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住友林業、41年までの建設を予定――超高層木造ビル、実現に壁、耐久性向上へ資材開発。

[ 2018年4月6日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 世界で中・大規模の木造建築物が増えている。住友林業は2月上旬、2041年までに木材を主部材とした超高層ビルを建設する構想を発表した。建築予定の建物は地上70階建て、高さ350メートル。木質建築の施工計画としては日本一の高さだ。

 これまで建てられた最高層の木質ビルは17年7月に完成したカナダ・バンクーバーにある学生寮で、高さ53メートルで地上18階建て。住友林業は日本一の高さを誇る鉄骨鉄筋コンクリート造の「あべのハルカス」の300メートルを超える高さを目標に設定した。

CO2を22%抑制

 試算では、同社が1年間に建設する注文住宅8000棟分にあたる18万5000立方メートルの木材を新ビルに使う。一般的にビルを建てる際には強度がある鉄骨材などを使うが、施工時に二酸化炭素(CO2)を多く出す。350メートルのビルを建てる時に木材を使うと、鉄骨造に比べ施工過程に排出されるCO2量を22%抑えられる。内壁に木材を使えば、空調をつけていなくても鉄筋コンクリート造に比べ室内の温度を一定に保てるといい、入居するオフィスなどの消費電力も減るもよう。

 木造ビルは従来の高層ビルにみられる「鉄骨S造」と同様の工法の採用を想定している。木材の柱やはりの間に引張力を持たせた鉄骨製の補強材を配置し地震時の揺れを軽減できるようにする。ビルの外壁には木を使うが、雨などにぬれると耐久性が落ちてくる問題がある。耐久性を高める塗料を開発し、外壁に塗るなどの対策と共に、15〜20年に1度外壁の木材を取り換える方法も検討している。

 施工上の課題も多い。災害が多い日本では、耐火や耐震などの建築基準が厳しい。木を使うにはより火に強い部材開発が急務だ。木材と異素材を組み合わせて構造部分への火の到達を食い止める部材の研究は進んでいる。一方で住友林業の構想では資材の9割に木を使う計画のため、異なる素材を使わずに木だけを使った耐火部材の研究を進めている。同社の筑波研究所(茨城県つくば市)にある耐火実験施設では2週間に1度程度、開発した木質部材の燃えやすさを調べる実験をする。

 多くの木材を確保する方法も模索中だ。試算上の総工費は6000億円。国内に流通する木材量は多くないため、鉄筋コンクリート材などを使った場合に比べて資材コストが約2倍になる。住友林業は保有する山林などの国産木材の活用を検討する。ただ木材を安く使えるようにするには、国内の林業をより活性化するなど、国を巻き込んだ施策が必要になりそうだ。

 また、今後大型の木造建築が増えることを見込み、高い強度を持ち、成熟するスピードが速い新種の樹木の開発にも取り組んでいる。高強度の樹木の1つとされるカラマツでも、強度面で高層ビルを建てるのに適しているのは全体の数%のみだ。

 様々な種類の樹木の種子を組み合わせる「ゲノム選抜育種」で、安定的に丈夫な木材の供給が可能になりそうだ。木造ビル構想に使う木材を育てる過程で約10万トンのCO2を吸収できるといい、持続可能な建築計画が立てられるようになる。

土地の取得も課題

 住友林業の試算によると、木造ビルを完成させるためには地上部分だけでおよそ2年半かかる。同規模の鉄骨ビルを建てる場合と工期は変わらないが、木質建築に精通した技術者の確保が必要だ。住友林業が16年に発表した中期経営計画の中で研究開発投資を拡大すると発表。新しい木質材料を開発する研究者を19年3月までに現在比25%増の約100人に引き上げる。

 「まずは24年をめどに14階建ての木造ビルを建てたい」と住友林業筑波研究所の中嶋一郎所長は話す。計画時には確認申請を取る必要があり、建築予定地の土地オーナーの了承を得なければならない。日本では木造建築の耐久性に疑問を持つ声も少なくないため、土地を見つけることも簡単ではない。

 現在はまだ構想段階のこのプロジェクト。挑戦は始まったばかりだ。(高木雄一郎)

キーワード
耐火構造

 火災時に建物の利用者が避難するまでの間、柱などの主要構造部が燃え尽きることなく性能を維持できる建物の作りをいう。耐火性能は建物の用途や規模などによって異なり、燃え尽きるまでに要する限界時間は30分から3時間までと部位によって建築基準法で定められている。病院やホテルなど公共の場として利用される建物のほか、一部の戸建て住宅も耐火構造を持たなければならない。基準が厳しくなる大型建築物では木材が使われることは少なかった。

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