連載コラム

第1回 プチぜいたく型FCで不況を乗り切る

[ 2008年12月26日 ]

〜バブル崩壊を乗り越え、脱サラから年商43億1000万円〜
株式会社マリーナトレーディング代表取締役 小松慶典さん

 一般に成功率が高いと言われるFC事業ですが、急激に景気が落ち込む今、FC加盟による独立、転業、多角化であっても、強いリスクや不安を感じている方は、少なくないでしょう。そこで、この連載では、厳しい状況でFCに加盟し、事業を成功させたり、多くの困難を乗り越え、成長してきた先輩加盟者たちに、逆風下で勝ち抜く視点、経営姿勢、工夫などを伺っていきます。それらから、不況下でも、自らの道を開くヒントを学び取ってください。第一回で取り上げるのは、脱サラから3年後にバブル崩壊に直面、これにひるむことなく事業を拡大してきた小松慶典さんにお話を伺います。

写真
株式会社マリーナトレーディング代表取締役 小松慶典さん

バブル崩壊後も事業を伸ばせた理由とは?

 1988年、小松慶典さんは、コンビニエンスストアFCに加盟、独立を果します。それからわずか3年後の1991年、バブル経済が崩壊し、日本経済全体が、長い低迷期に入ります。ところが小松さんは、バブル崩壊後の10年間に、新しいFCに加盟し、10店舗も出店します。この時期に、なぜ攻めの経営を押し進めたのでしょうか。
「私が独立した頃は、バブルの後期で、まだ経済は上昇期にありました。バブルが崩壊して不況に突入するとは全く予想していませんでした。それでも攻めの経営を続けたのは、そもそも自分で、事業を拡大することを夢見て独立したからです。1店舗を経営することが、私のゴールではなかったのです。
 自らの信念に加え、その当時成長期にあった雑貨店FC「無印良品」、靴下専門店「靴下屋」との出会いがあったので、事業拡大を継続できましたね」(小松氏)
 バブル崩壊は、高価格のブランド品などに大きな打撃を与えましたが、無印良品や靴下屋は、もてはやされたそうです。
「この2つのFCに共通するのは、ハイクオリティ・ハイセンス・リーズナブルな価格の生活必需品であることです。確かに景気悪化で、消費者は高額商品を買わなくなったのですが、豊かな時代を経験して、目が肥えているのでいわゆる安物は買いたくないのです。だから、機能性、ファッション性に優れていて、しかも手頃な価格の商品に飛びついたのだと思います。そういう商品は、当時まだ新しかったので、若い層を中心に受け入れられたわけです。新業態で、新しい需要を掘り起こしたことに加え、生活必需品でリピートオーダーが見込めることも、店舗運営を安定させましたね」
 不景気ゆえに、店舗の賃貸条件も良く、良質な人材を充分確保できたと言います。信念・時代に即したFC事業との出会い・店舗、人材に恵まれたことが、不況下でも事業を伸ばす原動力になったわけです。

プチぜいたく品は不況に強い?

 こうしてバブル崩壊を乗り越えてきた小松さんは、現在の不況をどのように捉えているのでしょうか。
「最近のお客様の消費行動を見ていると、安定志向で、行動範囲が狭くなったなと感じます。しかし基本的に、景気低迷下であっても、例えば自分へのごほうびや、家族や友人へのプレゼントには、お金を使いますね。価格と品質のバランスを吟味して、ちょっとしたぜいたくを楽しんでいると思います。コンビニのデザートなども、その良い例で、売れ行きは好調です。この傾向は、バブル崩壊後と共通しています。
 私の手掛けている事業も、若干景気の影響を感じますが、商品の売れ行きは、堅調です」
 小松さんは、現在、7業態のFC事業を展開していますが、それらに共通するのが、品質と価格のバランスが取れた生活必需品、プチぜいたくを提供する商品・サービスだと言います。小松さんは、これまでの経験から、プチぜいたく品は、現代の日本に安定した需要があるため、ここに焦点をきっちり当てた事業なら、たとえ景気停滞期であっても、一定の売上を保持して、成功のチャンスが見出せると考えているようです。

