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都市ブラックアウト停電その時(上)暮らしの便利、消えた――キャッシュレス決済・オール電化、電気依存、備え欠かせず。

[ 2018年10月10日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 札幌市の大学院生、中野志保さん(23)は9月6日の地震発生直後、「買い物難民」になった。普段の買い物はクレジットカードや電子マネーで済ませ、現金はほとんど持ち歩いていなかった。

 停電の長期化を恐れ、電池式ランプを求めてアウトドア用品店に駆け込んだが価格は5千円。財布には千円札2枚。停電で電子決済はできず、ATMも停止していた。

 翌7日午後、復旧したATMで現金数万円を引き出し、胸をなで下ろした。「停電が長引けば食べ物も買えないところだった。何て無力なんだろうと思った」。以来、財布に常に1万円は入れておくようにしている。

 発生から1カ月余りたった北海道地震。死者41人、負傷者748人のほか9000戸超の住宅被害が出たが、とりわけ影響が広範囲に及んだのは、国内で初めて起きた電力会社管内の全域停電「ブラックアウト」だ。

 北海道電力によると、地震で道内全域の約295万戸が停電。順次復旧し9月8日夜時点で99・9%まで回復したが、都市機能は一時マヒ。電気に頼ったスマートな生活のもろさが浮かんだ。

 札幌市北区にそびえるオール電化のタワーマンション。23階に住むIT(情報技術)企業勤務の男性(48)は停電復旧までの2日間、調理器具はおろか水道やトイレも使えなかった。

 マンションは電動ポンプで水をくみ上げて各戸に供給する構造。男性は水道が使えた1階の管理人室までバケツを持って階段を上り下りしたが、「足腰がつらくて途中であきらめた」。

 6日朝は出社しようとしたが、立体駐車場が動かない。マンション入り口の自動ドアは開いたままで、深夜は住人が交代で見張りに立った。「こんなにも不便と不安を強いられるとは」と苦々しい表情で振り返る。

 「停電になったときに自分の家がどうなるかは最低限知っておく必要がある」。防災アドバイザーの岡部梨恵子さんはそう強調し、少なくとも「千円札で20万円以上の現金」「カセットコンロや石油ストーブ」などを用意するよう呼びかける。

 北海道は地震で孤立し、ブラックアウトに陥ったが「人ごとではない」(岡部さん)。首都直下地震が発生すれば、東京でも大規模停電が起きる可能性がある。

 都が2012年に公表した被害想定によると、東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7・3の地震が起きた場合、区部の最大約25%で停電被害が起きる。揺れや火災で建物が全壊したり、電柱が折れたりして全面復旧には1週間程度かかるとみられる。

 区市町村別の想定停電率は墨田区が約62%で最も高い。台東区や荒川区に続き、タワマンや高層ビルが林立する品川区や江東区も上位に並ぶ。停電は浄水設備の停止などを通じて断水も引き起こす。復旧が遅れれば健康や衛生状態の悪化につながる恐れもある。

 防災都市計画研究所(東京・千代田)の吉川忠寛所長は「人口密度が高く、空間に余裕がない都市部では十分な避難所の確保や車中泊は難しい。停電中も在宅避難を続けざるをえない」と指摘。「停電下でも生活を送れるようスマートフォンの充電用バッテリーや電池式の照明器具を準備するなど、自宅の環境整備を心がける必要がある」と話している。

     ◇

 電気に依存した現代の暮らし。最近の停電被害から影響と備えを探る。

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