連載コラム

第1回 私のフランチャイズ選びの基本

[ 2010年1月13日 ]

 ますます厳しさが増す日本経済。この状況下で敢えてフランチャイズに加盟し、脱サラ・独立、転業、多角化を目指す場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
 長年、多様なフランチャイズ事業を展開し、困難な局面も乗り越え、事業を伸ばしてきた3名の加盟店オーナーに、座談会形式でご意見を伺ってみました。ここから、フランチャイズ事業を選ぶ際の着眼点、リスクの下げ方、従業員との信頼関係の築き方など、加盟店として生き抜く知恵を学び取ってください。

全体写真

《座談会ご出席者》(順不同)
生澤 幹雄 氏(有限会社里沙コーポレーション 代表取締役)
糸井 繁夫 氏(イトイ株式会社 代表取締役社長)
清水 道夫 氏(株式会社シャポンドゥ 代表取締役社長)
コーディネイター:松本 陽子 氏(ツーウェイコミュニケーションズ 代表)

不況下でも堅調なフランチャイズ事業は?

―――08年9月のリーマンショック以降、景気低迷が続いていますが、皆さんが手がけていらっしゃるフランチャイズ事業の中で、こうした状況下でも堅調な事業を挙げていただけますか。

有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏
有限会社里沙コーポレーション代表取締役
生澤幹雄氏

 生澤:美容室ですね。予約不要で、お客様を待たすことなく、スピーディーに仕上げ、料金も安いのが特徴です。店構えもおしゃれで、基本的に女性対象です。それまで料金の高い美容室へ行っていた方が、景気の影響で来店されるようになっているので、不景気の方がかえって伸びる印象すらあります。美容師さんも、いい方が集まるようになりました。定着率もいいです。ノルマ制でなく、月給制である点も美容師さんに評価されているようです。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏
株式会社シャポンドゥ代表取締役社長
清水道夫氏

 清水:新しく始めた中華食堂はいいですね。通常、前年度の売上げを超えるのに時間がかかるものですが、この業態は非常に早かったですから。この業態を知った当初は、研修期間が長く、おまけに免許を取った人が揃わないと出店できないなど、開業条件に正直驚いたのですが、総合的に判断して加盟を決めました。中でもスタッフ定着率の良さには注目しました。と言うのも、飲食事業においては、新人スタッフとベテランの方を比べた場合、生産性が10倍くらい違うので、以前からスタッフの定着率を上げたいと考えていたからです。今では、長い研修などを通じ現場スタッフをしっかり育てたことが、良い結果につながったと感じています。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏
イトイ株式会社代表取締役社長
糸井繁夫氏

 糸井:私はショッピングモールなどのフ―ドコートにうどん店を出しています。以前、フードの単価は880円ぐらいでしたが、今500円程度かと思います。フードコートでも、480円ぐらいの商品がないと通用しません。私どものうどん店は平均単価420円~430円ですが、100円うどんも持っています。だから強いんですよ。店舗のオープン時には、100円のうどんを売ることに力を入れています。100円なら、だまされても100円なのでお客様も取りあえず食べてみてくださいますから。まずは100円うどんで多くのお客様に安くて美味しいことを納得していただき、そこから客数、売上を伸ばしていってます。

フランチャイズのここで選ぶ!ここに注意!

