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連載コラム

第80回 加盟者事例(21)「誕生間もないフランチャイズに加盟してきました。大変ですがワクワクします」 (株式会社フラクタル代表取締役 富所 伸一さん)

[ 2015年8月31日 ]

脱サラから約21年。富所(とみどころ)さんは、一貫して立ち上がったばかりのフランチャイズに加盟して、自らの会社を大きく成長させました。富所さんに、富所さん流の"成長初期のフランチャイズを見極めるポイント"や成長初期のフランチャイズに加盟した時の状況などについて伺いました。

脱サラから21年で11店舗、年商約6億4,200万円

フラクタル代表取締役 富所 伸一氏
フラクタル代表取締役 富所 伸一氏

――まず、株式会社フラクタルについてお聞かせください。

富所 本社は埼玉県さいたま市に置いています。現在手掛けているフランチャイズ事業は、とんかつ・かつ丼店「かつや」2店舗、フィットネス施設「カーブス」5店舗、メロンパン専門店「メロン・ド・パーネ」1店舗です。独自開発の業態であるカフェ「常盤珈琲焙煎所」3店舗を加え、合計11店舗を運営しています。直近年商は約6億4,200万円です。

オリジナル業態「常盤珈琲焙煎所」
オリジナル業態「常盤珈琲焙煎所」

敢えて、成長初期のフランチャイズに加盟

――どういう経緯でフランチャイズ事業を始められたのですか。

富所 勤めていた頃、漠然と独立願望がありました。当時、仕事で大勢の中小企業の経営者と会う中で、フランチャイズ事業を知りました。ちょうど「TSUTAYA」や「モスバーガー」が産声を上げた時代で、フランチャイズに加盟して伸びていく企業も多く、フランチャイズ業界全体に勢いがありました。それでフランチャイズの成長性を強く感じ、独立手段としてフランチャイズを意識するようになったんです。

そうこうしているうちに、ある"おしゃれな環境志向の化粧品販売店"が誕生しました。一人の消費者としてステキな店だと思っていたところ、たまたまフランチャイズ展開をしていることを知り、『これだ!』とばかりに加盟に踏み切りました。1994年のことです。

――加盟されたのは、化粧品販売店の一号店オープから4年ぐらい。化粧品販売店は、まだ"知る人ぞ知る"状態にありました。加盟された後、そのフランチャイズは大ブレイクしました。

富所 爆発的に売れ始めたのは加盟した年の年末。15坪の店に人が溢れて大変でした。

――フランチャイズの展開初期に加盟すると、フランチャイズが成長期に突入した時、先駆者利益として大きな収益を上げられるといいます。フランチャイズが成長期に入ってから加盟していては、競合店も増えるし、事業の旨みが減るともいわれます。その反面、初期に加盟したものの、フランチャイズが伸び悩んだ場合、加盟店は厳しい状態に陥ります。富所さんはこれまで一貫して成長初期のフランチャイズに加盟されていますが、"伸びずに終わるリスク"を承知の上で、なぜそういう選択をされてきたのでしょうか。

富所 まず会社としては、弊社が手掛ける店の条件に合っていたからです。店の条件とは『こんな店が欲しかった』といわれること、お客様に長く愛されること、スタッフが生き生きと働けることの3つ。要するに、これまでになかった店を地域に定着させるのが、私どもの仕事だから、新しくて成長性あるフランチャイズへの加盟に至ったというわけです。また、私個人について言えば、上昇気流に乗って事業を行うより、流れを創りながら事業を行う方が好きなので、成長初期のフランチャイズにひかれます。

富所さん流"成長初期のフランチャイズを見極めるポイント"

――新しくて成長性あるフランチャイズに加盟されてきた結果、今日までに成長されました。まだフランチャイズの店舗数や実績が少なく、判断材料が乏しい中で、どのように歴史の浅いフランチャイズの成長性を見極められたのでしょう。

富所 個々のフランチャイズを吟味する前に、世の中の大き流れを把握するようにしてきました。いろいろなデータを集めて、自分なりに社会がどういう方向に向かっているのかを考えてきたんです。
社会の動きをつかんだ上で、各々のフランチャイズ事業のコンセプトやフォーマットが時代の流れとリンクするか、新規性があるか、参入障壁があるかの3点を確認します。時代の流れに合致しており、なおかつ新しいものであれば、成長性が期待できます。また、カンタンに真似できる事業は、あっという間に競合店ができて事業としての旨みが少なくなりがちなので、参入障壁の高さも重視しています。私の大まかなフランチャイズ選びのポイントは、こういったところです。

成長初期のフランチャイズ、マニュアルの充実度は?

