連載コラム

最終回 加盟者としての自助努力

[ 2010年3月1日 ]

 ますます厳しさが増す日本経済。この状況下で敢えてフランチャイズに加盟し、脱サラ・独立、転業、多角化を目指す場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
 長年、多様なフランチャイズ事業を展開し、困難な局面も乗り越え、事業を伸ばしてきた3名の加盟店オーナーに、座談会形式でご意見を伺ってみました。ここから、フランチャイズ事業を選ぶ際の着眼点、リスクの下げ方、従業員との信頼関係の築き方など、加盟店として生き抜く知恵を学び取ってください。

全体写真

《座談会ご出席者》(順不同)
生澤 幹雄 氏(有限会社里沙コーポレーション 代表取締役)
糸井 繁夫 氏(イトイ株式会社 代表取締役社長)
清水 道夫 氏(株式会社シャポンドゥ 代表取締役社長)
コーディネイター:松本 陽子 氏(ツーウェイコミュニケーションズ 代表)

店舗スタッフと信頼関係を築くコツ

―――店を実際に回してくれるのは、店舗スタッフです。彼らにしっかり働いてもらうためには、お互いを信頼しあえるようにならなければなりません。スタッフとの信頼関係作りで心掛けている点をお話しください。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏
イトイ株式会社代表取締役社長
糸井繁夫氏

 糸井:私は3ヶ月に1回ぐらいのペースで、社員を連れて飲みに行ってるんです。その場で、仕事の話をする時もあります。例えば、チラシ配りがテーマだとしましょう。チラシをただ配るよりは、このチラシがお客様を呼び、売上が上がることを意識して配った方が、チラシ配りにも力が入り、効果も上がります。ですから飲みながら、「48,000円でチラシを作って、6,000枚配れば、お客様が必ず来るよ。すると売上が上がるじゃない。だから配ろうよ」といったことをちくりちくりと話していきます。そうすることで、社員にチラシ配りの目的をしっかり考えてもらい、モチベーションを上げるわけです。若い人と飲んでいるわけですから、話なんか合いませんよ(笑)。娘がいるので、事前にリサーチはしていきます。
 その代り、現場で売上の話はまずしません。特に売上が伸び悩んでいる店舗ではしません。毎日売れなくて厳しいのに、改めてそれを指摘しても可哀想なだけです。売れないのは経営者の責任ですから。経営者の仕事は、いい場所を選んで、店を出し、そこに働きやすい環境を作ることです。売上の話をするなら店長にします。
 働きやすい環境を作るという点については、私どもの店では労働時間も規定内です。時々、店長の長時間労働で利益を出している店の話も聞きますが、それでは人が定着しません。まずはきちんとした環境を整え、それから社員に情をかけて、関係を深めていくのが良いです。全体として見ると、企業ですが、1つ1つの店を回すに当たっては、家業の感覚で、社員と密な関係を築いています。こうしたことを重ねることで、社員から私への評価、信頼が得られるのだと思います。
 清水:私どもでは、本部の社員教育プログラムを利用しています。そのプログラムを自分たちに合うよう、調整しながら使って、社員との関係を築いています。また、懇親会などを開き、コミュニケーションの機会を増やし、信頼関係を育むようにしています。
 生澤:私のところはまだ店舗数が少ないですから、信頼関係は、日々のコミュニケーションで築いています。毎日、店に顔を出しては、こまめに話をしていますね。美容室については、技術に関する教育は店長にお任せしています。私は、それ以外のマネージメントと、働きやすい環境作りに集中しています。

加盟者の知恵と判断力が問われる時

―――フランチャイズ事業では、基本的に、本部が、その知識や経験をもとに、加盟店の経営を指導します。ですから逆に、本部がそれまで出店したことのないような地域や立地に、加盟店を出店する場合、本部だけに頼っていては、適切な判断が難しいことも出てきます。このような時は、加盟者も積極的に知恵を出し、本部と協力しながら、答えを見つけていく必要があります。皆さんは、このようなご経験がありますか。そうしたケースでは、どのようにして対応されたのかお話しください。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏
株式会社シャポンドゥ代表取締役社長
清水道夫氏

 清水:多くの本部は、東京にありますから、地方で出店する場合、本部のノウハウがそのまま当てはまるとは限りません。最終的には実際に店を出してみないと、分からないところがあります。その状況で事業のリスクを下げるためには、加盟者自らも研究して適切な判断をしていくしかないですね。フランチャイズ事業であれ、事業が上手くいくかどうかは結局本部ではなく、自分たちの責任ですから。
 私たちの場合、コンビニチェーンの店を研究対象にしました。地元、福島では大手コンビニチェーンが圧倒的なシェアを持っています。その立地選びや、店作りなどは素晴らしいもので、これらを研究し、自分たちの店舗運営の参考にしたのです。例えば、住宅街のどのあたりに店を出しているかとか、駐車場の作りや広さなど、ずいぶん役立ちました。
 また試行錯誤する中で、いろいろな経験を積みました。同じ店舗物件で、たこ焼き店を開いても上手くいかなかったのに、フライドチキン店に変えたら良くなったこともありました。その反対もありましたね。業態を変えるだけで、どこにこんなに人がいたのだろうというぐらいお客様が集まってきたこともあります。こうした経験でかなり鍛えられ、どんな物件にも適した業態があることが分かってきました。
 糸井:質屋のフランチャイズに関して言えば、私どもの路面店が、フランチャイズチェーン初の路面店なんです。それまでチェーンとして、路面店は出店していなかったんですよ。
 その店は、高級車の販売店や、私どもの宝石店の本店が並ぶ一等地にあるんですね。本部は当初、そのような一等地に路面店を出すという前例がなかったので反対したんです。でも私はイケると考えましたので、何度も話し合いを重ね、納得してもらいました。それで私は、店の看板も1500万円かけてド派手なのを作ったんです(笑)。この店が当たったんですね。この店の成功があってから、フランチャイズチェーンとして路面店形式の質屋も出店するようになりました。
―――本部の了解を得ることはもちろん必要ですが、ここぞという時には、加盟者自らの判断を信じ、意見を通すことも大事でしょう。結果が出せれば、自分たちは利益を手にできるし、本部やフランチャイズチェーン全体にも貢献できます。結局のところ、店舗の成功は加盟者自身にかかっています。この点を忘れず、加盟者自ら、日常的に経営力を磨いていく必要があります。

