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連載コラム

第76回 加盟者事例(19)「店舗を増やせたのは、他に先んじて、立地条件のいい店舗を押さえたから (株式会社ぶんコーポレーション 代表取締役 中野 文治さん)

[ 2015年4月27日 ]

福岡で39店舗のフランチャイズ加盟店を運営する一方、独自業態のベーカリーショップを売り上げの柱にまで育てた中野さん。いい物件を押さえるコツ、フランチャイズと比べた独自業態の善し悪しなどを伺いました。

飲食店フランチャイズ事業8業態、独自業態の店舗など合計58店舗を展開中

ぶんコーポレーション代表取締役 中野 文治氏
ぶんコーポレーション代表取締役 中野 文治氏

――まず、ぶんコーポレーションの概要をお聞かせいただけますか。

中野 弊社は1990年設立。福岡市を拠点に主に飲食店事業を手掛けてきました。
フランチャイズ事業については、ドーナツショップ「ミスタードーナツ20店舗、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー9店舗、ソフトプレッツェル専門店「Auntie Anne's (アンティ・アンズ)3店舗など8社の飲食店フランチャイズに加盟、合計39店舗の加盟店を運営しています。業務提携店、独自業態店舗を加えると総店舗数は58店舗になります。

2015年4月現在、グループ会社1社分も含み、正社員93名、パート・アルバイトスタッフ約1,200名、2014年度グループ年商約38億6,000万円です。私は平日は本社で仕事をしていますが、週末は店舗を見て回っています。

――どういうきっかけで、フランチャイズ事業に参入されましたか。

中野 実は、私は120年続く駅弁屋の次男坊。
家では、駅弁屋の他にイタリアン、宅配弁当、ミスタードーナツなどの飲食事業も手広く手掛けておりまして、私はずっと家の事業を手伝っておりました。39歳で家から独立するにあたり、当時好調だったミスタードーナツの加盟店2店舗を家から譲り受けました。これが、弊社のフランチャイズ事業の出発点です。

いい物件は繁盛店の第一条件。他に先んじて、いい物件を手に入れるコツとは?

ミスタードーナツ20店舗を運営
ミスタードーナツ20店舗を運営

――ミスタードーナツは2店舗からのスタートだったとはいえ、20店舗まで出店するには多くのご苦労があったと思います。

中野 ええ。弊社でミスタードーナツを始めた頃は、ミスタードーナツは伸び盛りでしたから、福岡市内の加盟者同士の出店競争が激しく、いい物件の争奪戦状態でした(笑)。大きなショッピングモールの担当者から、『うちがオープンする時、いろいろなファストフードショップから問い合わせがあったけれど、何人もの人がアプローチしてきたのはミスタードーナツさんぐらいだ』と言われたこともありました。

飲食店の成功は、店舗の立地に大きく左右されると言われます。中でもドーナツのような嗜好品の場合、わずかな立地の差で大きな影響が出ます。ドーナツ店は、メインストリートからたった50メートル奥まったところにある店舗でさえ、売り上げが伸び悩む。お客様は、わざわざ50メートル歩くぐらいなら、ドーナツはやめてメインストリートにあるコンビニのアンパンを選ぶから。立地のハンデをカバーしようと、優秀な店長を置いてもダメ。やっぱり売り上げは今ひとつ。おまけに優秀な店長ほどつぶれるのが速いから、ますます悪い結果に。ドーナツ店は立地で妥協できないから、加盟者が、いい物件の獲得に鎬を削るのも不思議ではないんです。私もいい物件の確保に力を入れました。

――中野さんがミスタードーナツを20店舗まで拡大されたのは、機先を制していい物件を確保できたからだと思います。どうやってライバルに先んじて、いい物件を見つけましたか。

