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建材にも3Dプリンター、型枠不要に?、実用化へ一歩、大林組、橋の部材で実験。

[ 2017年10月17日 / 日経産業新聞 ]

 大林組は建設部材で使う3Dプリンター技術を発表した。これまでは建物の模型に使われる程度だったが、小さな橋の部材も作ってみせた。職人の人手不足を補う利点が考えられるが、実力のほどはどうなのだろうか。

 東京都清瀬市の大林組技術研究所を訪れると、ビオトープに小さなアーチ状の橋がかかっていた。「プリンターが打ち出した部材を組み合わせて作りました」。技術研究所の金子智弥・上席研究員が教えてくれた。見た目は違和感がない。

材料に工夫あり

 部材は汎用のロボットアームを使って打ち出す。開発の課題は、アームのノズルから吹き出す材料にあったという。

 セメントや樹脂を手がけるデンカと新材料の開発に取り組んだ。セメントは一般に石灰や石こう、水などが入っている。新材料には粘性を高める特殊な増粘剤を配合した。ノズルから吹き出した直後に短時間で固まる「チキソトロピー性」を備えている。この材料は、圧力がかかるノズルに至るまでは流動性があり、はき出されると1時間以内に乾燥する。

 アイスクリームを絞りだすように、ノズルから材料をゆっくり出しながら、アームは右へ左へと動く。狙ったルート通りに動くようあらかじめプログラムを組んであり、一層、また一層と積み上げていく。材料には短繊維を配合し、層と層のつながりが強くなるよう工夫した。

 橋の部材になったブロックが約15分で出来上がった。高さと幅は50センチメートルずつ、奥行きが25センチ。一つの層を作るのに20秒ほどかかり、50層重ねて完成した。ブロックを6つ組み合わせたのがビオトープにかかる橋だ。

 プリンターで建設部材が作れるようになれば、工事現場でコンクリートを固めるための型枠が不要になる可能性がある。建設現場では専門の型枠職人が木製の板を使い、コンクリートを流し込む枠を設ける。部材を直接製造できるようになれば、型枠作業が必要なくなる現場が将来、出てくるかもしれない。

 建設技能者の減少が見込まれるなか、建設現場ではなく事前に工場でつくる「プレキャストコンクリート」を活用するなど、建設各社は生産性向上に向けた取り組みを強化している。こうした取り組みの一環として、プリンターの研究を位置づけることができる。

砂利混ぜる必要

 ただ建設現場での実用化はまだ先の話。今回のプリンター技術は最初の一歩にとどまり、克服すべき課題はなお多い。

 例えばプリンターが製造できる部材の種類。今回製造した材料にとどまらず、本来のコンクリートにより近い材料で部材を製造するには、砂利を混ぜ合わせて強度を高める必要がある。これにはノズルの大きさを変えるなどの検討が必要だ。

 金子氏は「どの程度の大きさの部材を作れるようになるかも、今後のテーマ」と話す。今回製造したブロックの大きさは、ロボットアームの稼働範囲に収まっている。

 生物の骨などの構造をまねて、部材を軽く丈夫にする「バイオミメティクス」の考え方を導入した設計も検討していく。

 大林組は生産性を高める道筋をいち早く付けようと、先端技術を相次いで取り入れている。施工管理者の教育に仮想現実(VR)の仕組みを取り入れ、山岳トンネル工事の掘削面の評価には人工知能を活用した。次世代の高速通信規格「5G」を使った遠隔施工の実験も実施した。

(寺井浩介)

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