―――厳しい時代にこそ求められる商品・サービスであれば、不況下でも好調なようですね。ところで皆さんはいずれも複数のフランチャイズ事業を運営されていますが、事業を選ぶ際のポイント、注意されている点などをお話ください。
 清水:私どもでは、地元である山形、福島を拠点に、ドミナント展開をしていきたいと考えているので、まだこの地域にあまり出店していないフランチャイズであることが条件でしょうか。この方向で約20年間やってきました。これなら、田舎でもチャンスはあると思います。
 糸井:私の場合、自分の感性に合う事業を選んでいます。今、質屋のフランチャイズ加盟店を運営していますが、なぜこれを始めたかというと、近くに昔からの質屋さんがあるんですが、そこに高級外車が並んでいて(笑)、質屋はこんなに儲かるのかと思ってたんですね。それで、調べてみたらこれが面白いんです。でも、自分ではできないなと思っていたときに、フランチャイズの存在を知り、すぐ始めました。
―――感性に合う事業を選ぶということですが、具体的にどういったところでピンとくるものですか。
 糸井:一番ピンとくるのは、本部を訪ねた時ではないでしょうか。本部に行って、若い社員が一生懸命やっているフランチャイズはだいたい大丈夫ですね。
 感性に加え、投資額など、数字面での選択基準を挙げるなら、2500万円ぐらいの投資で、月商が400万円前後、年商5000万円程度で、充分利益も確保でき、社員の福利厚生にも対応できることです。
 それと将来の競合状態を考えてみるのは大事ですね。100円のうどんがいいのは、これ以上、安い商品がないことなんです。
―――いわば底値でしかも美味しい商品で勝負しているので、強力なライバルとなりうる競合他社が登場しにくいし、仮に登場しても、大きな打撃を受けにくいということですね。
 生澤:誰でも、どこでも簡単にできる事業は、確かに競合が激化しやすいです。私は以前、お弁当屋を運営したことがあるのです。成長期にあったので、本当に最初はすごく良かったのですが、その後、競合がどんどん出てきました。お弁当屋は、誰でもできますから。
 糸井:質屋は参入障壁が高いですから、一般の質屋さんが、質屋のフランチャイズが出てくるとは思っていないぐらいです。最初はやはり難しい仕事だということでしょうね。
 そうしたこともあり、質屋の研修期間は長いです。1つのものの目利きができるようになるまで、時間がかかります。私どもはもともと宝石店を営んできましたから、宝石店の社員を質屋の担当として出しました。ですから、宝石のことは分かりますし、接客にも慣れています。それでも研修に45日かかりました。ちゃんと一人前になるには、やはり2ヶ月以上かかります。
 しかし、最近、開業当初は、あまり忙しくない方がいいのかなと感じています。なぜかと言うと、例えば、うどん店の場合、まだオペレーションに慣れていない、開業間もない頃に、一番お客様がいらっしゃるわけです。そうしますと、不慣れな上に忙しいから当然うまくいかないんですよ。必ずと言っていいほどクレームが出ましたね。
 生澤:美容室では、一人の美容師さんを確保するためにそれなりの経費をかけるんです。そして美容師さんに入ってきていただいたら、今度は長く気持ちよく働いていただけるように、コミュニケーションをしっかり取って、いろいろな相談事にものっていきます。快適に仕事をしていただくためには、その方の置かれている状況をいつも把握していなければいけないのです。だからこそ、私どもの美容師さんの定着率が良く、事業も伸びていると思います。
 これだけ手間をかけますから、大手はまず参入できないですよね。美容師さんの定着率を上げるために必要なのは、管理ではなく、美容師さんたちと密接な関係を築くことしかないですから。そうした点からも、誰もが始められる事業ではありませんので、競合も登場し難いですよね。1店1店時間をかけて作っていくしかないので、これが参入障壁となっています。それだけ事業として生き残れる率は高くなるのではないでしょうか。


有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏

有限会社里沙コーポレーション:平成17年設立。フランチャイズ事業として、美容室2店舗、ハンバーガーショップ1店舗、お好み焼店1店舗経営。独自業態として焼肉店、焼き鳥店なども展開中。平成20年度年商は約4億4400万円。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏

イトイ株式会社:昭和61年設立。フランチャイズ事業として、質屋6店舗、うどん店8店舗、ステーキ店2店舗、アイスクリームショップ2店舗経営。独自業態として宝石店などを運営。平成20年度年商はイトイグループとして約30億円。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏

株式会社シャポンドゥ:昭和59年設立。フランチャイズ事業として、中華食堂2店舗、ピザ店2店舗、フライドチキン店24店舗、ハンバーグレストラン1店舗、イタリアンレストラン2店舗、コーヒーショップ1店舗経営。独自業態としてアイスクリームショップ、ベーカリーショップなども展開中。平成20年度年商約24億円。

<第2回に続く>

不況下を生き抜く!加盟店の知恵~フランチャイズ選びと伸ばし方のコツ
執筆者:加盟店オーナー座談会(松本陽子)

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞った Webサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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