中野 物件情報として広く一般に紹介される前に、いい物件を得られるよう、自分で足を使って探しました。例えば、『福岡の天神に出店する』と出店エリアを決めたら、狙ったエリアを一週間に一回、私自身が歩き回ったんです。歩いていると、アパレルショップが退店したビル、空き店舗らしい物件、取り壊し中のビルなどが目に入ってきます。これらの中から、良さそうな物件が見つかれば、店舗の周囲の交通量を調べたり、ハンバーガーショップやフライドチキン店など周囲の競合店の状況やミスタードーナツの既存店とのバッティングなどをチェックして、候補物件を絞り込んでいきました。

自分で物件を見つけるには、どういう立地なら繁盛するかを知らなければなりませんから、物件探しと並行してミスタードーナツの繁盛店をあれこれ見に行き、立地条件の研究もしました。

――今も足を使った物件探しを続けていらっしゃいますか。

中野 いいえ。足を使って探したのは15店舗ぐらいまで。
このくらいの店舗数になってくると、いい物件情報が外部から持ち込まれるようになるんです。デベロッパーやフランチャイズ本部はもちろん、大手ショッピングモールの担当者から直接『今度新しいモールが○○に出るんですが、出店していただけませんか』と声が掛かるようになりました。

運営する店舗数が一定以上になると、物件には苦労しなくなりましたが、ミスタードーナツに続く新しい業態探しに時間を取られるようになりました。

ベテラン社員への配慮もあり「ハンバーグレストラン」に加盟

――御社の売り上げの柱は、フランチャイズ2業態とオリジナル1業態の3業態と伺いました。フランチャイズ2業態はドーナツショップ「ミスタードーナツ」とハンバーグレストラン「びっくりドンキー」です。まず、「びっくりドンキー」を手掛けることになった経緯をお聞かせください。

中野 びっくりドンキーは、「安い・うまい・雰囲気も良い」店なので、口コミで集客できる点に加え、比較的お客様の少ない時間帯「アイドルタイムがある点も良かった。アイドルタイムに、店長が休憩できますから。それで加盟しました。
ミスタードーナツを長く続けていると、経験豊富な店長が育つ反面、店長は年齢を重ねてゆきますから、若いアルバイトスタッフとのジェネレーションギャップが出てくる。体力的にも、40代でミスタードーナツの店長はキツい。ミスタードーナツのベテラン店長を、びっくりドンキー店長に抜擢すれば、ベテラン店長はアイドルタイムに体を休めながら、身に付いた知識や経験を生かせると考えたんです。

オリジナル業態のベーカリーショップ、売上の柱の一つにまで成長

オリジナル業態のベーカリーショップ
オリジナル業態のベーカリーショップ

――次に、オリジナル業態のベーカリーショップについて伺います。
飲食店フランチャイズ加盟者から「フランチャイズで学んだことを生かして、いずれはフード関連のオリジナル業態を始めたい」との声をよく聞きます。独立志向の社員の離職防止策として、オリジナル業態を社員に任せる加盟者もあるようです。実際、オリジナル業態店を出店している加盟者は珍しくありませんが、これを売上の柱にまで育てるのは難しいと言われています。中野さんの場合は、フランチャイズと比べ、はるかに手の掛かるオリジナル業態をどうして始められたのでしょう。

中野 規則で縛られるフランチャイズにストレスがたまっていたんです(笑)。
『この商品価格は、地元のお客様には高過ぎる』と思っても変えられない。ポスターを貼る場所さえ制限される...。加盟者ですから本部の指導に従いますが、おもいっきり自らの創造力を発揮して事業を始めたくなった。会社は、主に3つの事業で支えようと考え、その内2つはミスタードーナツとびっくりドンキーのフランチャイズ事業に決めた。会社もそれなりに安定しているし、残りの一つはオリジナル業態でいこう。長年、加盟者として学んだものを投入して独自業態を始めようと決意しました。