――現在手掛けていらっしゃるフランチャイズは、成長性や参入障壁の高さをチェックされて加盟されたと思います。ここでは、具体的にどういう点に注目して加盟を決意されたのか、また、店舗を運営する中でどんな課題に直面したかなどを伺ってまいります。最初に、とんかつ・かつ丼店「かつや」についてお聞かせください。

富所 私の飲食店フランチャイズを選ぶ際の基本は、取り扱う商品が長く日本人に食べられてきたものであること。人は食べることについては保守的な傾向があると考えていますし、生活に溶け込んでいる食品の方が安定した需要が見込めるからです。

とんかつ、かつ丼を扱う「かつや」は、この点をクリアしていました。また、「かつや」が目指す"安い・おいしい・ボリュームあり"の商品は、どんな時代にも手堅いニーズがある反面、実現するのが難しい。難しいだけ参入障壁が高くなります。これらの点から加盟を決めました。しかし、弊社が加盟した頃は、まだフランチャイズの初期。業態の大枠はできていましたが、マニュアル類が詳細さに欠けるなど、現在のものと比べ、洗練度は低いものでした。

――「かつや」は、98年に1号店オープン、99年にフランチャイズ募集開始、富所さんは2001年8月に一号店をオープンされています。一般に、展開初期のフランチャイズは、マニュアル類の充実度が低い傾向にあるといわれます。マニュアルが詳細さに欠けると、現場は具体的にどういう点で困るものですか。

富所 「かつや」では5分以内の商品提供が原則です。満席で店内が混み合っている時でも、原則を守らなければなりません。そのためには、最も効率的な動線に沿って、厨房のどの場所にどの調理道具を置くかなど、マニュアルでスタッフの動きを細かく指示する必要があります。わずか数秒の無駄な動きで、5分以内の商品提供が難しくなるからです。加盟当初、マニュアルで詳細な点まで規定されていなかったため、スタッフの動きに無駄が出て、5分内の提供が難しくなることがありました。

成長初期のフランチャイズで、加盟店に求められること。

――スピード提供が難しくなってくると、ランチタイムなどのピーク時に客をさばききれなくなり、結果的に売り上げに影響が出ることも考えられます。まだマニュアルが完全ではない状況に、加盟店としてどう対応されたのですか。

富所 SV(スーパーバイザー)に電話して、他店の成功例を教えてもらったりなど、本部の応援を得ながら、自分たちで試行錯誤して対応しました。数週間に一度店舗に来るSVを待っていては、店を回していけませんから。

――フランチャイズの初期に加盟すると、加盟店の自助努力の割合は高くなるといわれます。ところで、「かつや」の現在のマニュアル類はいかがですか。

富所 完成度の高いものになっています。十数年かけて細かいノウハウを積み上げ、徹底的に無駄を省いたシンプルオペレーションができています。このオペレーションがあるから"安い・おいしい・ボリュームあり"の商品を継続的に提供できます。これは一朝一夕にできるものではありませんから、高い参入障壁といえます。これまで「かつや」の類似業態がいくつか出てきましたが、あまりパッとしないのは、この参入障壁が原因でしょう。

――富所さんが見込んだ通りに「かつや」は成長したようです。

フランチャイズ開始の翌年加盟して、苦労したこと

――さて、それでは次に「カーブス」についてお聞かせください。「カーブス」は2005年にフランチャイズ加盟店募集を開始、富所さんは翌年の06年に「カーブス」に加盟し、一号店をオープンしています。

