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エレベーター「2020年問題」、三菱電機・日立など対応急ぐ、設備更新ピーク、旧型部品は供給停止へ、保守専業も台頭。

[ 2019年9月30日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 ビルやマンションに設置された古いエレベーターを巡り、設備の更新が増える「2020年問題」が起きている。新設の多かった1990年代の設備が取り換え時期を迎えているほか、電機大手が20年以降に旧型部品の供給を相次ぎ止める。各社は対応を迫られ、作業員を増やしたり工事期間を短くしたりする。更新を商機とみる保守専業会社と競争が激しくなる。

 三菱電機や日立製作所、東芝などが設けた国内のエレベーターは約100万台とされる。老朽化が進み、日立の関秀明執行役専務は「バブル以降に建てたビルで更新期を迎えている」と話す。

 1990年代の年間の新設台数は現在より4割前後多かった。そのころのエレベーターが、推奨されている設置後20〜25年の更新時期に入った。古いエレベーターをすべて新しい機種に切り替えた場合、更新コストは数兆円との見方もある。

 更新需要が高まる別の理由は、電機大手が1970〜80年代から製造していた旧式エレベーターのための部品の供給を止めることにある。対象は、運行をつかさどる頭脳である制御盤に使われる部品などだ。日立やフジテックが20年、三菱電機が23年、東芝は24年に供給を止める見込み。

 顧客であるオフィスビルや商業施設の側には、更新のためにエレベーターを止めると利便性が大きく損なわれ、客足にも響くとの懸念がある。このため更新を先送りしてきたケースも多い。

 日立は21年度の更新受注台数が18年度に比べ2割増えそうだという。08年の米金融危機後の市場縮小に慣れていた各社は、対応を迫られる。

 三菱電機ビルテクノサービス(東京・荒川)は20年度、協力会社を含め700人の工事技術者を1割増やす方針。現場管理や効率的に更新工事ができる人材を育てる。

 更新専用の研修施設を今春、東京都小平市に開いて実習用エレベーターを5台置いた。同社の18年度売上高は3357億円。更新工事を年5000件受注できるようにして保守事業を広げる。

 研修強化は各社共通の課題で、日立は最新技術によって作業員のスキルを磨く。受注増に備えて仮想現実(VR)の教育システムを開発し、利用を始めた。ヘッドマウントディスプレーを頭に装着し、コントローラーを持つ。19年度に700人がブレーキ装置の分解整備などを訓練する。

 工事期間を短くして更新ラッシュに対応しようとするのは東芝エレベータ(川崎市)だ。

 更新を受け付ける対象を1980年代後半から90年代に製造していた同社製の機種に特化したサービスで、交換する部品を巻き上げ機や制御盤の主要部品に絞る。終日停止させる期間が5〜7日にわたっていたが、2日間になるという。

 電機大手は自社製エレベーターの更新を簡単に受注できるわけではない。エレベーターはサイズが合えば他社製に交換できる。更新時に受注を取られると、設置後の保守サービスから収益が得られなくなる。加えて、安さを打ち出す保守専業会社に勢いがある。

 独立系大手のジャパンエレベーターサービスホールディングスは電機大手の部品供給の停止を商機とみて、更新費を削減するサービスを始めた。制御盤のみの交換を提案し、設備丸ごと替える場合と比べて5分の1の200万円程度とする。

 同社の保守サービスは1台あたり平均で月2万円程度。電機大手より3〜5割安いという。マンションの管理会社や管理組合が、費用を減らすため独立系に契約先を変える。保守市場での独立系のシェアは20%程度で、同社は更新需要の波をシェア向上につなげる。

 日立はエレベーターを含むビルシステム事業の18年度の売上高が6216億円で、日本事業は4割。電機大手にとって国内の設備更新や保守の重要性は増している。海外ではそもそもスイスのシンドラーなどの存在感が強いうえ、世界需要の6割を占める中国の新設需要が鈍っている。

 エレベーターは年々性能が上がり、早くて静かになってきた。更新の発注に備えた体制づくりを通じ、安全で使いやすい社会インフラを築く競争が進む。(志賀優一)

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