加盟希望者へのアドバイス

―――最後にこれから初めてフランチャイズに加盟する方へのアドバイスをお願いいたします。
 糸井:景気がいい時のフランチャイズ加盟と、今後2~3年の景気が悪い時の加盟とでは、儲けもかなり違うと思います。ですから私もかなり慎重になっています。そうした意味では、ここ1~2年はしっかり社会状況を見極めたり、本部や現役の加盟店オーナーに会いに行って、情報収集に力を入れた方が良いかもしれません。
 私どもも、もし、フランチャイズ加盟を検討されている方が、訪ねて来られるようなことがあれば、フランチャイズ事業経験者としてきちんとお話しします。せっかく尋ねてきてくれた方に対しては、礼を持ってお返しします。お話を伺って、フランチャイズ加盟はやめた方がいいと思えば、必ずそのようにお伝えいたします。
 確かに、良いフランチャイズはあります。自分たちも、そのおかげで商売させてもらっているわけです。ただ、フランチャイズ事業を始めるに当たり、気をつけるべきことが、たくさんあるのも事実です。だからこそ情報収集に力を入れていただきたい。私たちのように、複数店舗を経営しているフランチャイズ加盟者は、地方にもいますから、身近なところでそうした先輩を見つけ、会って話を聞いてみるのが良いでしょう。
 また、時代とともに物事は変わっていくものです。何事にも寿命があるということを覚えておいてください。フランチャイズに加盟したから、一生食べられるとは限らないのです。加盟した時は、伸び盛りのフランチャイズも、いずれこれ以上店舗を出す場所がないという時が来るものです。そうなったとき、さらなる成功を求めるなら、加盟者は、次にヒットするフランチャイズを探しにいかなければなりません。
 清水:事前準備が大事です。目当てのフランチャイズの店で、アルバイトをして、そのフランチャイズが自分の性に合っているかなどを確認するのもいいでしょう。情報収集すれば必ずチャンスは見えてくると思います。

有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏
有限会社里沙コーポレーション代表取締役
生澤幹雄氏

 生澤:この1年間はしっかり勉強なさることですね。また、これはと思うフランチャイズがあったら、そこの店にアルバイトとして入ってみて、自分の身体を使ってフランチャイズ事業そのものを経験していくのが良いと思います。この点は清水さんと同じ意見です。中に入ると、お客様の反応や、売上なども当然わかりますから。そうした経験や知識から、どのフランチャイズを手掛けていくべきかが見えてくると思います。
―――本日は貴重なお話をありがとうございました。


 景気低迷は、長引く気配を見せており、事業を始めるには、厳しい状況です。しかしその一方で、不況が追い風となって伸びているフランチャイズもあります。また、不況下では、家賃が下がる、良い人材が集まりやすいなど、事業を始める上で、プラスになる条件もあります。今回の座談会を参考に、まずはじっくり情報収集をして、自ら、もしくは自社に最適なフランチャイズを探し出し、タイミングを見て新たな一歩を踏み出したいところです。地道に努力を重ね、ピンチをチャンスに変えていきましょう。




有限会社里沙コーポレーション代表取締役 生澤幹雄氏

有限会社里沙コーポレーション:平成17年設立。フランチャイズ事業として、美容室2店舗、ハンバーガーショップ1店舗、お好み焼店1店舗経営。独自業態として焼肉店、焼き鳥店なども展開中。平成20年度年商は約4億4400万円。

イトイ株式会社代表取締役社長 糸井繁夫氏

イトイ株式会社:昭和61年設立。フランチャイズ事業として、質屋6店舗、うどん店8店舗、ステーキ店2店舗、アイスクリームショップ2店舗経営。独自業態として宝石店などを運営。平成20年度年商はイトイグループとして約30億円。

株式会社シャポンドゥ代表取締役社長 清水道夫氏

株式会社シャポンドゥ:昭和59年設立。フランチャイズ事業として、中華食堂2店舗、ピザ店2店舗、フライドチキン店24店舗、ハンバーグレストラン1店舗、イタリアンレストラン2店舗、コーヒーショップ1店舗経営。独自業態としてアイスクリームショップ、ベーカリーショップなども展開中。平成20年度年商約24億円。

不況下を生き抜く!加盟店の知恵~フランチャイズ選びと伸ばし方のコツ
執筆者:加盟店オーナー座談会(松本陽子)

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞った Webサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

バックナンバー

PAGE TOP