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戸建て用宅配ボックス――再配達削減へ需要大きく、新築に標準の見方も(トレンド分析)

[ 2017年9月4日 / 日経産業新聞 ]

 不在時に荷物を受け取れる宅配ボックス・ロッカー。新築マンションでは標準的な設備となってきたが、宅配の再配達問題の社会現象化に伴い、ここにきて戸建て用でも急速に注目度が高まっている。需要急増で既存品の生産が追いつかなくなり、新製品の発売を遅らせたパナソニック製品を題材に、有識者で構成する「新製品評価委員会」(委員長・片岡寛一橋大名誉教授)で、戸建て用宅配ボックスの社会性・将来性などを議論した。

 パナソニックが当初予定の2カ月遅れで発売した「コンボ」は、アパート用、戸建て住宅壁埋め込み専用、宅配ポストと一体化した戸建て用「コンボF」の3種。今回は「コンボF」を商品力の対象として議論した。

電気工事は不要

 「コンボF」は郵便物が収納できるポストと、幅300ミリメートル、10キログラムまでの小型の荷物が受け取り可能なボックスを組み合わせた。機械式でボタンを押すだけで押印できる構造で、電気工事は不要だ。ポールを取り付けたり、壁に埋め込んだりして設置する。

 調査会社アナリストは「すべて機械式のため、故障時の修理も容易。買い替え機会がほとんどない商品として望ましい姿だ」とする。デザインが豊富なこともあり大学教授(商品経済学)は「多くの既存品にみられる金庫や物置のような外観と異なり、門や壁を設けない住宅が多い中でアクセントとなるデザインと色だ」と評価する。

 本体価格は税抜き・工事費別で10万9800〜12万500円。大学教授は「20〜30年使うことを考えれば高過ぎはしないが、5万円以下に抑えられれば」とする。家電製品総合アドバイザーも「再配達のコスト負担が今後どうなるかにもよるが10万円以上という価格はすぐに導入するにはハードルが高い」とみる。

収納量に課題

 パナソニックは福井県あわら市などと共同で、2016年12月から4カ月間、一般の約100世帯に宅配ボックスを設置して実証実験をした。それまで49%だった再配達率が4カ月平均で8%に減少したが、「冷蔵・冷凍品に対応できない」「大きい荷物が入らない」との声も多かった。住宅系シンクタンク副所長は、その際に使われたボックスの収納量は「コンボF」より大きかったことを指摘して、「デザイン面とのバランスではあるが、コンボFの大きさは中途半端に思える」とする。

 戸建て用宅配ボックスは参入企業は多いが、普及率は1%にも及ばないとみられている。それだけに大半が市場拡大を見込む。「宅配物が贈答品よりも、自らの購入品が多くなるにつれ、ボックスを自費で用意することに抵抗感が薄れてくる」(住宅系シンクタンク副所長)との見方が多い。家電製品総合アドバイザーは、「単身世帯や高齢の買い物弱者の増加などを背景に、戸建てか集合住宅かを問わず、今後の新築物件では標準仕様化される」と予想する。

 再配達を減らすことは社会的に求められており、「隣近所で預かるというコミュニティーが崩壊した現在では宅配ボックスは必要な製品」(大学教授)との認識は共通だった。「戸建て住宅には不審者が近づきにくいマンションと違い、いたずらや犯罪へのリスクを生じやすい」(生活コラムニスト)との懸念もある。「IT利用などで新しい受け取りシステムが登場するかも」(調査会社アナリスト)との見方もあるが、片岡委員長は「いまのところは宅配ボックスの他に再配達問題に対応する有力な選択肢は見つからない」と結んだ。

研究員の目
住設各社が参入

 パナソニックが、電源不要が特徴の「コンボ」を手掛けたのは2007年だが、最近になってYKKAPも本格参入するなど他の住設機器メーカーも力を入れ始めた。供給側にとっては宅配ボックス1個の販売にとどまらず、周辺を含めたリフォームの呼び水にもなるからだ。

 戸建て居住者側から見るとどうか。現段階では、経済面ではわざわざ自ら費用をかけて設置する動機に欠けるが、あわら市との実験では「再配達は宅配業者に申し訳ない」との声が多く、モニター世帯の94%が宅配ボックスによって精神的なストレスが改善されたとしている。個人としても何らかの方法で再配達減少に前向きに取り組むべき段階にきていると言えるだろう。(広光貢一)

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