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住宅、車+ネットに活路、トヨタ・パナソニック事業統合、市場縮小が背中押す。

[ 2019年5月10日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 トヨタ自動車とパナソニックは住宅関連事業を統合する。トヨタ、パナソニックともに住宅事業が伸び悩む中、市場縮小という荒波が両社の背中を押した。電気自動車(EV)向けの車載電池や自動運転技術の開発などそれぞれの本業で巨額の開発費がかかり、事業の絞り込みは不可欠だ。

 新会社「プライム・ライフ・テクノロジーズ」にはトヨタとパナソニックが同率出資する。トヨタホームやその子会社ミサワホームも傘下に入る。ミサワは12月30日付で上場廃止となる予定だ。

自動運転活用へ

 トヨタは1975年に住宅事業に参入した。豊田章一郎名誉会長が新型自動織機を発明した祖父の佐吉氏、自動車事業を起こした父の喜一郎氏にならい、新規プロジェクトの立ち上げを先導した。パナソニックの住宅事業も創業者の松下幸之助氏の肝煎りで63年から手掛ける歴史のある事業だ。住宅は双方の創業家の思い入れの強い事業だが、再構築に踏み切った。

 トヨタとパナソニックが見据えるのは、車や家電、住宅設備などあらゆるモノがネットにつながる「IoT」が広がった社会だ。自動運転バスなど次世代の移動サービスが普及し、日常の行動や生活様式が大きく変わり、街のあり方も変わる。

 トヨタは2020年代前半に移動店舗など様々な用途に使える自動運転車「イーパレット」の実用化をめざす。パナソニックも人工知能(AI)を搭載したネットにつながる家電が利用者の習慣に合わせて動き、ネット経由でソフトをアップデートして機能を向上させる事業を構想する。

 新会社は車や住宅、家電、エネルギーインフラなどをネットにつなぎ多様な情報が集まるプラットフォームの構築をめざす。これを基盤に自動運転車の配車、家や街のセキュリティーサービスなどの提供につなげる。

海外も開発加速

 現行の「4G」に比べて100倍の通信速度を持つ次世代通信規格「5G」普及の本格化が迫る。パナソニックの津賀一宏社長は9日の決算会見で「住宅のニーズが多様化しており連携が必要だ」と話した。トヨタの豊田章男社長も8日の会見で「社会全体など大きな視野で考える発想が必要だ」と語っていた。

 ITや移動サービスを組み合わせた次世代の街づくりは世界で広がりつつある。グーグルの親会社であるアルファベット傘下のサイドウオーク・ラボは、カナダのトロントでデジタル技術を駆使した新たな街づくりに参画している。

 中国でも習近平(シー・ジンピン)国家主席の肝煎りで建設している新都市、雄安新区にアリババ集団や騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)など有力IT大手がこぞって進出。自動運転車が走る先進的な街づくりを加速させている。

 もっともトヨタとパナソニックの住宅事業は業界中堅クラスで、単独での成長は難しかった。再編で規模を拡大し、親会社の連結子会社からも外して大きく事業モデルを変える必要があった。

 国内の住宅市場は先行きが厳しい。野村総合研究所は30年度の新設住宅着工戸数は60万戸と、17年度に比べ4割近く減ると予測する。大和ハウス工業は物流施設、積水ハウスはホテルなど住宅大手は領域の拡大を急ぐ。

 一方でトヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワは中高価格の戸建てに特化する。手ごろな価格を売りにする飯田グループホールディングスなど「パワービルダー」の追い上げも激しく「将来の手詰まり感があったのではないか」(大手住宅メーカー)との見方もある。

 自動運転や電動化などの競争が激化する中、トヨタは20年3月期の研究開発費を過去最高の1兆1000億円にする見込みだ。5年前から1割増える。持続的な先行投資をするため収益体質の底上げに努める。

 パナソニックは家電などで稼いで車載電池などに投資し成長するシナリオを描いてきたが、家電も車載電池も苦戦している。両事業とも中韓勢が台頭しており、競争力の維持には資金が必要だ。車載電池ではトヨタと20年末までに新会社を設けるが、電池の開発や生産には大きな投資が要る。

 デジタル化で加速する産業構造の転換は、日本を代表する製造業にも戦略の見直しを迫る。

(藤野逸郎、押切智義)

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