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民泊解禁前夜(上)地方の空き物件、宝の山、サンヨーホームズ、岡山で、三井寺は宿坊を登録。

[ 2018年6月5日 / 日本経済新聞 地方経済面 ]

 住宅で旅行者の有料宿泊を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行が6月15日に迫ってきた。中堅デベロッパーのサンヨーホームズ(大阪市)が岡山で参入を決めるなど地方で民泊を手掛ける企業が出てくる一方、住民への配慮から条例で民泊を規制する自治体も多い。民泊解禁を迎える西日本各地の企業や自治体、市場の動きを探る。

 瀬戸内海に面した岡山県備前市。特別史跡の旧閑谷(しずたに)学校やカキの養殖で有名だが、このところアジア系を中心にインバウンド(訪日外国人)が増加している。この備前市に民泊事業者として参入を進めているのが、サンヨーホームズだ。近く同市の日生(ひなせ)地区に1号物件を設ける方向だ。

 これまで民泊は大阪など国家戦略特区以外で参入ハードルが高かった。民泊営業の解禁でサンヨーが備前市に決めたのは訪日外国人の増加のほか、空き家の有効活用という面もある。

家族訪日客に的

 同市には約2000戸の空き家が点在。サンヨーは備前市と空き家情報の提供などで協定を締結した。空き家のオーナーと協議した上で物件を民泊にリフォームし、運営する。家族での訪日外国人を主な顧客に想定、料金は5人で1泊3万円程度を見込む。

 琵琶湖を一望できる名刹で寺社宿泊を体験――。飛鳥時代につくられた三井寺(園城寺、大津市)は、7月以降、民泊として宿泊情報サイト運営の和空(大阪市)の宿坊予約サイト「テラハク」に登録する。宿坊は旅館業法で求められる設備基準を満たさないことが多いが、民泊としてならばできるという。三井寺は「参拝客の増加を期待している」と話す。

500戸展開目指す

 穴吹興産を傘下に持つあなぶきグループ(高松市)は2月、民泊事業子会社「あなぶきスペースシェア」(同市)を設立した。賃貸マンションなどの所有者に、空き室の有効活用策として提案し、管理や運営を担う。

 既に高松市内で賃貸マンションの2部屋を簡易宿所として展開。宿泊者の約半数は訪日客だが、マンションの住民とのトラブルも特段ない。高松、広島、福岡の3都市に営業担当を配置、2023年までに500戸を展開する。価格は4人で2万円弱を見込む。

 これまで民泊は特区の大阪も含め9割前後が違法営業だったとされる。ただ新法の施行で営業に必要な手続きが簡略化されるほか、営業地域も拡大する。営業日数は年180日に制限され採算性に難点はあるものの、ビジネスチャンスと見て企業も地域を選別しながら民泊参入を進めている。

 観光庁によると、5月中旬で民泊新法による民泊登録届け出件数は724件、うち受理件数は152件それぞれある。一方、大阪市によると市内の特区民泊認定数は4月末時点で約650施設(約1900室)ある。

自治体、対応に濃淡
奈良・広島 観光振興規制緩く 
京都・大阪 警察と「違法」撲滅

 民泊解禁では上乗せ規制を導入する自治体が相次いだ。騒音などのトラブルを防ぎ「快適な住環境を維持する」(金沢市保健所衛生指導課)ためだが、地域活性化へ観光客を呼び込み滞在時間を延ばす狙いから規制を見送る自治体もあり、期待と警戒が入り交じる。

 奈良県は民泊を「観光客の選択肢を広げるもの」(インバウンド・宿泊戦略室)ととらえ規制は最小限に抑えた。県内のホテル・旅館の客室数は全国最低水準で、日帰りが大半を占めるためだ。

 奈良県桜井市の旧市街では、明治期に建てられた旧材木商の邸宅の離れや蔵を約3500万円掛けて改修し「高級民泊」として運営する計画が進む。地元金融機関などが出資し、同様の物件を複数運用して活性化につなげる構想が動き出した。

 広島市は民泊事業者に対してゴミ出しルールを守るなど地元住民への配慮と苦情への対処を求める。それでも住民生活に悪影響が認められた場合には規制導入を検討する方針で、3月、民泊に関する権限を広島県から譲り受けた。

 四国4県も規制がなく、届け出が増えている。「仲介サイトを活用しようとして、届け出が必要なことを知り手続きにくるケースが目立つ」(愛媛県の担当者)という。

 一方、緊急時の駆けつけ要件など厳しい規制を導入した京都市。「事実上の事業者の排除要件」との批判もあるが、「民泊がやりやすいとは思われたくない」と村上圭子副市長。念頭には「違法民泊対策」がある。

 京都市内にあるとされる約4000件の民泊のほとんどが違法営業とみられる。市は今年度、民泊関連予算を1億5000万円と前年度の3倍に増やし、市医療衛生センターの民泊対策担当者を26人に6人増強した。「大阪・京都での殺人事件以来、対応が変わった」(市の担当者)という警察とも連携も深める。

 違法民泊が約1万件に達する大阪市は4月末に撲滅チームを立ち上げ、15日の解禁以降は市職員と大阪府警OBが2人1組で苦情が寄せられた施設への対応などを始める。2019年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)開催までの違法民泊撲滅を目指す。

 取り締まり強化を背景に、「民泊撤退サービス」への注目も高まる。スイッチエンターテイメント(東京、川田雄大社長)は昨夏、サービスの対象を関西に広げた。「当日や翌日に撤去するケースも含め、関西での依頼が増えている」と川田社長。民泊解禁前の駆け込み需要を狙い同様のサービスを手掛ける会社が関西でも増えているという。

【表】主な上乗せ規制の内容や対象    届け出数 受理件数 
京都市  緊急時に10分で駆けつけ   27    3 
和歌山県 近隣住民が反対しない      9    2 

▼営業禁止の対象(繁忙期や平日のみ含む)    
大阪市  小学校から100メートル以内 51   19 
金沢市  住居専用地域など        0    0 
神戸市  有馬温泉地区など        1    0 
兵庫県  子育て施設、図書館       2    1 
滋賀県  草津市内の住宅地        8    8 
奈良県  学校や名所旧跡の周辺      9    2 

▼規制を設けない自治体も    
富山県                  5    5 
広島県  広島市に権限移譲       12    4 
香川県                  6    1 
愛媛県                  9    6 
(注)届け出、受理件数は5月末時点   

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