連載コラム

第2回 情報収集とリスクの下げ方

[ 2010年2月9日 ]

 ますます厳しさが増す日本経済。この状況下で敢えてフランチャイズに加盟し、脱サラ・独立、転業、多角化を目指す場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
 長年、多様なフランチャイズ事業を展開し、困難な局面も乗り越え、事業を伸ばしてきた3名の加盟店オーナーに、座談会形式でご意見を伺ってみました。ここから、フランチャイズ事業を選ぶ際の着眼点、リスクの下げ方、従業員との信頼関係の築き方など、加盟店として生き抜く知恵を学び取ってください。

全体写真

《座談会ご出席者》(順不同)
生澤 幹雄 氏(有限会社里沙コーポレーション 代表取締役)
糸井 繁夫 氏(イトイ株式会社 代表取締役社長)
清水 道夫 氏(株式会社シャポンドゥ 代表取締役社長)
コーディネイター:松本 陽子 氏(ツーウェイコミュニケーションズ 代表)

情報収集のコツと注意点

―――フランチャイズ事業を始めようとする場合、一般的に、まずは、インターネットや各種マスメディア、「フランチャイズ・ショー」のような展示会などで、どういったフランチャイズがあるのか、各フランチャイズの特徴はどのようなものかなどを調べます。そして調べた中で興味をひかれたフランチャイズがあれば、さらに、フランチャイズ加盟店に足を運んでみたり、加盟店オーナーに話を聞いたり、本部関係者と会うなどして、情報収集を深めていきます。こうした一連の情報収集を的確に行っていくための、注意点やコツをお聞かせください。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏
イトイ株式会社代表取締役社長
糸井繁夫氏

 

 糸井:私は、ショッピングモールの関係者に、今どんなフランチャイズが流行ってるか聞きますね。関係者に聞くのが一番いいです。
 生澤:「フランチャイズ・ショー」は、出展社数が多いから、迷ってしまいますよね。だから、「フランチャイズ・ショー」を利用するなら、自分に何が向いているか考えて、ある程度チェックするフランチャイズを絞り込んでから行くべきでしょうね。
また、フランチャイズへの加盟を検討する材料として、売上など、店舗運営に関連するデータを知りたいところです。これに関しては、本部が参考資料として出してくるデータに加え、実際に店舗を運営している加盟店オーナーさん達の生のデータも欲しいですよね。
ですから、現役のオーナーさんたちに会う機会を作り、フランチャイズへの加盟検討中であることを伝えた上で、データについて教えていただけないかお願いしてみることも必要です。ずうずうしいようですが、やはり加盟前の情報収集は、そのぐらい熱心に、取り組むべきだと思いますね。「お前、何だよ」と言われるかもしれませんが(笑)、相手のオーナーさんもある程度は教えてくれるんじゃないでしょうか。
オーナーさんに会う機会は、自分で作れます。フランチャイズ本部に頼んで、オーナーさんを紹介してもらってもいいでしょうし、アポなしで直接お店を尋ねてみてもいいでしょう。私自身、本部の紹介やアポなしで、多くのオーナーさんたちに会って、加盟前に情報収集してきました。
―――生のデータは、ネットやマスコミ経由では手に入りませんから、自らの足で集めていくしかありませんね。店舗のデータは、そうした努力に値する貴重な情報でもあります。

有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏
有限会社里沙コーポレーション代表取締役
生澤幹雄氏

 生澤:そうです。言葉は悪いですが、結局、商売には博打みたいなところがあるんですよ。どこかで思い切って、決断しなければなりません。では、どうやって決断するかが問題になります。私は、データを見て決断するしかないと思います。本部が出してくるデータ、加盟店のデータを見て、それぞれの数字の伸び具合などをチェックしていくしか方法はないと考えてます。それしか、客観的に事業の成長性を確認する方法がないですから。自分はこの商品が好きだとか、この店の雰囲気が気に入ったという、個人の感覚的なものは、事業の成長性とはあまり関係ないと思います。データを集めるとすれば、過去3年~4年間くらいのものがいいですね。
さらにもう1点、私が本部関係者に会う時、注意している点を付け加えておきます。本部社員については、キビキビしていて礼儀正しいかどうかチェックします。本部代表については、事業に対する情熱を感じられるかどうかに注意しています。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏
株式会社シャポンドゥ代表取締役社長
清水道夫氏

 清水:私は、フランチャイズに関する本を読むことから始めました。それから、実際にお店に行ってみたり、フランチャイズをテーマにした勉強会、セミナーに参加しました。そのあとはそれほど検討することもなく、とにかく自分の直感で、いいと思ったフランチャイズを選び、取り組んできました。いったん事業を始めたら、少々悪くてもやり続けるという感じですね。
また、私の場合は本業がフード関連業で、フランチャイズも飲食分野のものを手掛けています。ですから本業の取引先が、貴重な情報源になっています。自分の関わっている業界と関連するフランチャイズであれば、情報はいろいろなところから入ってくる感じがします。
糸井:情報収集は、携帯電話と同じですよね。フランチャイズをやりたい人間が、自らスイッチを入れて、電波を受ける体制を作れば、情報は入ってきます。
生澤:そう、自分からアクションを起こさなければいけませんよね。

事業のリスクを下げるには?

