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改正民法施行まで半年、契約ルール変更、対応急ピッチ、建設、業界慣行見直し、システム修理期間巡り応酬。

[ 2019年11月4日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 売買やサービスなど契約に関するルールを定めた改正民法(債権法)の2020年4月施行まであと半年を切った。約120年ぶりの抜本的な見直しで、インターネット取引が浸透した社会の変化にあわせ、内容も分かりやすくなった。企業の幅広い取引に関わる法律だけに、新ルールへの対応を中心に、実務上の混乱を防ぐギリギリの対策が急ピッチで進められている。(渋谷江里子)

 国土交通省の標準約款はまだか――。建設業界では、日増しに焦りの声が高まっている。

 改正民法では工事の受注に代表される「請負」のルールが変わる。建設業界で懸念されているのが、これまで慣行だった「債権譲渡制限特約」が4月以降結ぶ契約では原則、無効になる規定だ。

 例えばビルを建設する場合、工事を受注するのはゼネコンなどの元請け企業だ。ゼネコンは工区や作業工程ごと複数の下請け企業に工事を発注する。契約を結ぶ際、下請けは元請けに対して将来、代金を受け取る権利(債権)が生じる。

 中小企業が多い下請けにとっては、債権を金融機関に売却したり担保に入れたりすれば工事が完成する期日より前に資金を回収できる。ただこれまでは事実上、難しかった。債権が第三者に渡るのを嫌うゼネコンなどが「債権譲渡制限特約」を条件とすることが多い。

 改正法では制限特約を設けていたとしても原則、譲渡は有効となる。中小企業の資金繰りの改善につなげる狙いだ。だが現場では特約が無効になると工事に支障が出ると心配する声があがっている。

 元請け側からみると、債権譲渡がしばしば起きると、最終的な債権者を確認する手間がかかる。反社会勢力に債権が渡る事態も避けたい。完工をまたずに下請けが債権を現金に変え、逃げてしまう可能性もゼロではない。国交省は「一次下請けが逃げた場合、元請けだけでなく傘下の二次下請けも損を被る」といった事態も懸念している。

 1つの指針として期待されているのが国交省が定める「建設工事標準請負契約約款」だ。請負工事の契約書のひな型で、主要企業はこれを参考に自社の契約書を作っている。国交省は債権譲渡制限特約の無効化について「別の規定で対応できないか議論している」。

 ひな型は年内に更新される見通しだが、発表が12月末となった場合、「法施行まで3カ月しかない。契約書の見直しや取引先への説明はギリギリの作業だ」(建設大手)

 請負のルール変更はシステム開発にも及ぶ。無償の修理期間を巡る応酬が始まっているのがシステム開発の現場だ。システムを引き渡した後、バグ(欠陥)が発見された場合、現行法では開発側が責任を負うのは引き渡してから「1年間」だ。

 改正法では、この期間が契約書に明記されていない場合は、バグに「気づいてから」1年以内となった。製品の性質上、バグが発生するのは防ぎきれない。日立製作所インダストリー法務室の飯田浩隆部長代理は「大規模なシステムでは保証期間が過ぎた後も有償で保守契約を結ぶことが多い。もし改正法のルールどおりにするなら製品の価格に反映しなくてはならない」と話す。主なシステム開発企業は原則として改正後も現行の民法と同じ「引き渡してから」とする方針で、保証期間を明記した契約書を作る方向で対応している。

 ただ顧客側にとってはバグに「気づいてから」の方が有利な場合が多く、改正民法に沿った契約書への更新を求めるケースもありそうだ。NTTデータでは4月以降の契約書締結を望む顧客企業に「業界として改正前の取引慣行を維持する、改正民法を適用する場合は対応コストが開発費に反映されると説明している」(法務室の野中健吾課長)という。保守期間を巡り、交渉が長引くケースも想定される。

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