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マンションにも「光熱費ゼロ」型、野村不動産など参入、4000戸に。

[ 2019年10月2日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 これまで戸建て住宅が中心だった省エネ型の「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」がマンションに広がり始めた。太陽光パネルや断熱材で熱効率を高め、最終的に光熱費ゼロを目指す。今年度は野村不動産など12社が参入し、数年で4千戸に増える見通しだ。マンション販売が約30年ぶりの不振にあえぐなか不動産各社は熱視線を送るが、本格普及には補助金頼みの打開が不可欠になる。

 大京が5月末に完成させた「ライオンズ芦屋グランフォート」(兵庫県芦屋市)。地上5階建ての屋上には太陽光パネルが敷き詰められ、屋内には発電した電気をためる蓄電池や熱を逃がさないための断熱材などの最新設備が導入されている。

 83平方メートルの部屋に3人が住む想定で大京が試算したところ、通常だと年間18万9千円ほどの光熱費を約7割、5万5千円に減らせる。削減する13万4千円の内訳は、冷暖房効率を高める断熱材やガラスによる「省エネ」で6万8千円、太陽光パネルなどで発電する「創エネ」で6万6千円。

 マンションを購入した兵庫県の30代の男性会社員は「冷房を使う頻度が減り、約1万円だった月の電気代は2千円ほどに減った」と話す。太陽光パネルは住民の個人所有となり、故障などに際しては自己負担が発生する可能性もある。

 経済産業省が2014年から補助制度を導入したZEHは、まず戸建て住宅を中心に広がった。日本全体では17年度だけで4万4千戸のZEH住宅が建てられている。現在、政府が力を入れるのが、都市部に多いマンションでの普及だ。

 ZEHマンションは、消費電力の削減効果に応じ4つの区分に分けられる。これまで20階以下のマンションが補助金の対象だったが、19年度の実証事業から21階建て以上の超高層マンションも対象に組み込んだ。高層だと8億円、超高層だと10億円を上限に補助金を支給する仕組みだ。

 政府がこのほど発表した19年度の実証事業には、野村不や近鉄不動産など12社が初めて参画。超高層マンション4棟、高層マンション26棟の計30棟が対象事業として認められた。18年度の対象物件と合わせると、ZEH対応の高層マンションは4千戸規模になる。

 足元でマンション市場は不振が鮮明だ。不動産経済研究所(東京・新宿)によると19年1〜6月の首都圏の発売戸数は、前年同期比13%減の1万3436戸だった。価格高騰などを背景に、92年以来の低水準に落ち込んでいる。

 不動産各社はZEHマンションを不振脱却の切り札と期待する。

 ZEHマンションの顧客への訴求点は大きく3つある。月々の光熱費の削減効果に加え、創エネ機能による防災性能の高さも売りだ。例えば太陽光パネルを備えるライオンズ芦屋グランフォートでは、災害で停電になっても7日間、エレベーターや電気、水道などのライフラインを維持する。

 さらにこうした利点を持つことで資産価値の向上も期待される。積水ハウスは18年度、消費電力の100%をまかなえるZEHマンションを44棟供給した。主に低層の賃貸マンションが中心で「資産価値が落ちない賃貸物件を建てたいと考えるオーナーの需要は多い」(近田智也・環境推進部長)という。

 ただ、高層マンションのZEH対応には課題もある。高層物件は1戸当たりの屋上の面積が小さい。その分、太陽光パネルの設置スペースが限られ創エネが難しくなる。高層マンションの場合、削減できる電気代は省エネを中心に年間5万円程度になるとみられ、節約効果は限定的だ。

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