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第86回 加盟者事例(24)「居酒屋4店舗、バル3店舗。人の定着、販促に地道に取り組む」(株式会社マーチダイニング代表取締役社長 齋藤 茂生さん)

[ 2016年2月26日 ]

元は、アミューズメント施設を経営する親会社で人事部長を務めていた齋藤茂生さん。新分野である飲食業進出のために立ち上げたマーチダイニングで、まず居酒屋のライセンス店4店舗、次にからあげバルフランチャイズの加盟店3店舗をオープンしました。スタッフ定着、販促、集客などについてどう取り組んでいるのかを伺いました。

スタッフの定着を考え、店長選びで重視する点

マーチダイニング代表取締役社長 齋藤 茂生氏
マーチダイニング代表取締役社長 齋藤 茂生氏

――まず、マーチダイニングについてお聞かせください。

齋藤 本社を茨城県つくば市に置き、ブランド地鶏『地頭鶏(じとっこ)』をメイン食材にした居酒屋『日南市じとっこ組合』のライセンス店4店舗、からあげバル『がブリチキン。』フランチャイズ加盟店3店舗を運営する会社です。2014年度年商は4億円になります。

――『日南市じとっこ組合』については、2010年9月に北千住店をオープンしてから約4年間で4店舗まで拡大されました。最近、飲食業界は人手不足に悩むところが多く、特に居酒屋業態は人集めに苦労するという話を耳にしますが、御社ではいかがですか。

齋藤 2014年に『日南市じとっこ組合』神田店を出店した時には、手間取りました。アルバイトスタッフの募集広告をかけても、反応がほとんどない。時給を上げても、反応は鈍いまま。結局、主に既存スタッフの紹介で人を集めました。

――せっかく集めたスタッフ。定着してもらわなければなりません。そのために、行っていることはありますか。

齋藤 スタッフが楽しく働ける職場をつくるようにしています。例えば店長は、コストやシフトの管理がきちんとできるといった能力より、人物重視で選んでいます。スタッフにこまめに声をかけ、気分を盛り上げてくれる人に、店長職を任せているんです。弊社の店長は"できるリーダー"というより、 "みんなのお兄ちゃん"的存在です。

――やさしいお兄ちゃんの下でなら、気持ちよく働けるので、スタッフ定着率も上がりそうです。そこが、やさしい店長のメリットだとすると、デメリットはどういう点にありますか。また、そのデメリットをどうカバーしていますか。

齋藤 デメリットとしては、やさしすぎて、スタッフをまとめきれないことが考えられます。だからといって、店長が強く言いすぎてスタッフに嫌われると、店が回らなくなる。スタッフの離職や接客力低下につながりかねません。そこで、複数の店舗をまとめて見るSV(スーパーバイザー)を置き、必要があれば、SVが店長に代わってミーティングなどでガツンと言うようにしています。まだ道半ばですが、基本的にこの方向性で店長を支えながら、店舗を運営しようと考えています。

ブランド地鶏がウリの居酒屋はライセンス店
ブランド地鶏がウリの居酒屋はライセンス店

本当に、バルは人の集まりがいい?

――さて、御社は日南市じとっこ組合に次ぐ第二の飲食事業として、2015年5月に『がブリチキン。』一号店をオープンされました。2業態目の飲食店フランチャイズを選ぶ際、特に重視した条件はありましたか。

齋藤 ええ。人の集まりやすさです。先ほど触れたような、スタッフ求人での苦労は避けたいと考えました。その条件に合うものとして、人の集まりがいいと聞くカフェやバルにまず注目しました。中でも小型店で成立する事業。小さい店なら必要なスタッフ数も少ないからです。『がブリチキン。』に加盟したのは、商品力の高さに加え、小型のバル業態だった点が大きいです。

――『がブリチキン。』は、2015年5月に池袋東口店、12月に下北沢店、翌年2月には渋谷百軒店(ひゃっけんだな)店と、わずか10カ月の間に3店舗を出店されています。

齋藤 池袋東口店が好調だったこともありますが、最初から短期間で多店舗化する計画でした。小型店は売り上げも小さい。まとまった売り上げを出すためには、多店舗展開が必要なんです。

――3店舗を運営されてみて、重視されていた人の集まりはいかがでしたか。

齋藤 良かったです。新規にオープンする店舗だった点もプラスに働いたと思います。タウンワークに"おしゃれなバル"っぽい感じの求人広告をちょっと出しただけで、数十人の応募があり、いい人を選べました。

――人集めには、店舗のおしゃれなイメージが効果を発揮するようですね。

人の集まりが良かった小型のバル業態
人の集まりが良かった小型のバル業態

チェーン史上最大のテイクアウト売上達成、泥臭い販促の効果

――それでは集客面はいかがですか。がブリチキン。は、"からあげグランプリ"で金賞受賞のからあげ、タレに漬け込んでから焼き上げた骨付鳥、フルーツをウィスキーに漬け込んだ『漬け込みハイボール』など個性的な看板商品をそろえていますが、本部は名古屋にあり、首都圏での知名度はこれからというところです。

齋藤 地道に店舗を運営し、じわじわ集客しています。リピート率は、オープンからまだ日が浅い渋谷百軒店店(以下百軒店店)は除外しますが、オープン後9カ月の池袋東口店で約6割、2カ月の下北沢店で3割を超えてきています。バル業界の平均リピート率がどのくらいなのかはわかりませんが、私としては悪くない数字だと感じています。

