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連載コラム

第1回 脱サラ事例:「独立の夢を酒のさかなで終わらせては一生後悔する。思い切って辞表を出しました」(アライヴマネージメント代表取締役 田中裕之氏)

[ 2012年1月16日 ]

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 (アライヴマネージメント代表取締役 田中裕之氏)


 株式会社アライヴマネージメント代表取締役 田中裕之さん。34 歳で脱サラを決意。ラーメン店フランチャイズに加盟して、現在、ラーメン店5店舗を展開中です。正社員7名、パート・アルバイトスタッフ約50名、2010年度年商2億2,500万円。田中さんのフランチャイズの選び方、一号店を軌道に乗せるまでに直面した課題などを中心に伺いました。

「自分を追い込んで独立を実現しよう!」思い切って辞表を出す

――独立のきっかけからお聞かせください。
田中 直接のきっかけは、独立するなら心身共に充実している30代の今しかないと考えたことです。営業マンとして、上司に文句を言われながら、夜中の12時、1時頃まで頑張って働いても、同僚の人数が多いのでそうそう出世できない。会社の方針があるから、自分の思うように仕事ができない。会社員時代は、先の見えた雇われ人生を送りながら、飲みに行っては、ずっと思い描いてきた独立について熱く語っていました。でも語っているだけでは、夢は酒のさかなで終わってしまい、自分は一生後悔する。馬力のある30代の今なら、自らを追い込んで独立を実現できる。それで、まだ何をやるか決めていなかったのですが、思い切って辞表を出しました。
――ご家族の反応はいかがでしたか。
田中 子供はまだ2歳と4歳。妻は普通なら反対するところですが、「仕方ないわね」と受け入れてくれました。やりたいことを我慢できない私の性格を理解してくれていました。

「これが、うちのフランチャイズの現実です」誠実な本部との出会い

――退職後、本格的にフランチャイズ選びを始められました。どうやって選びましたか。
田中 5社~6社ぐらいのフランチャイズをネットや雑誌で調べ、本部を訪ねました。一番重視したのは、本部の印象。調べれば、ちゃんとしたフランチャイズかどうかは分かりますが、自分が取り組んで成功できるかどうかまでは分かりません。最後は直感で決めるしかない。それで、訪ねてみた時の本部の印象で選ぼうと思いました。
――最終的にラーメン店フランチャイズを選ばれました。どういう印象だったのでしょう。
田中 誠実な感じでした。コンビニ、弁当店、はんこ屋などの本部を巡り、最後に訪ねたのがラーメン店本部。対応してくれた若い担当者は、全店の売り上げを見せながら淡々とフランチャイズの現状を話しました。「加盟店の平均月商は550万円。月商1,000万円を超える店もたくさんありますが、平均月商に達しない店もあります。これが現実です」。正直だなと思いました。他の本部はいい話ばかりで、数字は出しても平均値だけ。担当者の態度は、本部の態度を反映しているものです。この担当者が所属する本部なら信頼できると、加盟を決めました。
――5社~6社を比べて、初めてラーメン店本部の誠実さが分かったわけですね。
田中 ええ。平均値しか見せない本部を1社~2社訪ねて終わっていたら、どのフランチャイズも、そんなものなんだろうと思っていたでしょう。

「資金調達は加盟者の仕事」開業資金を自力で準備する

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(「最後は妻の両親に頼み、開業資金を準備しました」)

――田中さんは、一号店開業から4年目に2号店を出店されました。そこで開業から3年間を、加盟を決めてから一号店を軌道に乗せるまでの期間として考え、この間に出会った主な課題について、お聞かせいただきたいと思います。最初の課題はなんでしたか。
田中 資金調達です。開業には約3,000万円かかりました。そのうち1,000万円はリースを組み、残り2,000万円を開業資金として準備することになりました。2,000万円のうち、500万円ぐらいは、貯金から、退職金、保険の解約返戻金(※:かいやくへんれいきん)、子供のお年玉に至るまで、手持ちの金を全てかき集めて用意しました。不足分1,500万円は本部が貸してくれると思っていたんですが、本部から「資金調達は加盟者の仕事。自力で調達してください」と言われて...。