富所 「カーブス」の『将来の健康のために、全ての女性に筋トレを』というコンセプトを聞いて、面白いと思いました。女性の約93%は、フィットネスクラブに行ったことがないといわれています。この人たちがクラブに通う仕組みができたら、巨大な潜在市場を掘り起こすことになる。社会貢献の面でも大きい。たまたまフランチャイズ本部の人たちをよく知っていたこともあり、経験と実績のある彼らならできると加盟を決めました。でも、はじめての加盟店を出店した頃は、フランチャイズとしての歴史が浅く、オペレーションもまだ磨きをかけるべき部分が残っている状態でしたから苦労の連続でした。

――例えば、どんな苦労がありましたか。

富所 想定を超えるご意見や苦情への対応です。
運動中のケガや、体重が減らないといった運動に関連することから、店内が暑過ぎる、寒過ぎる、駐車場、駐輪場の使い勝手など店舗自体についてのことまで、大小様々なクレーム、ご要望が次々に出てきました。「カーブス」でも「かつや」のケースと同じく、こうしたもろもろの課題に現場スタッフが知恵を出し合って、対応しました。

数字以外で成長性を見るポイント

――苦労されたということですが、一号店出店の翌月には二号店目を出店し、3年間で5店舗まで店舗数を拡大されています。厳しいながらも、何らかの手応えがあったのでしょうか。

富所 ええ。当時、数字はまだまだでしたが、利用者の方々が「カーブス」をとても喜んで使ってくださったんです。皆さんの生き生きした笑顔を見て『知名度が低いから、利用者の集まりが今一つなだけ。体験すれば、必ず気に入ってもらえる』と確信しました。それで積極的に出店したわけです。

――数字だけでなく、客の反応で事業の成長性を量り、イケると判断されたのですね。客の反応の他に、もう一つ事業の成長性を量る物差しを挙げるとしたら何でしょう。

富所 リピーターでしょうか。リピーター化は、お客様が商品に感動して気に入ってくれている証拠ですから重視しています。

――「カーブス」は、2014年12月時点で、店舗数1,543店舗、会員数660,000名を達成(※)。こちらのフランチャイズも展開初期の厳しい時期を乗り越え、大きく成長しました。
※「カーブス」ホームページ会社概要より

成長初期のフランチャイズに加盟して得たこと

メロンパン専門店「メロン・ド・パーネ」
メロンパン専門店「メロン・ド・パーネ」

――さて、富所さんは、これまで立ち上げ間もないフランチャイズに加盟し、フランチャイズの成長とともにオペレーションやマニュアルに磨きがかかっていく様を見てこられました。その中で、加盟店の立場でオペレーションやマニュアルで押さえるべきポイントや整備の手順を学ばれたと思います。最近加盟されたメロンパン専門店「メロン・ド・パーネ」では、こうした経験を生かし、フランチャイズ本部のサポート役も引き受けていらっしゃると伺いました。

富所 ええ。「メロン・ド・パーネ」の第一号加盟店を出店する一方、オペレーションのシンプル化などをお手伝いしています。「メロン・ド・パーネ」フランチャイズ本部は、1954年創業のパン製造・販売会社。同社のメロンパンは、創業時からずっと「売上ベスト3」に入ってきたというロングヒット商品です。ロングヒットぶりから見ても、メロンパンの商品力は折り紙付き。これで、素人でも美味しいメロンパンを作れるオペレーションができれば、かなり面白いフランチャイズになると考えています。

――富所さんは、成長初期のフランチャイズで学ばれたことをもとに、加盟店という枠を超えた成長の道を開かれたようです。最後に今後の計画をお聞かせください。

富所 まずは、「メロン・ド・パーネ」を大きく伸ばしたいです。弊社社員は、これまでのフランチャイズでの経験が活かせるので、「メロン・ド・パーネ」のサポートに楽しそうに取り組んでいます。私もこれを見て嬉しく感じています。そして、弊社でなければできないこと、全くオリジナルの誰も見たこともないような店をつくっていきたいです。

――楽しみですね。貴重なお話をありがとうございました。

注目のFC分野・制度紹介!
執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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