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民泊の巨人に挑戦状、百戦錬磨、「田舎に泊まろう」体験売る、楽天ライフルステイ、「多国籍連合」で包囲網。

[ 2018年5月14日 / 日経産業新聞 ]

解禁まで1ヵ月 違法排除のエアビー 試練

 住宅に旅行者を有料で泊めるルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊法)の6月15日施行まであと1カ月。民泊仲介世界最大手、米エアビーアンドビーの独壇場だった市場を日本企業の2陣営が切り崩しにかかった。魅力的な旅行商品の開発や利用者の囲い込みで世界の巨人を揺さぶる。有力3陣営が競い合うことで利便性と安全性を両立させる日本流の民泊モデルを生み出せるか。

 「私たちでも運営できますか」。徳島県美馬市の山あいにある民家に集まった近隣住民。民泊仲介を手がける百戦錬磨(仙台市)の小沢正寛・地域振興2部長が仕組みや多言語対応サービスを解説すると、住民は熱心に聞き入った。

 百戦錬磨は楽天出身の上山康博社長が2012年に創業。過疎や空き家に悩む農山漁村の農家民泊や体験企画の開発に力を入れ、仲介サイト「ステイジャパン」で紹介する。貸し手候補を求めて担当者が全国を回る。

 サイトは現行ルールに沿った合法物件しか扱わず、2千件に増えた。家主の届け出や確定申告を支援するだけでなく、自ら約10件を運営。約70件の運営代行も手がける。

 合法へのこだわりと実績が信頼を呼び、京王電鉄やJTB、日本航空と資本業務提携。ANAセールスや住友林業とは業務提携した。上山社長は「民泊という箱の流通だけでは地域が活性化しない。価値ある体験も一緒に提案できる企業になる」と旅行業登録もした。

 民泊は世界で先行して普及。日本も円安が進んだ13年ころからの訪日客増でホテルが不足、受け皿として注目された。

 日本では客を繰り返し受け入れるなら旅館業法の「簡易宿所」の許可が要る。東京都大田区や大阪市は16年、国家戦略特区制度を活用して条件を満たす民泊を認めた。

 ただこれらの許可を得ないヤミ民泊が広がり騒音・ゴミトラブルも増えた。統一ルールを定めて本格解禁するため届け出制の民泊法が成立した。

航空券とセット

 百戦錬磨は「合法市場が立ち上がるのは好機」と攻勢に出る。日本航空の航空券と一緒に予約できるようにし、きりたんぽづくりや山菜採りなどの体験を用意する。「農家民泊は訪日客だけでなく日本人の団体教育旅行の受け入れにも最適」と上山社長。日本ファームステイ協会を設立し、新たな活用法も提案する。

 負のイメージ払拭と質の向上にも意欲的で、業界団体「住宅宿泊仲介事業者適正化協会」の立ち上げを準備している。

 日本の「巨人」も動き出した。「トッププレーヤーと世界中に発信するので効率よく集客できます」。楽天LIFULL STAY(ライフルステイ、東京・千代田)が主催する民泊セミナーが都内で開かれた。100人超の参加者から「手数料の仕組みが知りたい」など質問が相次いだ。

 国内有数の顧客基盤を持つ楽天と不動産情報サイト運営のLIFULLが出資して17年に設立した同社は今年6月、仲介サイト「バケーションステイ」を稼働させる。

 「販売力確保と物件創出を同時に進める」と話す太田宗克社長は、旅行や宿泊の海外有力サイトと矢継ぎ早に提携した。宿泊予約世界最大手であるオランダのブッキング・ドットコムのほか民泊仲介の米ホームアウェイなど外国人がよく使うサイトにも物件を載せる。

 今秋からはグループの旅行予約サイト「楽天トラベル」にも民泊を載せる。「ホテルが埋没する」との不安の声に太田社長は「羅列せず検索性を高めれば、サイト訪問者が増えて既存施設への送客力も高まる」と説く。

 楽天カラーの赤色や白色のアメニティに内装。「Rakuten STAY」のブランド名を貸し、楽天仕様でシリーズ化する運用代行サービスを発表すると、数千件の問い合わせがあった。クラウドファンディングを使い、町家を民泊に改装する事業も始めた。

 両陣営が切り崩しを目指すエアビー。民泊解禁の約4年前に日本に進出し、地歩を固めた。急ぐのは法律への対応。6万2千件の国内施設の多くがヤミ民泊だからだ。

 「届け出番号の記載のないリスティング(施設一覧)は、手続きが完了するまでの間、非掲載となります」。東京タワーが見える民泊を営む20代男性。集客で使うエアビーの管理画面に表示が出る。スマートフォンにも注意画面が立ち上がる。

カギ握る新法

 エアビーは家主に発行される番号を入力させ、番号がない物件は6月15日以降は表示させない。

 今後、試練の時かもしれない。届け出の煩雑さや自治体の上乗せ規制を嫌い廃業したり手続きが遅れたりする民泊が続出。男性も中止を検討する。米サンフランシスコでは未登録物件が載せられなくなり半減した。

 日本でも掲載物件が激減する可能性がある。だが日本法人の田辺泰之代表は「パリやロンドンに比べると民泊が少なく、新たに希望する人を支援する」と意に介さない。

 届け出や家具手配、清掃まで代行するサービスを開始。パソナと組み運営者の育成講座も催す。

 リクルートホールディングスの不動産サイトの賃貸物件には空室の民泊への転用を勧める。旅館も載せ、宿坊をやりたい寺の開業まで支援する。

 訪日客の呼び込みや交流に貢献するエアビーだが、「ヤミ民泊を放任し稼いできた」との批判は付いて回る。昨秋には日本法人が公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査された。海外でも家賃相場を高騰させたといわれる。

 「テクノロジーで違法物件は排除する」。政策担当最高責任者、クリストファー・レへイン氏は強調する。仲介業者登録の申請場面を公開し法令順守を印象付けた。経済効果もPR、イメージ向上に余念がない。

 見据えるのは単なる民泊仲介プラットフォームからの脱却。全日本空輸グループと組み、航空券とのセット予約を始めた。体験プログラムの予約地域も広げる。

 3社のサイトは貸し手も宿泊者も原則、手数料がかかる。貸し手はエアビーと楽天ライフルが宿泊料の3%、百戦錬磨は0〜3%。宿泊者は楽天ライフルが12%、百戦錬磨が15%、エアビーは0〜20%と幅がある。だが大差はなく、中身で違いを出す戦略が重要だ。

 情報通信総合研究所(東京・中央)はモノやサービスを共有するシェア経済の16年の国内市場規模(収入ベース)を約1兆1800億円と推計する。うち民泊など空間のシェアが約6700億円で最大だ。トップランナーの民泊の成否はライドシェアなど後に続くサービスの行方にも影響を与える。

(大林広樹)

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