定を受け、政府は50年に温暖化ガス排出量を13年度比80%減にする目標を掲げる。ZEH普及もその一環だ。ただ、費用対効果への意識が抜け落ちていれば、社会的意義があっても前に進まない。そこに企業の出番がある。(福本裕貴)

 ▼ゼロエネルギー住宅(ZEH) 断熱性を高めて室内の消費エネルギーを減らす一方で、太陽光などの再生可能エネルギーで電力をつくり、エネルギー消費量を実質ゼロにする住宅。2015年に経済産業省が技術的な定義を策定した。

 温暖化ガスの削減に向けて政府が12年度から補助金を支給して普及を後押ししている。これまでに約2万1000件の補助金の支給実績がある。ただ、16年度では約8割が大手ハウスメーカー。戸建て住宅市場で過半数のシェアを握る中小工務店は約2割にとどまる。断熱や空調・給湯設備や太陽光発電パネルなどが必要で、補助金の支給には一定の技術基準をクリアする必要がある。200万〜300万円の追加費用がかかるとされる。

ニュースの最新記事

PAGE TOP