多くの先輩加盟者と会ってから、FC選択を

 さて、それでは、FC初心者が、この厳しい時代を乗り切れるFCを見つけ出すには、具体的にどのような点に注意したら良いのでしょう。
「不況下では、比較的安く店舗を借りることができますし、良い人材も集めやすいので、そうした意味ではチャンスがあります。しかしその反面、店舗は消費者から厳しく選別されますので、FC選びは慎重に行わなければなりません。
 FC選びでまず取り組むべきは、事業や店舗の生命力、つまり、事業が時代に適応して伸びていく力をどれだけ持っているかを見極めることです。特に都市部で受け入れられている事業が、地方でも成功するとは限らないので注意が必要です。
 FC選びにおいて、私がもっとも重視しているのは、FC本部トップの人柄です。確かに事業ですから、売上などの数字面も大事ですが、やはり一番重きを置いているのがこの点です。トップと会うときは、トップの事業にかける夢や情熱、夢を実現するために仲間となる加盟者を心から求めているかといった点をチェックしています。
 また自分自身に対して目を向けることも、FC選びの際に忘れてはならないことです。個人の方なら、自らが好きな業種、分野は何かじっくり考えてみてください。法人なら、自社の体質を見極め、どういった分野に適性があるかを見定めることです」
 情報の量が質を決めると言います。厳しい状況下で新分野に挑むのは、個人であれ法人であれ、一定のリスクを伴います。だからこそ、様々な角度からFC事業に関する情報収集を心がける必要があります。なお、小松さん自身も、社会のトレンドをいち早く掴むべく、日頃からFCショーなどの展示会に足を運び、商品や事業に関する情報を収集していると言うことです。

売上を上げる最後のひと押しとは?

 成長性が見込めるFCを見つけ、加盟、開業すれば、自然に売上が伸び、事業も成功するわけではありません。小松さんは、売上げアップには最後のひと押しがあるといいます。それはいったい何かと言うと...
「人です。売上は、機械的に上がるものではありません。いくら優れた商品、業態であっても同様です。FC事業において成功要因の6割がFC選び、残り4割は人材育成や、組織内での事業に臨む姿勢の共有、浸透ではないでしょうか。お客様の心を掴まないと、二度、三度と来店してくれませんから、売上は上がっていかないのです。この心を掴むのに必要なのが、人、販売スタッフの力です。ですから、私は、販売スタッフをはじめとする社員教育に、もっとも力を入れています。ちょっとした気配り、おもてなしのできるスタッフを育てることは、本部ではなく加盟者自身の責任だと思っています。
 ですから、通常の本部研修のほかに、私ども独自の社員研修を行っています。私どもでは、店長の上に位置するマネージャー、店長、店長をサポートするナンバー2のスタッフを対象に、毎月、ビジネスの基本について研修を行っています。もちろん独立したばかりの方の場合、本格的な研修の実施は難しいでしょうから、人材教育を念頭に、スタッフに接して行けば良いと思います。具体的に言うなら、スタッフの言動について評価すべき点があったときには、みんなの前で表彰してあげる、電話を一本入れて誉めてあげるといったことでしょう」
 小松さんは、専門的な商品知識などに関することは本部研修で押さえ、営業計画の組み立て方など、ビジネスの基本は自社研修で教えていると言うことでした。
 メディアでは連日のように景気悪化が報じられていますが、周囲を良く見渡せば、にぎわっている店もヒットしている商品も多数存在します。厳しい時代と言えども、結局のところ、事業を成功させるには、求められている事業を見つけ、これを育てる努力を継続的に行うと言う当たり前のことを積み重ねていくことだといえそうです。

FC本部は見た!小松慶典さんの強さの秘密

〜人材育成力とオープンな経営〜
タビオ株式会社(靴下屋FC本部)越智勝寛代表取締役社長

 「小松さんの経営姿勢の特徴は、人材育成の重視と経営の透明性だと感じています。以前、小松さんが独自に行っていらっしゃる社員研修を見学させていただいたのですが、大変素晴らしいものでした。手掛けておられる複数の業態の社員を集め、外部講師を招いて実施されていました。実は、これに刺激を受け、本部も負けてはいられないと、教育制度の見直しを図ったほどです(笑)。また、通常、業績だけ見て、店舗を評価しがちですが、小松さんは、店舗スタッフの努力や成長も考慮して、総合的な評価を下しています。こうした点が、人材育成を経営の根幹においていらっしゃる小松さんならではですよね。
 加えて、本部はもちろん、社員、取引先、他の加盟者にまで、数字を含めた経営状況をオープンにしていらっしゃいます。ご自身で試してみて効果があった手法なども、我々に伝えてくださいます。手厳しい意見も頂戴しますが、常に、いっしょにFCを盛り上げていこうとする姿勢を感じています。私どもにとっては、信頼できる貴重なビジネスパートナーのお一人ですね」

写真
靴下屋「イオン越谷レイクタウン店」

(企画・構成:ツーウェイコミュニケーションズ松本陽子)

執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

バックナンバー

PAGE TOP