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「電鉄」外す東急の成算、社名変更、不動産を中核に、グループ内連携課題。

[ 2019年9月3日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 東京急行電鉄は2日、社名から「電鉄」を外し「東急」に変更した。鉄道事業は10月に分社化し、不動産事業を中核とする姿勢を名実ともに鮮明にする。だが事業規模や新たな潮流への対応で競合大手と差があるのは否めず、描く未来図と内実との間には距離がある。一部重複する東急不動産ホールディングスとのグループ内連携も課題だ。

 東急の母体で田園調布(東京・大田)などの開発に携わった「田園都市株式会社」の設立から101周年の2日に合わせて社名を改めた、新生・東急。鉄道事業は会社分割方式で新設の100%子会社「東急電鉄」に10月1日付で移すため、事実上不動産に特化した事業持ち株会社となる。

 2日発表の長期経営構想では、30年度には営業利益を18年度の1・8倍の1500億円に、純利益を同1・7倍の1000億円に引き上げる目標を掲げた。営業利益に占める不動産事業(ホテル・リゾート除く)の割合は18年度でも39%と鉄道など交通事業(35%)を上回るが、「30年度には45%程度」(藤原裕久取締役常務執行役員)に高まり経営の中核をなす。

 不動産事業の柱である渋谷の再開発は11月開業予定の「渋谷スクランブルスクエア」東棟で一定のメドがつき、30年に向けては渋谷から半径2・5キロメートル圏の「グレーター渋谷」(高橋和夫社長)へ広げる。周縁の五反田・目黒・大井町、さらに新宿にも22年度に複合ビルを建て進出する。30年度までの累計投資額は不動産開発を中心に4500億円になる見込みだ。

 ただ事業基盤は盤石ではない。沿線人口は足元では増勢が続くが35年をピークに頭打ちとなるため、「渋谷の次」の模索が欠かせない。ただ競合の不動産大手、三井不動産や三菱地所、森ビルなどが東京都心各所で大規模開発を手掛けるのと比べ、東急は渋谷頼みだ。

 テレワーク普及などに対応した新しいビジネスでは、三井不が都心だけでなく全国の約40カ所でシェアオフィス「ワークスタイリング」を手掛けるなど積極的。東急も沿線内外に大小100拠点超設けるなど健闘しているが、全国展開となると独力では難しさもある。

 そこで市場関係者が目を向けるのは旧電鉄から独立した東急グループ内の有力企業、東急不動産との連携。バブル期の不動産ブームでの事業拡大で用地仕入れや入居テナントの誘致を競い一時緊張関係にあったが、今は対立色は薄まっている。

 ある国内証券アナリストは「重複事業は多く、経営資源を分散すべきではない」と指摘する。東京・二子玉川の開発や民営化された仙台空港の運営などで協業もしており、18年10月の東急不の公募増資では旧電鉄も応じて約16%の出資比率を維持したとの事実もある。

 もっとも、東急グループ内では「すぐに両社が統合に向かう環境にはない」と慎重な見方が大勢だ。東急不の営業利益は旧電鉄の不動産事業の約2・5倍で、新生・東急という「小が大を飲む」ねじれた統合となる。

 旧電鉄から切り離され沿線開発の外で事業成長をなし遂げた自負もあり「無理な統合は社員の士気に関わる」(東急不幹部)という声が漏れる。

不動産の好況サイクルに陰りが見え業績や株価の面で逆風が吹き出せば、再編を求める市場の圧力が高まる可能性はあるが、ハードルは低くない。

 東急が今後渋谷以外で力を入れる空港運営を切り口とした地方展開では2日、「東急不のネットワークを活用したい。ホテル事業では所有は東急不、運営は東急といった連携もできる」(藤原氏)と意欲的な声も聞かれた。東急不との連携も含めグループ力を高める戦略をどう描くか、東急の真価が問われることになる。(長尾里穂、太田明広)

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