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連載コラム

第96回 加盟者事例(29)「本業は製造業、飲食店フランチャイズは売り上げの新たな柱」(株式会社アッセン 取締役専務 中村 信行さん)

[ 2016年12月26日 ]

福岡県久留米市に本社を置く株式会社アッセン。新たな収入源の確保、本業の製造業社員のために飲食店店長というポストをつくるなどの理由から、2つの飲食店フランチャイズに加盟し、合計4店舗を運営中です。同社専務の中村さんに、今日までの加盟店経営で学んだことを伺いました。

自動車部品製造業から飲食店経営に乗り出す

アッセン取締役専務 中村 信行氏
アッセン取締役専務 中村 信行氏

――御社をご紹介ください。

中村 弊社「株式会社アッセン」は、2003年設立の自動車部品製造会社です。2014年に、当社初の飲食店フランチャイズ加盟店を出店し、今では自動車部品工場2棟のほか、フランチャイズ事業として、しゃぶしゃぶ店「しゃぶしゃぶ温野菜」、オムライス専門店「おむらいす亭」の加盟店をそれぞれ2店舗、合計4店舗運営しています。正社員40名、パート・アルバイトスタッフ70名を数え、2015年度年商は5億円になります。

――なぜ、飲食店のフランチャイズ事業を始められたのでしょう。

中村 自動車部品製造業は業界自体が、右肩上がりの成長を望みにくい状態なので、本業以外の売り上げの柱が欲しかったからです。飲食店フランチャイズに加盟すれば、飲食店の店長という新しいポストをつくったり、福利厚生の一つとして、例えば社員に飲食店を半額で使ってもらったりなどできるので、社員のモチベーションアップにもつながるし、異業種ノウハウも学べる。こういうこともフランチャイズ事業参入の理由でした。

――それでは、どういう条件でフランチャイズを選びましたか。

中村 開業資金などが予算内に収まることはもちろん、流行ものではなく、長く続けられそうな店であることです。

これから続く高齢社会を考えると、高齢者に支持されやすい店は長く繁栄できる可能性が高い。高齢の方は意外にお肉が好きと言われますし、お肉といっしょに野菜も取れるヘルシーな「しゃぶしゃぶ温野菜」は、今後の需要拡大が期待できました。また、おむらいすも年配の方に人気ですし、「おむらいす亭」は和風メニューが多いので、高齢のお客様を集められそうでした。それで「しゃぶしゃぶ温野菜」と「おむらいす亭」を選んだわけです。

フードコートへの出店、メリットとデメリット

――運営されている「しゃぶしゃぶ温野菜」、「おむらいす亭」の加盟店についてお聞かせください。

中村 「しゃぶしゃぶ温野菜」は、福岡の久留米上津(かみつ)バイパス店、佐賀の鳥栖(とす)店の2店舗を経営しており、いずれも郊外型店舗。それぞれ坪数は60坪、100坪ぐらいで平均月商が500万円~600万円。一方、「おむらいす亭」は、福岡のゆめタウン久留米店、長崎のゆめタウン夢彩都(ゆめさいと)店の2店舗で、どちらもショッピングセンター"ゆめタウン"内のフードコートに出店。広さも同じ20坪程度で平均月商500万円ぐらいです。
こちらは、2店舗とも本部からの紹介でテナント出店しました。

――フードコート内の2店舗は郊外型の2店舗と比べると、かなり効率的に売り上げを出しているように見えます。

中村 ええ。ここまで効率よく利益が出せるのは、出店しているゆめタウンの集客力が高いから。これにつきます。郊外にもいい立地はありますが、そういうところは、多くの場合、既に別の店が出ているもの。郊外で新たにいい立地を見つけるのは、なかなか難しい。そういう意味では、集客力ある商業施設への出店は大変魅力的です。

――出店されている、ゆめタウン久留米、夢彩都の年商はどのくらいですか。

中村 久留米が250億円、夢彩都が200億円です。どちらの施設も、平日のランチタイムでも、それなりに集客できますし、週末は駐車場がいっぱいで入れないぐらい混雑します。

