連載コラム

第3回 23億の債務超過からFC加盟で再生

[ 2009年2月27日 ]

~本部との強い信頼関係と強固な信念が決め手~
株式会社ヌマニウコーポレーション 代表取締役社長 沼生進さん

沼生進さん 沼生進さん

 景気後退が深刻化する中、苦境に立つ企業が増加傾向にあります。その苦境から抜け出す方法の一つとして、FC加盟による経営多角化、転業が考えられます。そこで今回は、23億もの債務超過の状態で、FC加盟の道を選び、再生を果したヌマニウコーポレーションの沼生進さんにお話を伺っていきます。
厳しい財政状態にある企業の場合、加盟を断られることもあるはずですが、なぜヌマニウコーポレーションは加盟できたのか、何を支えに、どういう点を押さえながら、再生までの道のりを歩んできたのかなどを沼生さんにじっくりお話いただきましょう。

全てを本部に打ち明け、FC加盟

 ヌマニウコーポレーションは、もともと栃木を拠点に、50店舗もの家電店を運営し、北関東の家電業界で4強と言われた存在でした。
 ところがバブル期の財テク失敗などで資産を失い、次第に危機的状況に陥っていきました。経営建て直しのために、95年1月、現社長の沼生進さんが社長に就任しましたが、沼生さんは、その時"会社が一年持つだろうか"と考えたそうです。
「社長に就任した当時、23億の債務超過がありました。その頃は、家電業界に大型店化の波が押し寄せていたのですが、弊社は財務内容が悪くて、その波に乗れませんでした。これが大きな理由の一つとなり、業界の競争から離脱していったのです」。(沼生さん)
 沼生さんは、必死に再生への道を探り、辿り着いたのがパソコン・AV機器などのリサイクルショップ「ハードオフ」FCでした。
「95年4月に知り合いから紹介され、ハードオフFC本部の山本社長にお会いしました。話を進めるうちに、ハードオフの経営理念や行動指針にすっかり感銘を受け、その場で加盟したいと思いました。その時は、ハードオフも店舗数がまだ10店舗前後で、成長初期の段階にありましたが、そうした点は全く気にならなかったです」
 しかし、一般的に、厳しい財政状態にある企業が加盟を望んでも、受け入れられない場合が少なくないはずです。どうしてヌマニウコーポレーションは加盟できたのでしょうか。
「おそらく、私が全てを正直に話したからだと思います。山本社長と二人きりで、3時間くらいかけて、債務超過や借り入れ、年間の売上、商品構成比率といった弊社の経営、財務状況を、こと細かくお話ししました。後になって山本社長が、"全て話してくれたのは、沼生さんが初めてだった。だからなんとかなると思った"とおっしゃってましたね」
 FC事業は、本部と加盟者のパートナーシップの上に築かれるものです。従って、相互に信頼し、協力し合って共に繁栄の道を目指す事業特性を持ちます。沼生さんが、会社の現状を包み隠さず全てオープンにしたことで、心からハードオフを信頼し、FC加盟による再生を本気で望んでいることが山本社長にも伝わったため、加盟に至ったのだと思われます。

苦境の中でFCを選ぶポイントは?

 こうしてヌマニウコーポレーションは、ハードオフに加盟、同時に山本社長に紹介された中古書店「ブックオフ」にも加盟し、95年9月に2つのFCの複合型店を出店します。しかし、そこから再生までの道のりは平坦ではなかったといいます。
「順次、家電店を閉店し、ハードオフなどの店舗に変えていったのですが、4~5年の間、債務超過は増え続けました。一番厳しい時期、私は毎日銀行へ行って、頭を下げていました。この間は、悔しい思いをしたこともありました」
 普通なら挫けてしまいそうなこの時期に、沼生さんを支えたものは、何だったのでしょう。
「表面的な数字は確かに悪かったのですが、弊社には創業以来50年間培った"のれん"があると思ってました。地域の人に信頼されているという強い想いがあったので、それが支えになったのかもしれません。また、いい部下がいてくれたことも心強かったですね」
 さらに、第一号店オープン後のある気づきが、沼生さんに力を与えてくれました。沼生さんは、その気づきにより、まだ試練の真最中であったにも関わらず、新事業の成功を確信したといいます。
「社員の笑顔に気づいたのです。家電店では、暗い顔をしていた社員たちが、ハードオフの店に変わってから、お客さんが喜んで商品を売ったり、買ったりしてくださるので、笑顔で働くようになったのです。これだけお客さんに喜んでいただけて、社員も笑顔になれる商売なら大丈夫だと思ったわけです。実は、それまで、家電店の一部はそのまま残そうと考えていたのですが、このことに気づいて、家電店は全部閉店して、ハードオフやブックオフに変えようと決めました」
 その後、長い年月をかけて、資金繰りを確認しながら、家電店の閉店とハードオフやブックオフのオープンを一つ一つ進めていき、現在ではハードオフを中心に、5つの業態を展開、店舗数は66店を数えるまでになりました。こうしてヌマニウコーポレーションは、財務状況も健全化、見事再生を果したのです。
 これまでの道のりを踏まえ、沼生さんは、危機的状況をFC加盟で突破する際のFC選びを以下のように考えているそうです。
「まず既存の資源、弊社の場合なら店舗や人材を生かせるFCが良いでしょう。ゼロからの投資では、必要な資金が違ってきますから。また成長市場のFCを選ぶことも大切です。弊社がハードオフに加盟した頃は、リサイクル市場の成長初期段階だったのです。これが強力な追い風となり、順調に店舗展開できたわけです」