――ベーカリーショップ事業の概要を教えてください。

中野 店舗の基本は、店で粉から生地を仕込みパンを焼き上げる、郊外型の焼きたてベーカリーショップ。70坪~80坪の店舗に置いた石窯でパンを焼きます。あるコンサルタントの方の指導を受けながら、店舗を立ち上げました。ベーカリーショップは現在7店舗。売り上げが弊社総売上の17.5%を占めています。ちなみにミスタードーナツは31%、びっくりドンキーは22%です。弊社には、ベーカリーショップを含め5つのオリジナル業態があります。オリジナル業態をスタートさせてから、ベーカリーショップが売り上げの柱になるまでに7年~8年かかりました。

フランチャイズにはないメリット「柔軟に売り方を変え、状況に即応

――オリジナル業態のメリットを挙げていただけますか。

中野 いろいろありますが、まず挙げたいのは状況に応じて柔軟に売り方を選べることです。7店舗中、店内でパンを作っているのは石窯を置いた4店舗、残り3店舗は販売に特化した8坪~13坪のサテライト店。サテライト店には、石窯付き店舗からパンを配送して販売しています。サテライト店は、石窯付き店舗に比べれば投資額も小さい。石窯付き店舗とサテライト店との組み合わせにより、投資額を抑えながら効率的に売り上げを伸ばせる。販売状況によっては、車にパンを積んで移動販売をしてもいい。本部の規則に従わなければならないフランチャイズに比べ、その時々の店舗の状況に最適な売り方を選べるから、無駄のない店舗運営ができます。

そしてもう1点挙げるならロイヤルティがないこと!
これは大きい。フランチャイズの場合、売り上げが落ちている時でも、ロイヤルティだけはしっかりかかりますから痛いんですよね(笑)。ただし、オリジナル業態には、ロイヤルティの痛みはありませんが、別の痛みはあります。

フランチャイズにはないデメリット「多くの手間と職人依存のリスク」

――オリジナル業態ならではの痛みについてお聞かせください。

中野 非常に手間がかかるので、エネルギーを取られます。
スタッフのユニフォームから、照明器具、テーブルの大きさまで自分たちで決めなくてはいけない。『主力商品はこれだ!』と決めても、実際に売れるとは限らない。売れなかったらまた検討することに。お客様に飽きられないよう、自分たちで新商品の開発もしなければならない...。要するに、フランチャイズでは本部が担当してくれることを、自分たちがやることになるんです。

また、弊社のオリジナル業態には職人が必要ですが、何年も育てた職人がライバル店に引き抜かれることがある。これが痛い。

――優秀な職人が引き抜かれてしまうと、店舗運営にまで影響が出ることもありえます。オリジナル業態ならではの痛みですね。一方、基本的にフランチャイズは職人不要ですから、職人依存による事業のリスクはほとんどありません。
フランチャイズ事業とオリジナル業態の両方を経験されてみて、どういう加盟者がオリジナル業態に向いているとお考えですか。

中野 自分の夢を実現したい気持ちが強い、オリジナルなものを作るのが好きな加盟者でしょうか。事業の目的が、食っていくため、社員を守るためならフランチャイズを選んだほうがいい。もちろん、全てのフランチャイズが、いわゆるちゃんとしたフランチャイズとは限りませんから、加盟には注意が必要ですが。

フランチャイズ加盟を目指す人へのアドバイス

――どういう点に注意してフランチャイズを選べばいいでしょう。

中野 自ら調査することです。本部の話を聞いたら店舗を見て回ったり、加盟者に会って話を聞くことです。業績の思わしくない店舗も含め、少なくとも加盟者3人ぐらいには話を聞くべきでしょう。

今後の計画

――最後に今後の計画をお聞かせください。

中野 まず、手掛けている事業カテゴリーや出店地域を整理して、経営の効率化を図りたい。それから、オリジナル業態全体で売り上げの3割を占めるところまでもっていきたいです。また、新規の事業開発には手を抜けないので、良質なフランチャイズ加盟店の出店も前向きに検討していきます。

――フランチャイズ事業とオリジナル業態それぞれでの学びを生かして、より足腰の強い会社に成長されていかれることと思います。優れた加盟者が増えれば、フランチャイズ業界全体の底上げにもつながります。本日はありがとうございました。

注目のFC分野・制度紹介!
執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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