――集客力以外の商業施設のメリットを挙げるとしたら何でしょう。合わせて、デメリットもお聞かせください。

中村 メリットは、施設側が店の売り上げを管理してくれるので現金管理がラクなこと、警備員がいるのでセキュリティの心配がないこと。そして、スタッフの集まりの良さ。商業施設は雰囲気も、アクセスも良いし、仕事帰りに買い物もできるので、求人への反応がいいのです。

反対に、デメリットは変動制の家賃。売り上げが上がると家賃が変わるのは、独立型店舗にはないデメリットです。ただし、メリットが多いので、あまり気にならないです。

フードコートでの集客

落ち着いた雰囲気で人気の「おむらいす亭」ゆめタウン久留米店
落ち着いた雰囲気で人気の「おむらいす亭」ゆめタウン久留米店

――ところで、フードコート内に出店する場合、場所によって集客に差は出るものですか。

中村 あまり関係ないように思います。大抵、お客様はフードコート内の飲食店を紹介したパネルをチェックしたり、フードコート全体を一通り見渡してから利用する店を決めますから。

――そうすると、フードコート内での集客の第一歩は、客の目に留まる店舗デザインというところでしょうか。

中村 そうですね。後は演出も大事です。「おむらいす亭」の場合、大人っぽい店舗デザインなので、若者向けの店が多いフードコート内では目を引きます。落ち着いた雰囲気は、特に中高年のお客様を集めるのにプラスだと思います。また、オープンキッチンになっているため、美味しそうにできあがっていく料理の様子が、お客様の目に入ります。このシズル感が強い"つかみ"になっています。

――先ほど、加盟理由として「おむらいす亭」の高齢者集客力への期待を挙げられました。実際に出店してみていかがですか。

中村 高齢の方をよく集客できていると思います。どちらのフードコートでも、高齢のお客様の間で一番人気なのは、うどん店なのですが、「おむらいす亭」も二番手、三番手ぐらいにつけていますから。

クレームが多くなりがちなオープン当初、どう乗り切ったか

――集客の第一歩は、店舗デザインや演出など、本部の力によるところが大きいですが、リピーター化に必要な接客力などは、加盟店側に求められます。クレームが多くなりがちなオープン当初、まだ店舗運営に慣れていないスタッフで、どう接客しましたか。

中村 本部のベテラン社員による "オープン支援"を受けながら、接客しました。オープン間もない頃のスタッフの緊張感は、すごいものです。でも、スタッフが仕事に慣れない間は、特に店が混雑する週末などを中心に、本部のベテランが店に入って、実際に運営を手助けしながらスタッフ指導も行ってくれたので、深刻なクレームもなく、店舗運営を軌道に乗せられました。

もし、スタッフの習熟度を考慮しない、決められた期間だけのオープン支援だったら、店の立ち上げは上手くいかなかったと思います。1週間程度の支援では、スタッフは何も覚えられない。良く分かっていないスタッフだけでは現場は混乱し、クレームも増える。緊張や疲労から心が折れ、辞めてしまうスタッフも出てくるでしょう。スタッフの不手際からお客様が離れてしまうことも考えられる。

本部による柔軟なオープン支援のおかげで、こうした事態を免れました。

製造業育ちの社員を飲食店店長に

「しゃぶしゃぶ温野菜」の店長はバイザーと育成
「しゃぶしゃぶ温野菜」の店長はバイザーと育成

――さて、取材の冒頭で、飲食店フランチャイズ事業を始めた理由の一つとして、本業の製造業の社員のために、飲食店の店長という新しいポストをつくることを挙げていただきました。現在、4店舗の飲食店の店長の中で、何名の方が元製造業社員ですか。

中村 以前は、店長4名中3名でしたが、1名ほど製造業に戻したので、現時点では、元製造業社員の店長は「しゃぶしゃぶ温野菜」の男性2名です。「おむらいす亭」の店長2名はいずれも女性で、新たに採用した人たちです。

――飲食店運営に乗り出されてから約2年半の経験を踏まえ、具体的にどういう社員が飲食店店長に向いているとお考えですか。

中村 コミュニケーション能力が高く、責任感が強い社員です。さらに具体的に言うと、アルバイトスタッフの不満に耳を傾けたり、ささいなクレームに対しても自ら前面に出て責任を取ったりできる人です。そういう店長でなければ、スタッフとの信頼関係を築くのが難しいです。

