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50代の転職、3年で倍増、建築技術者や新興企業幹部に、「即戦力」人材流動化へ。

[ 2019年4月9日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 50代の転職者が増えている。都心の再開発ラッシュで建築技術者の需要が高まっているほか、スタートアップ企業による求人では経理や経営企画ができる即戦力が人気だ。人手不足を背景に、スタートアップなどが提示する給与水準なども上昇。リクルートキャリアなど大手各社では50代の成約がこの3年で倍増し、業界全体では仲介による転職が年間2万人近くになったとみられる。大手企業が抱え込んでいたシニア人材の流動化が徐々に進みそうだ。

 建設業の中央建設(東京・港)は昨年採用した約40人のうち半数超が50歳以上の建築技術者だ。全員が正社員で70歳の定年まで同じ労働条件と賃金で働ける。「昔は若いほどいいというイメージがあったが、技術力のある50代は貴重だ」と渡部功治社長は語る。

 人材会社を介した転職者は、年間約20万人いるとされる。ジェイエイシーリクルートメントやパーソルキャリアなど人材紹介大手では、50歳以上の転職者がそれぞれ3年で倍増。業界全体では年間の成約が1万5千件から2万件になったもようだ。一方、20〜30代の転職者数は同じ3年間で「3〜4割増」(リクルートキャリア)だ。

 中でも求められているのが、現場監督などを務められる建築技術者だ。リクルートキャリアによると求人倍率は4・43倍に達し、全職種の中で求人ニーズが最も高い。50歳以上に限っても、建築技術者の転職は過去3年で3倍に増えた。

 シニアの求人増は建設業以外にも広がっている。人手不足が深刻な流通業のほか、中小企業では幅広い業種で財務や経営企画など管理部門での求人が増えている。

 管理部門を拡充したいスタートアップからの求人では、大手企業の部長や課長が幹部として移る例が増えているという。エン・ジャパンでは、管理部門の50歳以上の転職者が3年で倍増した。

 大手メーカーの経理部門に勤務していた男性(57)は18年末、スタートアップ企業の経理部長に転じた。1300万円だった年収は役職定年後に1100万円になり、転職後はさらに100万円下がった。しかし、男性は「60歳過ぎても専門性を生かせるため、安心して働き続けられそうだ」という点を評価した。

 「かつて50代は引退手前の位置づけだったが、定年延長などで10年は働ける即戦力の幹部候補に評価が変わっている」と、エン・ジャパンの天野博文事業部長は指摘する。

 50歳以上の転職は従来、給与が大きく下がるうえ、契約社員での募集も多く、ためらう人が多かった。ここにきて、転職時の給与を高めに設定し、正社員で迎える企業が増えていることが転職に踏み切りやすくしている。

 ジェイエイシーによれば、最も引き合いが強い50歳以上の建築エンジニアの転職時の給与は平均654万円。この水準だと、役職定年などで賃金が2〜3割減った後の大手の水準に近く、60歳過ぎても同じ条件で働き続けられるなら中小に魅力を感じるシニアは少なくない。「定年直前の59歳の転職者が特に増えている」(リクルートキャリアの平野竜太郎シニアコンサルタント)

 バブル期に大量採用した世代が50代になる中、富士通やNECなど大手企業の間では、45歳以上の社員を対象とした早期退職募集が相次いでいる。大手企業が人材を抱え込み、慢性的な人手不足にあえぐ中小に人材が回らない「ミスマッチ」が、日本の産業構造の課題の一つだった。

 エン・ジャパンによるとここ数年、50歳以上の転職が増えており、転職仲介の1割弱を占める規模になってきたという。今後、人手不足に悩むスタートアップや中小の間で給与などの待遇を改善する動きが進めば、成長産業への人材移動を促すことになりそうだ。(高倉万紀子、亀井慶一)

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