知名度の高さは確かに集客にプラスですが、客数や売り上げを伸ばす基本は、販促や調理、接客にまじめに取り組むこと。まずは、こうした基本をきちんと押さえるようにしています。地味な販促をちゃんとやった結果、百軒店店のテイクアウト売上は大きく伸びました。

――それは、どんな販促ですか。

齋藤 あいさつ回りです。本部の指導ではなく、弊社が独自に行いました。あいさつ回りが立地特性に適していた百軒店店は、『がブリチキン。』チェーン史上最大のテイクアウト売上を出すようになりました。からあげは1個400円、テイクアウトの1パックが1000円程度です。これまでは、オープン日に3万円近く売ったのが最高記録だったと聞いていますが、百軒店店では、オープンから約10日現在で、毎日3万円を切ったことがなく、多い日は7万円を超える販売記録を達成しています。

――詳しくお聞かせください。

齋藤 弊社では、店舗のオープン時に周辺の商店などに、菓子折りと揚げたてのからあげ、テイクアウトのチラシなどを持ってごあいさつに伺っています。百軒店店の場合、周辺地域では、地元の商店がひとつにまとまり、小さなコミュニティをつくっています。そのコミュニティの中で、商店の分野ごとにまとめ役の方がいるんです。飲食店のグループには、飲食店のまとめ役がいるわけです。まとめ役の方のところにあいさつに伺うと、仲間の商店をどんどん紹介してくれました。おかげでオープン3日目ぐらいには、周辺の店舗の皆さんと百軒店店スタッフとの間で「(百軒店店)店長によろしく」「(からあげ)揚がったら持って来ますね」と声をかけあう関係になれました。あいさつ回りを契機に、百軒店店もコミュニティに加われたんです。また、幸運なことに、たまたま店舗の大家さんが地元商店会の会長と懇意にしていたので、会長にも直接ごあいさつして、からあげを召し上がって頂く機会を得られました。

こうしたことで、多くの商店の皆さんがテイクアウトを利用してくださるようになったわけです。近所の神社でお祭りが開かれた時には、70人分のテイクアウトをオーダーしてもらいました。最近では、百軒店店店長が地元飲食店オーナー達のライングループに入って、お互いの店舗が満席の時はラインでお客様を紹介しあったりしていると聞いています。

弊社の『がブリチキン。』3店舗で同じようにあいさつ回りをしたのですが、立地特性によって効果に差が出ました。例えば、下北沢店では、近隣の商店にごあいさつに伺うと、商店の皆さんは一回は来店してくださるのですが、続かない。また、池袋東口店と百軒店店の一日当たりの平均売上はいずれも10万円ちょっとなのですが、池袋東口店のテイクアウトの売り上げは、少ない日では1000円ぐらい、1万円に達することはあまりないという状況です。これだけ差が出るのは、百軒店店周辺地域のコミュニティとしての結束力が、下北沢店、池袋東口店に比べ大変強いからだと考えています。

――人同士の結び付きが強い地域では、店舗関係者が地域の一員になることで店舗の利用にはずみがつく。地元デビューのきっかけになるあいさつ回りは、是非とも取り組むべき販促ですね。

齋藤 ええ。非常に大事な活動です。しかし百軒店でも全ての飲食店が実行しているわけではないようです。地元商店の皆さんによると、百軒店店より少し前にオープンした大手飲食店からは、あいさつに来てないそうですから。もったいないなと思います。

小型店ならではの接客でリピーター化狙う

――販促に続いて、接客について伺います。先ほどリピート率は、オープン後9カ月の池袋東口店で約6割、2カ月の下北沢店で3割を超えてきているというお話がありました。リピーター化のために接客面で重視していることはなんでしょう。

齋藤 お客様との距離が近い接客です。『がブリチキン。』は小型店なので、お客様の顔を覚えやすい。ですから顔見知りのリピーターの方には「また、ご来店いただいてありがとうございます」とお声がけするなど、意識的に親近感を感じてもらえる接客を行っています。

――一一般的なフランチャイズ加盟店での接客のイメージからすると、手のかかる接客のようです。

齋藤 接客には力を入れています。魅力ある商品をそろえた、いい立地の店舗でも、接客力がないとなかなか売れないし、成功しない。店舗の成功要因は、商品や業態にもよるでしょうが、商品2割、立地6割、接客2割というところ。フランチャイズの場合、商品ほ基本的に本部任せだし、立地はカンタンに変えられません。でも接客は、加盟者の努力次第で改善できる。接客をどう考え、どんな姿勢でお客様に接すれば喜んでいただけるか、リピーター化できるかを考え、これらを店長やスタッフと共有し、実行していければ売り上げは変わってきます。

今後の計画とアドバイス

――それでは最後に今後の計画と、フランチャイズ加盟を検討中の読者にアドバイスをお願いいたします。

齋藤 弊社としては、フランチャイズ事業に加え、オリジナルの飲食店を手がけたいです。社員が希望しているので、社員の夢を形にしてやりたいのです。それは社員の定着にもつながっていくと考えています。

フランチャイズ加盟を考えている方に伝えたいのは、基本的なことですが、フランチャイズに加盟しさえすればなんとかなるわけではない、加盟者自ら売る努力をしなければならないということ。繰り返しになりますが、加盟者が接客力を磨かかなければ売れないし、成功は遠のきます。

――ありがとうございました。

注目のFC分野・制度紹介!
執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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