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連載コラム

第88回 加盟者事例(25)「山口県下関市のメガフランチャイジー、スタッフの徹底管理・教育で事業拡大」(株式会社ニッシンコーポレーション代表取締役 河野 信隆さん)

[ 2016年4月28日 ]

山口県下関市に本社を置くニッシンコーポレーション。複数の飲食、サービス分野のフランチャイズに加盟し、フランチャイズ加盟店24店舗、7拠点を運営する一方、オリジナル業態の飲食店を国内、海外で展開中です。多店舗化の要であるパート・アルバイトの教育・管理、店長の育成、人手不足時代の人材確保などについてお話を伺いました。

ホーム‐グラウンドは山口・福岡・広島、中国・インドネシアにも進出

ニッシンコーポレーション代表取締役 河野 信隆氏
ニッシンコーポレーション代表取締役 河野 信隆氏

――ニッシンコーポレーションとは、どういう会社でしょうか。

河野 山口県下関市で、主にフランチャイズ事業を手がけている会社です。新たに、自社で開発した飲食店の国内やアジアでの出店も始めています。

 具体的なフランチャイズ事業としては、まずサービス分野では、家事代行『メリーメイドサービス』、害虫駆除『ターミニックス』などダスキンブランドの事業を行う事業所など加盟事業所7拠点、飲食分野では、ドーナツショップ『ミスタードーナツ』9店舗、中華食堂『大阪王将』8店舗、焼肉店『牛角』2店舗など、加盟店24店舗を運営しています。また自社ブランドの飲食店は国内2店舗、海外は中国で直営3店舗(子会社運営店舗含む)、加盟店3店舗、インドネシアでライセンス契約店3店舗を数えます。

 弊社を支える正社員は87名、パート・アルバイト710名(平成28年3月31日現在)、2015年度の売上高は約28億4700万円です。

――どういう経緯でフランチャイズ事業に取り組むようになったのでしょう。

河野 話は、私の父の代にまでさかのぼります。父から直接聞いたことはないので、おそらくこうだろうと思うことをお話しします。昭和16年(1941年)、父と叔父は園芸用品などを扱う商売を始めたのですが、そのうち将来を考えて新規事業を探し始めたようです。そこで、たまたま出会ったのがダスキン。科学ぞうきんを扱うフランチャイズは面白いんじゃないかと、昭和43年(1968年)にニッシンコーポレーションを立ち上げ、フランチャイズに加盟して事業を始めたのだと思います。この頃のことで私が覚えているのは、ダスキンの黄色い営業車。まだ小さかった私は、これに乗って出かけるのが嬉しくて(笑)。この車に私がちょこんと乗っている写真が、今も残っています。

パート・アルバイト、権限委譲と徹底管理の両輪で育てる

複数店舗出店できることが加盟条件の一つ
複数店舗出店できることが加盟条件の一つ

――フランチャイズ事業への取り組みは、先代である河野さんのお父さんから始まりました。その後を引き継がれた河野さんは、どういう基準でフランチャイズを選ばれてきましたか。

河野 まずは山口、広島、福岡など、弊社のメイン出店エリアに複数店舗を出店できる事業か、次にフランチャイズ本部トップの企業理念に賛同できるか、そして人が育つ業態かという点を重視して選んできました。人が育つ業態とは、ある程度以上の売り上げがあり、創意工夫をして運営する必要がある業態のことです。そういう業態の店舗で働く人は学ぶことが多く、よく育ちます。

――そうして選んだフランチャイズ事業の多店舗化を進め、メガフランチャイジーにまで成長されました。多店舗化を円滑に進めるには、適切な人の管理、教育が必要になってきます。御社でのスタッフ管理や教育は、どのように行われているのでしょう。

河野 徹底した管理のもと、任せて育てる教育を進めています。人は権限委譲なしには育たないもの。これは、パート・アルバイトスタッフにも共通していることです。そこで、パート・アルバイトでもお金を扱わせるなど、責任ある仕事を任せて育てています。

 こう言うと、「うちではお金のトラブルが怖いから、パート・アルバイトにお金はさわらせられない」とおっしゃる加盟店オーナーさんがいらっしゃいます。確かに現金管理など大事な仕事を担当させると、スタッフのやる気は高まり、成長しやすくなりますが、トラブル発生リスクもアップします。それならトラブルが発生しにくい管理体制を整えてから、お金の管理をお願いすればいい。弊社では、例えば、マネージャーが、店舗の小口現金や釣り銭のぬき打ちチェックを月1回~2回実施、1円単位まできっちり確認します。「たった1円なんだから合わなくても」というような考えは、一切受け付けません。万一、1000円単位でお金が合わなければ始末書です。

 このように教育と管理の両輪で信頼できる優秀なスタッフを育てているので、1店舗に付き社員は1名のみ、後はパート、アルバイトで店を回していけます。それだけローコストで店舗運営できるので、次の店舗の出店資金も確保しやすくなっています。パート・アルバイトにはお金をさわらせないという考えでは、2人以上の社員を店舗におかなければならなくなり、それだけ人件費がかかって生産性が落ちてしまいます。

基本ができたら即、店長!後の教育は現場で行う

――頼れるパート・アルバイトの育成は、店舗の生産性アップ、多店舗化促進にもつながっているようです。それでは社員教育についてはいかがですか。

河野 「新卒入社で1年後には店長」が弊社のスタンダードです。わたくし共の店長は5つのクラスに分かれています。クラス別に給料も異なります。最初のクラスでは、飲食店なら、調理など店で求められる基本が身に付いている程度。本来、店長に求められるアルバイトの動機づけや教育などは、まだできていない状態です。しかしこのクラスでも、店長として店に出します。そして現場でマネージャーがフォローしながら、アルバイトの教育や効果的な販促、計画に沿った自分の店の育成などができる最上級の店長にまで育てていきます。