※解約返戻金:保険契約の解約、失効時に、保険契約者に払い戻される金。

――1,500万円の借り入れは大きいですね。当てが外れて、慌てたのでは。
田中 いいえ。独立を決意した時に、何があっても前に進もうと腹をくくっていましたから。「そういうことなんだ」とすぐ気持ちを切り替えました。加盟者研修を受けながら資金を集めなければならなかったので、手間と時間を節約するために、資金調達コンサルタントに依頼しました。それでも金融機関から満額を借りられず、最後は妻のご両親に頭を下げて不足分を借り、やっと開業資金2,000万円を準備しました。
――資金調達の次に出てきた課題は何でしたか。
田中 自分の店用のマニュアル作りです。本部のマニュアルは、店舗運営の基本についてです。だから、自分の店に合わせた、きめ細かい店舗運営をきっちり決めた方が、円滑に店を回しやすい。そこで本部のマニュアルを踏まえつつ、例えば、いつ、どれぐらい、どんな方法で仕込み、どんなチェックをするかなどをまとめた仕込みマニュアルや、接客、清掃マニュアルなど、自分の店用マニュアルを作りました。

ミスをしたバイトを叱っても、店は暗くなるし、バイトは辞めるだけだった

――ここまで一号店を軌道に乗せるまでの主な課題として、資金調達、自分の店用マニュアル作りを挙げていただきました。そのほかに課題はありましたか。
田中 行動の指針を決めることです。うちの行動の指針は「明るく、楽しく、元気よく、どんなときも」に決めました。これが、開業から3年間で得た一番重要なものです。
――行動の指針ができてから、店舗運営にどのような変化がありましたか。
田中 アルバイトスタッフ(以下スタッフ)が、楽しく働いてくれるようになりました。行動の指針ができる前は、例えば、店が込み合って厨房がピリピリしている時に、スタッフが皿を割ったりすると、私は「何やってんだ!」と怒っていました。怒られたスタッフから笑顔は消えるし、店の雰囲気は暗くなるし...辞めてしまうスタッフもいました。これでは店舗経営はうまくいかない。まずはスタッフが楽しく働ける店でなければならない。そこで、どんな状況下でも、スタッフが楽しく働けることを第一に考え、行動するよう、「明るく、楽しく、元気よく、どんなときも」という行動の指針を決めました。それからは、スタッフが皿を割っても、「大丈夫?けがはない?」と声をかけるようになりました。
――現在、田中さんは5店舗を展開中です。店長など店を直接管理する社員にも、行動の指針を順守してもらう必要があります。どうやって指針を社員に浸透させていますか。
田中 ことあるごとに行動の指針を繰り返し伝え、浸透させています。スタッフ管理の細かいマニュアルはないので、何かあると、社員は行動の指針に沿ってその都度考え、対応します。今では、店舗側のスタッフ第一という考えがスタッフに伝わっているので、スタッフも喜んで一生懸命働いてくれます。おかげで、店の明るさ、活気について点数を付けるなら、70点~80点は取れる店になっています。
――行動の指針「明るく、楽しく、元気よく、どんなときも」が、5店舗の順調な運営を支えていますね。それでは、最後に独立を考えている読者へのメッセージをお願いします。
田中 独立を考えているなら、ぜひ実行してください。雇われていると、自分に関わる部分だけに注意を向けがちですが、独立して経営者になると全体を見渡すようになり、視野が広がります。これまで気づかなかったことも見えてきます。それは人生の充実につながります。また、独立の成功には行動の指針が必要です。ちゃんと決めて、これに沿って店を回すようにしてください。
――ありがとうございました。

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(「独立して視野が広がり、人生が充実しました」)

執筆者:フランチャイズ選びから、一号店を軌道に乗せるまで

松本陽子
ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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