第38回 中古携帯電話業界リポート ~大手携帯電話販売店も参入~
[ 2012.01.27 ]
(社)日本フランチャイズチェーン協会発表の「2010年度 JFAフランチャイズチェーン統計調査」によると、中古品FCチェーンの売上高は前年比3.8%増、店舗数は14.2%増と2ケタ台の伸びを示している。中古品分野は、本、ブランド品など幅広い商品分野に広がっているが、そのなかでもここ数年増加しているのは中古携帯電話分野である。今回は中古携帯電話業界の動向についてリポートする。
端末価格が高騰し中古携帯電話に注目が集まる
日本国内の携帯電話・PHSの契約数は、約1億2,600万台(2011年12月)に達している。機種変更・買い増しにより最新端末を購入したいユーザーも相当数存在するはずだが、2007年度までは5,000万台前後あった携帯電話の国内出荷台数は、2008年度以降は3,200万台前後にまで落ち込んでいる。
これは、販売方法の変化による端末価格の高騰が大きく影響している。
2007年度以前、携帯電話の販売は"販売奨励金制度"が前提となっており、最新機種でも安価に購入することができていた。しかし、利用者の通信料を奨励金の原資としていた点などが問題になり、2007年6月に総務省は販売奨励金制度の段階的廃止を指導、通信キャリア各社は販売方法を見直した。その結果、通信料は下がったが端末価格は5~6万円へと高騰した。
価格高騰に加え2008年の米国発金融危機による不況の影響もあり、比較的新しい機種が安価に購入できる中古携帯電話に注目が集まっている。(社)中古情報機器(RITEA)によると、会員会社の中古携帯電話販売台数は、2008年度から2010年度の間で25倍近くまで増加している。今後は、主流になりつつあるスマートフォンへの乗り換え需要の高まりや、携帯電話を特定の通信キャリアでしか利用できないようにする"SIMロック"の解除の流れなどにより、ますます中古携帯電話市場が活性化されるであろう。
大手携帯電話販売店も参入
これまで中古携帯電話を扱うのは、ネット販売業者や中小の販売店などの小規模なショップが中心であった。しかしここへきて、大手の携帯電話販売店が中古携帯電話市場に参入するようになっている。
例えば、携帯電話販売大手の日本テレホンは、中古携帯電話ショップ「エコたん」をFC展開している。2012年1月1日時点で、直営店 11店舗、販売・買取専門店 2店舗、買取専門店 2店舗、FC加盟店121店舗の合計136店舗を展開している。
エコたんは極めて狭いスペース(1坪以下)での展開を可能としている。独自の買取システムで、本部による在庫の一括買上も行なっている。また、買い取った端末の滅菌処理、データ消去は独自に設置したクリーンセンターにて行っている。
FC加盟の検討ポイント
中古携帯電話は急成長分野であるとともに、大きな初期投資額や特別な技術・知識が不要と思われがちであることから参入者も多い。しかし中古携帯電話ならではの問題もあり、簡単に成功できるほど甘くはない。FC本部ごとにビジネスモデルは異なり、加盟金が数十万円のものから数百万円のものと幅が広く収支モデルも異なる(下表参考)。加盟にあたっては本部に運営ノウハウや問題に対応できる体制・制度があるかは重要なポイントとなる。
【ビジネスモデルの種類】
買取・販売の形態としては、加盟者は買取専門とし本部が全てを買い上げるもの、加盟者で買取・販売の両方を行なうものなどがある。また、店舗形態としては、既存店舗の一画の活用を前提としたもの、中~大型店舗で携帯アクセサリーや周辺機器の販売も行なうものなどがある。当然、それぞれの形態ごとに初期投資額や収支モデルは異なる。当該FC本部において、自身(自社)の希望にあったビジネスモデルが展開可能なのかは最初に確認する必要がある。
【相場情報の提供、商品供給、在庫処理】
携帯電話はモデルチェンジの間隔が短く、売れ筋や売買価格の変動が激しい。機器情報や使用状態を元に即座に査定できるシステムが用意されているかがポイントとなる。また、売れ筋の端末が手に入りづらい、大量に仕入れても全てを販売しきれないなど仕入れや在庫の問題もある。商品供給のしくみや全在庫の一括買取制度の有無がポイントとなる。
【中古イメージの払拭、安心・安全の提供】
携帯電話は電子機器であり動作保証ができなければジャンク品扱いとなる。また、手で直接触れるものであり傷や汚れもつきやすい。さらに、端末には個人情報が大量に格納されており、専門家の手にかかれば復元することは容易である。動作確認、クリーニング、個人情報の完全削除など、中古携帯端末を商品化するしくみの有無がポイントになる。
また、窃盗団による盗難品や、以前の利用者の支払遅延により利用停止状態になった端末の売買などの問題が発生している。これらの問題を事前にチェックできるシステムや一定期間の保証・返品制度など、トラブルを回避する体制・制度が備わっているかは大きなポイントとなる。
(中小企業診断士 高木 仁)
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- 執筆者:フランチャイズ研究会
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