 社員が必要なスキルを完全に身につけてから店長に抜擢していたのでは、店長になるまでに時間がかかりすぎてしまう。そこに到達する前に、社員は辞めてしまうかもしれない。そういうリスクを避けるためにも、早期に店長職に就け、現場で育てたほうがいい。

 また、社員たちには、会社の事業計画などをもとに、「3年後、会社はこれだけ店舗が増えている。だから複数店舗の統括店長が必要になってくる。統括店長職に就くには、店長クラスにも指導できる技術が必要だね」など、具体的な会社の将来図、その中で個々の社員にはどんなポジションが考えられるのか、その地位を得るにはどんな能力が必要かを提示しています。そうすると、大抵の場合、社内での新たなポジションに向けて、社員も努力して育ってくれますし、結果的に計画に沿って事業を展開できることにもなっています。

人手不足問題への取り組み

――パート・アルバイトや社員の管理・教育の上にここまで成長してこられましたが、昨今はいかがですか。最近、飲食業界は管理・教育以前に、人が集まらず悩んでいるという声が少なくありません。

河野 やりたいことはある。"人・もの・金"のうち、ものと金は用意できる。でも人手が足りないという状態です。ここ2年ぐらいは新卒が採用しずらく、試行錯誤して人を集めています。

――効果を期待できる人集めの方法などがあれば、お聞かせください。

河野 やる気がある人からの反応を期待できるのは、独立希望者を意識した求人。また、今後積極的に取り組もうと考えているのが、外国人採用です。

 求人情報サイトで、独立を夢見ている人を念頭に、「5年後、10年後の独立・起業を目指し、ニッシンコーポレーションに入社してください。経営実務など独立に必要なノウハウは全て弊社で教えましょう。ここで働きながら学び、スキルアップしてから独立してください」という趣旨の呼びかけをしたんです。この求人には、高い志を持った人たちからの問い合わせが目立ったようです。彼らが、弊社に入って、仕事を通じて学び、独立して成功する。今では、そういう姿を目にするのが、私の夢の一つになっています。

 一方、今後、外国人社員の比率を増やす方向で考えています。現在、弊社では大阪王将の加盟店8店舗を運営しており、調理師として6人の中国人社員を雇っています。当初、中国人社員の職務は調理面だけを考えていましたが、マネジメントもやりたい、できるという社員が出てきたので、日本人社員と同等の能力を求め、教育するように変更しました。既に、日本人店長の代行、サポート役を任せられる中国人社員も育ってきています。

――中国人社員を教育する上で、言葉の壁以外ではどういうところが難しいですか。

河野 笑顔での接客やお客様への声がけという、日本的なホスピタリティになじみがない点です。社員教育でおもてなしを教えた結果、今では笑みを浮かべて温かくお客様に対応していますが、最初は、笑顔なんて仕事に必要ないと考えていたようでした。

中国でも支持された日本的おもてなし

主力業態の一つ、『大阪王将』では中国人社員活躍
主力業態の一つ、『大阪王将』では中国人社員活躍

――御社では、外国人社員教育で結果を出されています。この成果は、海外での事業展開を後押ししてくれそうです。

河野 今後は、日本的おもてなしを学んだ外国人社員を海外に派遣したり、海外で採用した社員を国内で研修したりなどすることも考えられます。日本のサービスを理解している社員を育て、アジアに日本のホスピタリティを広める。これが今一番やりたいことです。

 日本の飲食店がアジアに多数進出していますが、日本のおもてなしの文化はまだまだ浸透していない。弊社の自社業態であるたこ焼き店『大和屋』を中国に出店した際は、「いらっしゃいませ」「できたてをいかがですか」と声がけをしたり、笑顔で接したりすると、現地の方々からは怪訝そうな顔を向けられました。中国人スタッフの中には、笑顔での接客に違和感を覚えて仕事を辞めるものもいました。中国では、まだ店舗でのおもてなしが根付いていないのです。でも、現地の人に「にっこり笑った接客とぶすっとした接客、どっちがいい?」と聞くと笑顔の接客と答えるんです。

――アジアで日本の接客力を備えた店舗を展開できれば、大きなビジネスチャンスを掘り起こせそうです。

河野 ええ。実は、中国の方が、中国・広州のイオンモールに出店した『大和屋』の接客ぶりを評価して『大和屋』に加盟することになり、この4月(2016年)に加盟店をオープン予定なんです。中国で日本的おもてなしが支持されたわけです。

 中国をはじめアジアの国々が活気を感じさせる一方、日本は超高齢社会にあり人口減少が続いています。まだしも人が集まってくる東京と違い、人口が減り続ける地方にこのままとどまっていては、弊社の成長も鈍化してくる。弊社が成長を続けていくためにも、将来の選択肢の一つとして海外事業は育てていきたいと考えています。

フランチャイズ事業を検討中の読者にアドバイス

――それでは最後にフランチャイズ事業を考えている読者にアドバイスをお願いいたします。

河野 加盟店の成功は、店舗の運営力によるところが大きい。社員、アルバイト・パートの教育をしっかりやって生産性を上げることが重要です。

――貴重なお話をありがとうございました。

注目のFC分野・制度紹介!
執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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