「あのスタッフは、ちゃんと働かない」など、スタッフの間で不満がある場合、店長はそれぞれの言い分を聞いて、「こういう理由で働けなかったのだ」と不満を感じているスタッフに伝えるなど、スタッフ同士の仲を取りもたなければなりません。また、ちょっとしたクレームだったとしても、店長が前に出て対応し、スタッフを守る姿勢を見せる必要があります。

スタッフの不満をそのままにしたり、クレーム処理をスタッフ任せにしていると、スタッフの不満が高まり、店の雰囲気は悪くなるし、離職者も出ます。

――製造業出身店長によく見られる特徴などはありますか。

中村 キッチンに入りたがります。製造業でコツコツ物を造ってきた人なので、調理など、つくることが好きだからでしょう。キッチンに行ってしまうと、調理に集中してしまって、ホールに出てこなくなる。そのせいで、店長は、ホールで何が起きているか、把握できなくなり、接客など店長本来の仕事がおろそかになりがちです。

――そういう製造業育ちの社員を、どうやって飲食店店長へと育てていかれましたか。

中村 「しゃぶしゃぶ温野菜」のスーパーバイザーの知恵と力を借り、協力して育成しました。バイザーが、店長に、ホールに注意を向け、接客を重視するよう指導する一方、私は、適宜、店長と一杯やる時間をつくって、労をねぎらったり、話を聞いたりしながら、社員が飲食店店長へと意識を変えるサポートをしていきました。店長として独り立ちできるまで、スタッフの中で接客が上手な人を選んで補佐をしてもらったりもしました。店長へと変わらなければならない社員も、苦しかったはず。時間をかけて店長職に慣れてもらいました。

採用難の切り札は店長力

――最近は、店長育成と合わせ、スタッフ採用、定着に悩む飲食店が少なくありません。以前と比べ、採用や定着が難しくなった感じはありますか。

中村 採用については、ここ一年ぐらい感じています。大手が時給を上げてきた分、われわれは人を採りにくくなってきたというところでしょうか。

ただし、おむらいす亭2店舗については、先ほど申し上げたように商業施設なので人の集まりは良いですし、おまけに女性店長が非常に優秀で、スタッフと信頼関係を築けているので、オープン以降、就職などによる離職者以外、店をやめたスタッフはいません。辞めていくスタッフが、わざわざ後輩を紹介してくれるぐらいです。人の採用・定着については、かなりの部分が店長にかかっていると思います。人間関係のトラブルが多い時代ですから、多少時給が低くても、スタッフからみて頼れる店長がいれば、大手に引けを取らず人を採用し、高いスタッフ定着率を保てるのではないかと考えています。

今後の計画とアドバイス

――今後の計画と、これから飲食系フランチャイズ事業を考えている法人読者へのアドバイスなどお願いします。

中村 来年は新しく加盟した焼き肉店のフランチャイズ加盟店、「しゃぶしゃぶ温野菜」、「おむらいす亭」の新店舗など1店舗~2店舗は出店予定です。

アドバイスとしては、飲食店フランチャイズの場合、店舗立ち上げ時の本部によるオープン支援がとても大事なので、加盟前にその充実度を確認したり、場合によってはオープン支援期間の延長を交渉してみたりしてもいいのではないかと思います。

――貴重なお話しとご意見をありがとうございました。

注目のFC分野・制度紹介!
執筆者:松本陽子

ツーウェイコミュニケーションズ代表。米国オベリン大学留学を経て桜美林大学英語英米文学科卒業。FCプランナー。加盟店、及び顧客開発に的を絞ったWebサイトコンテンツ、各種販促PR企画などの立案・制作・実施を中心に、FC本部のサポートを行う。「日経MJ」などの経営専門誌のほか「レタスクラブ」女性向けサイト「21Lady.com」など一般向け媒体にも寄稿。「フランチャイズ関連セミナー」などのコーディネーター、テレビ番組出演などを通じFC事業の啓蒙活動も行う。主な著書「中高年のためのFC店開業講座」「妻と夫のためのFC店開業講座」(いずれも共著・日本経済新聞社刊)

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