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令和の芝に起業の新芽、旧ジュリアナ新事業「お立ち台」、大手・都心と適度な距離感(STARTup集積MAP)

[ 2019年7月9日 / 日経産業新聞 ]

 東京都港区のJR浜松町駅や田町駅、芝公園などがある芝エリアはバブル期に大規模な再開発が進み、湾岸部は「ウオーターフロント」と呼ばれた流行の発信地だった。そんな一帯にITや宇宙、ヘルスケアなどのスタートアップ企業が集まり始めている。「バブルの芝」から「令和の新芽」が育つ現状を追った。

 田町駅の芝浦口から7分ほど歩くとボウリング場や倉庫、オフィスが入居する「第3東運ビル」が姿を現す。この1階には1990年代前半、ディスコ「ジュリアナ東京」があった。若い女性が「お立ち台」で踊り、日本中が熱狂したバブルの象徴となった場所だ。

 ジュリアナは94年に閉店する。そして令和元年のいま、ビルの9階はスタートアップなどが新事業を生み出す施設「スタートアップスタジオ」に生まれ変わっている。

 スタジオには3Dプリンターやレーザーカッターなど最新設備を備え、大手メーカー出身のエンジニアや製品デザイナーなど約35人の専門家が在籍する。博報堂グループから生まれたスタートアップのQUANTUM(クオンタム)が2016年に開業し、起業家の支援や新規事業の創出に取り組んでいる。これまでに手がけたプロジェクトは30件を超える。

 健康支援サービス「POZ」はニコンと共同開発した。画面のヨガトレーナーの動作にあわせて体を動かすと、システムが理想のポーズとの差異をリアルタイムで表示する。18年末から3社に有償で提供を始めた。

 芝浦周辺は人通りも少なく、渋谷や六本木のような活気には乏しい。なぜ芝浦を選んだのか。

 「出島のような場所だからこそ大企業の論理から離れ、新しいことに取り組みやすい」。POZを担当するクオンタムの金学千氏は、大企業の本社と適度に距離があることが魅力だと話す。

 ビルの7階には複数のスタートアップが入るオフィスもある。キャスタリアは子ども向けオンラインプログラミング教育を開発中。山脇智志社長は「海が近く倉庫の空きスペースを起業家に安く提供する芝浦は、ニューヨークのブルックリンを連想させる」と語る。

 田町駅の周辺には創業間もない企業だけでなく、ある程度の規模に成長したスタートアップも多い。代表格が金融とITを融合したフィンテックを手がけるマネーフォワード。12年に高田馬場で創業し、恵比寿を経て14年に田町に本社を移した。17年に東証マザーズに上場し、18年7月には芝浦の複合ビル「ムスブ田町」に再び移転した。

 田町に拠点を構えた理由の1つが家賃の安さ。スタートアップのオフィス移転を支援するヒトカラメディア(東京・目黒)によれば、田町や浜松町周辺の3・3平方メートル当たり賃料は1万5000〜2万5000円。渋谷や恵比寿、新宿と比べて1万円ほど安い。「街が混雑しておらず社員が働きやすい環境も魅力」(マネーフォワード)だ。

 田町駅北側の芝・三田地区には研究開発型のスタートアップが多い。中核は藻を使った健康食品や燃料を開発するユーグレナ。05年に創業した同社は15年に飯田橋から田町へ本社を移した。

 決め手になったのは交通アクセスの良さだ。国内移動では東京駅や品川駅から新幹線を使い、羽田空港から海外にも行きやすい。ユーグレナは上場を果たした後で証券会社などと組み、研究開発型スタートアップを支援するベンチャーキャピタル(VC)「リアルテックファンド」を設立した。両社が入居する「G―BASE田町」の周辺には、出資や協業の相手であるスタートアップも本社を移してきている。

 その1社が遺伝子検査のジーンクエストだ。以前は五反田に本社を置いていたが、ユーグレナの子会社になったことを機にG―BASE田町へ18年に移転した。高橋祥子社長は「周囲のスタートアップとの交流も深まり、事業のスピードが上がった」と話している。

 小型分身ロボット開発のオリィ研究所や、月の資源探査を手がけるispace(アイスペース)もリアルテックファンドの支援先。永田暁彦代表(ユーグレナ副社長)は「宇宙分野などの研究開発の事業化は膨大な資金が必要で、成功例も少ない」と語る。ユーグレナのノウハウを伝え、ユニコーン創出を狙う。

 平成バブル期のウオーターフロントには日本中のおしゃれな若者が憧れた。令和時代には自らの手で企業を起こし、社会を変えようとする若者たちが集まっている。

(鈴木健二朗、高橋徹、斎宮孝太郎)
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