―――現在、景気は低迷し、事業を始めるには厳しい状況です。この状況下でフランチャイズに加盟し、事業をスタートさせる場合、できるだけリスクを下げるとすれば、どういった点に注意すべきでしょうか。
 糸井:脱サラなど、個人で開業されるなら、やはり、一店舗目は必ず自分が店に入り、運営することですね。自分が入れば、人件費などの経費も抑えられますから、多くのフランチャイズの場合、失敗のリスクは下げられると思います。あとは、良い店舗物件をしっかり見極めることです。
また、自助努力が非常に重要です。フランチャイズだからといって、本部がすべてやってくれると思ったら大きな間違いです。成功するには、本部のスーパーバイザーよりも、自分の方が事業に精通することが必要です。そうなるように努力しなければなりません。私どもも、そうした努力を重ねてきました。その結果、抜きん出た売上を出せるようになりました。例えば、私どもで運営するうどん店は、1時間あたりの売上が14万円を越えています。430円のうどんを売るチェーンの中で、これだけの数字を出しているのは私たちだけなんです。
最後に、基本的なスキルを磨くことを挙げましょう。このスキルとは、人間関係の築き方です。これは、本部や店舗スタッフとうまく付き合っていくために必要なものです。これは、フランチャイズ事業に関わらず、いろいろな場面で役立ちます。加盟、開業される前に、普段の仕事で、このスキルを磨いておかれた方が良いと思います。
―――同じフランチャイズに加盟しても、どれだけ自助努力するかで、結果は大きく異なります。リスクを下げ、成功に近づくには、なによりも自ら積極的に努力していくことが不可欠ですね。ところで、法人がフランチャイズ事業に参入する場合の注意点は、何かありますか。
糸井:本業が厳しい状況で、フランチャイズ事業を始めるのは、避けたいです。やるとすれば、フランチャイズ事業に転業して、これに賭ける形でしょう。この場合、立地の良い自社物件があれば、経費がかからないので理想的です。
本業を辞めて、新しい事業にシフトするには決断力が必要です。厳しい現状を客観的に見ることができれば、転機が見え、決断できます。だから転機が見える人間は、成功します。でも大半は見えないのです。だから決断できないままに衰退してしまうのです。冷静に自社の置かれた状況を見つめていただきたいですね。
また、法人の場合、新事業を任せた社員に、左遷されたようなイメージを与えないよう気を配らなければなりません。新事業についての説明にも気をつけて、社員の気持ちの切り替えがちゃんとできるよう配慮することです。ここで手を抜くと、士気が落ちます。
―――フランチャイズに加盟、開業して、なんとか1号店の経営を軌道に乗せた後も、手堅い経営を目指すなら、さらに事業リスクを下げていかなければなりません。その方法として、2号店、3号店と出店し、店舗数を増やしていったり、全く別のフランチャイズに新たに加盟するといったことが考えられます。このような多店舗化、多業態化を進めるうえでの注意点はありますか。
生澤:多店舗化に関して言いますと、1号店がすごくうまくいった人ほど、2号店を安直に出して失敗するケースが目立ちます。2号店目の立地条件など、調査もせずに出店し、失敗しています。2号店が駄目になると、これに足を引っ張られて1号店も駄目になってしまいます。ですから、1号店が成功したら2号店目の出店は、1号店よりももっと慎重に、進めなければなりません。2号店がうまくいけば、3号店がそんなにヒットしなくても、非常に悪い成績でない限りは、何とかやっていけます。
また、多業態化については、資金力などの点で、余裕があるうちに次の一手を打つことです。私が脱サラして最初に手掛けたのが、弁当店フランチャイズの店なんです。そして、まだ余裕があるうちに、第2の事業として、ハンバーガーショップのフランチャイズに加盟しました。それで、弁当店業界が厳しい競合状態に陥った時も乗り切れました。
糸井:加盟者にとってのメリットをより大きくするなら、最低3店舗は出したいところです。ところがある程度成熟したフランチャイズの場合、既に多くの加盟店があります。それで、2号店を出そうとしても、もう場所がないため、出店できないことがあります。だから、出店する時にはスピーディーに、次々店を出していった方が良いです。私は質屋を2年で6店舗出しました。今年は5店舗出します。
生澤:私は、いつもフランチャイズチェーンがちょうど成長期の時に、加盟してきました。
―――成長期であれば、出店場所にも余裕があるため、スムーズに多店舗化できます。将来、多店舗化することを考えると、加盟前に、フランチャイズが、成長のどの段階にあるかを見極めておくことも必要ですね。

有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏

有限会社里沙コーポレーション:平成17年設立。フランチャイズ事業として、美容室2店舗、ハンバーガーショップ1店舗、お好み焼店1店舗経営。独自業態として焼肉店、焼き鳥店なども展開中。平成20年度年商は約4億4400万円。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏

イトイ株式会社:昭和61年設立。フランチャイズ事業として、質屋6店舗、うどん店8店舗、ステーキ店2店舗、アイスクリームショップ2店舗経営。独自業態として宝石店などを運営。平成20年度年商はイトイグループとして約30億円。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏

株式会社シャポンドゥ:昭和59年設立。フランチャイズ事業として、中華食堂2店舗、ピザ店2店舗、フライドチキン店24店舗、ハンバーグレストラン1店舗、イタリアンレストラン2店舗、コーヒーショップ1店舗経営。独自業態としてアイスクリームショップ、ベーカリーショップなども展開中。平成20年度年商約24億円。


<最終回に続く>


不況下を生き抜く!加盟店の知恵~フランチャイズ選びと伸ばし方のコツ
執筆者:加盟店オーナー座談会(松本陽子)

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞った Webサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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