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建材各社、輸送費転嫁急ぐ、五輪や都市再開発…、需要家と強気の攻防に。

[ 2019年5月14日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 コンクリート製品などの建材メーカーの間で輸送費の上昇を理由にした製品値上げ機運が高まっている。運転手不足でトラック運賃が上昇し建材各社の収益を圧迫しているためだ。各社は東京五輪や首都圏再開発の関連工事などで需要が堅調なうちに値上げを浸透させたい考え。需要家との間で攻防となりそうだ。

 建物の壁や床に使う軽量気泡コンクリート(ALC)パネル。今春に入り、旭化成建材や太平洋セメント系のクリオンなどALC大手が相次ぎ、製品の値上げを打ち出した。各社は春から秋にかけての出荷分を7〜8%程度引き上げる。建材商社と交渉中だ。

 「輸送費が高い。製品への転嫁はやむなし」。あるALCパネルメーカーの幹部は打ち明ける。過去2年も値上げを打ち出したが、従来は原材料費の上昇が主な理由だったのに対し、今回は昨年から今年初めにかけ製品の輸送費の上昇が顕著になってきたのが大きい。ALC各社によると、原料調達や製品出荷などで輸送コストは最近2年ほどで1〜3割上昇した。

 住宅に使う木質建材にも広がる。大建工業は21日から、タタミの基材に使う木質製品などの建築資材の販売価格を現行に比べ6%程度引き上げることを決めた。原材料のコスト上昇に加え、物流費の上昇が理由。特に輸送費は「原材料の仕入れや製品の配送の双方で上がっており、コスト吸収が厳しくなった」(同社)としている。

 産業界の物流費は約2年前から上昇基調になった。メーカーや流通はコストを吸収してきたが、最近は吸収できない水準まで上昇してきたとの認識が広がっているようだ。大口荷主向けのトラックのチャーター運賃(東京発大阪行き)をみると、1年前より1割高い。

 「資材価格や輸送コストの上昇はメーカーの構造的な採算圧迫要因になっている」。ビルの梁(はり)や柱となる鋼材、H形鋼を手掛ける日本製鉄の建材営業部の幹部は話す。建材問屋や商社など流通事業者の入荷・出荷現場でも輸送コストの上昇は頭の痛い問題だ。

 建材市況が底堅いのが建材各社の製品値上げ機運を高めている。2020年の東京五輪・パラリンピックや都市再開発関連の建設工事が各地で活発だ。建材需要が旺盛なうちに輸送費高を転嫁したいとの思惑ものぞく。

 「『今は輸送費を前面にした方が値上げを通しやすい』という心理も、メーカーにはたらいている」。千葉県浦安市の形鋼問屋の経営者は付け加える。メーカーの間では、過去の原材料費の上昇分を十分転嫁できていないとの見方が根強い。需要家との交渉も膠着しがちだったが、新しい値上げ理由を示して交渉を優位に運ぶ狙いもある。

 メーカーや流通が転嫁した場合、需要家は受け入れられるのか。大手ゼネコンの首脳は「輸送費も含め建設資材の値上がりはある程度想定している。我々としては施主に転嫁していくことになる」と話し、建設市場の活況のなかで一定の理解を示す。ただ建設労務費など他のコスト上昇要因も多いなかで「施主への転嫁が難しいレベルの値上げはのめない」とくぎも刺す。

 最終的に輸送コストを誰が負担するのか。建材ごとで売り手と買い手の力関係を踏まえた攻防が激しさを増しそうだ。

(岡森章男 三輪恭久)

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