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大和ハウス――人工土壌、空気快適に、微生物使い室内脱臭(解剖先端研究所)

[ 2017年12月20日 / 日本経済新聞 地方経済面 ]

 建設・不動産業界でトップを走る大和ハウス工業。事業領域は住宅や物流施設など広いが、研究分野も多岐にわたる。土壌や大気の汚染調査もあまたの研究テーマの一つ。同社の総合技術研究所の一室では、人工土壌を用いて室内空気を快適にする装置の開発が進む。

 奈良市。710年建都の古都、平城宮の跡地から車で10分ほどの場所に大和ハウスの新技術の源がある。約3万平方メートルの広大な総合技術研究所の敷地に大小の建物が7つ。今回の主役は「テクノラボ棟」の中にある「環境分析室」だ。

 環境分析室では現在、研究員らが土壌中の微生物や菌を使って空気を浄化する脱臭装置の開発に取り組んでいる。多孔性物質などで人工の土壌をつくり、室内環境で微生物をほどよく繁殖させる。微生物の働きで、アンモニアや酢酸といった臭いの元を取り除く仕組みだ。微生物が含まれる土壌に空気を送り込むために電気を使うが、脱臭能力は一般的な空気清浄機をはるかに上回る。

 分析室の室内はまるで理科室。無機質な金属の作業台や棚にビーカーやフラスコが並ぶ。壁際にはセ氏マイナス80度の環境をつくる冷凍庫、無菌状態で作業できる装置「クリーンベンチ」など様々な機械が置いてある。

買収契機に研究

 大和ハウスが分析室を作ったのは2005年。愛・地球博が開催された年で、環境が意識され始めていた。当初は、購入する土地が汚染されていないかを自社で調べるために設置され、「守りの研究が主眼だった」(フロンティア技術研究室の折目貴司グループ長)。

 ただ、そこはモーレツ経営の風土を根っこに持つ会社。「すぐに攻めにつなげることを考え始めた」(折目氏)。逆に汚染された土地を浄化する技術の研究に着手。08年、分析室に微生物や菌を取り扱える設備を導入。油で汚染された土壌を活性炭とバイオの力で分解する工法を開発し、ガソリンスタンド跡地などの活用にめどを付けた。

 快適な空気を研究するきっかけとなったのは13年、準大手ゼネコンのフジタの買収だ。フジタは土壌を使って窒素酸化物(NOx)や浮遊粒子状物質を浄化するシステムを持っており、建設したトンネルなどの排気口にかぶせて活用していた。

 土壌を改良すれば空気浄化に応用できる――。大和ハウスはヤシの繊維質やパーライトなど、人工土壌に混ぜ込む素材の吟味を始める。微生物の活動により汚染物質を除去する方法で、15年には屋外向けの「大気浄化緑化システム」を開発にこぎ着けた。

20人のみで分析

 「次は室内向けだ」。発案したのはフロンティア技術研究室のメンバーで「臭気判定士」の資格を持つ河目裕介氏だ。16年に室内向け脱臭装置のプロトタイプを作製。製品化に向けまい進する。

 総合技術研究所には振動台、壁の耐火性を測る試験炉、部屋の保温性や断熱性を調べる装置など、住宅会社らしいラボ機能がそろう。同社創業者の石橋信夫氏の記念館も併設し、約170人が働く。折目氏や河目氏ら分析室を使うスタッフは20人ほどにすぎない。

 ただ、その役割は大きい。同社の樋口武男会長は「これまで住宅という『箱』を売ってきたが、今後は『中身』も提供しなくてはならない」と話す。河目研究員らが新装置で目指す先はまさにそこだ。「企業や交通機関の喫煙室に売り込めないか」。使い道を探る議論にも熱がこもる。

 国内では少子高齢化が急速に進む。「箱」だけなら市場は小さくなっていくが、人はどんな住環境を求めるか。その答えに近づくため、研究室のスタッフらは日々知恵を絞っている。(北西厚一)=おわり

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