FC加盟はきっかけやり抜くのは自分

 さて、こうして再びスタートラインに立ったヌマニウコーポレーション。再生後も積極的な事業展開を進めてきたため、現在の景気後退下でも、堅実に経営しています。
「今、比較的良好な状態にあるのは、リスク抑制のため、事業の多業態化と人材育成に力を入れてきた結果だと思います。
 中でも、人材育成には力を注いできました。経費削減は必要ですが、人には投資を惜しんではならないと考えています。人材育成に関しては、社員のやる気を引き出すことに重点を置いています。そのために、例えばパートやアルバイトも含めた社内研修を開催したり、会社が全額費用負担して、パート、アルバイトの海外研修も行っています。パートスタッフについては、一定の条件を満たせば、準社員や正社員に変われる制度も作りました。年間で5名程度はこの制度を利用して、パートから準社員や正社員に変わっています」。
 切羽詰った状態から、立ち直るのは大変困難なことです。さらに立ち直ってからも、成長を持続するのは一層難しいことでしょう。沼生さんが、このような困難な挑戦を続ける上で常に心がけていることはあるのでしょうか。
「いつも正しいと信ずることを実践するようにしています。そうすれば、必ず道は開けるものです。また"この人なら"と思った相手には、包み隠さず本音で話すようにしています。その結果、信頼関係が生まれ、自ずと周囲に頼れる人が集まってくれることになります」
 最後に、現在厳しい状況に陥っている企業が、FC加盟で再生を図る時の注意点を伺いました。
「FCを再生のきっかけにするのは良いのですが、自分で道を開くのだという気概が必要です。おそらくどのFCをやるかより、自ら切り開く決意のほうが重要だと思います」
 苦境には、それを招いた原因があるはずです。まずは、その原因をしっかりと見つめ、反省すべきことを反省してから、強い信念を持って、再生の道を歩んでいただきたいところです。また、FC加盟を検討する際には、本部から同様の状況で加盟、再生を果した先輩加盟店を紹介してもらい、直に会って体験談を聞くようにすれば、一層再生への道のりも明確になり、腹をくくって再スタートができるでしょう。

FC本部は見た!沼生進さんの強さの秘密

~正直さとやり抜く信念で苦境を突破~
株式会社ハードオフコーポレーション 代表取締役会長兼社長 山本善政さん

「ハードオフ・ブックオフ複合店」
「ハードオフ・ブックオフ複合店」

「初めてお会いした時の沼生さんは、"敗軍の将"というイメージでした。かつてヌマニウコーポレーションといえば、家電業界の名門でしたが、その頃は会社の士気は最悪で、倒産してもおかしくない状況でしたね。
 そんな中、沼生さんは、私に決算書を見せながら赤裸々に現状を話してくださいました。確かにひどい状況でしたが、これならまだ間に合うと思いました。私どもも数年前に地獄から這い上がってきた経験がありましたので、そのように判断できたのです。また、沼生さんの正直さも、私に再生を予感させました。FCは信頼関係の上に成立するものなので、まずは私どもを信頼して、全てをオープンにしていただく必要があります。そうでなければ、本部として現状に即した指導をすることもできませんから。信頼関係が築ければ、弊社も加盟者を必ず再生させるという強い気持ちで支援していけます。
 弊社には、かなり追い詰められた状況で駆け込んでくる企業が珍しくないのですが、加盟条件として、正直に現状をお話いただくことと、新潟にある私どもの本社で開く研修に、その企業の社長自身が参加していただくことを挙げています。沼生さんは、新店がオープンするごとに研修に繰り返し参加されたので、合計30回くらいはいらしていると思います。そうした沼生さんの情熱が社員に伝わって、再生されていったのだと思います」

(企画・構成:ツーウェイコミュニケーションズ松本陽子)

執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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