連載コラム

第41回 社員独立フランチャイズについて

[ 2012年4月27日 ]

社員独立フランチャイズとは

 従来から、ラーメン店や美容室のような職人の世界では、いわゆる「のれん分け制度」があり、茶道や華道の世界では、師匠から免許を受けて弟子が教室を開く「家元制度」があった。これらは師匠の下で修業し、一人前になった弟子が、師匠から看板の使用を認められる形で円満に独立する方法である。
 これらと類似するものとして、近年、フランチャイズ本部で勤務した従業員が、フランチャイジーとして独立する社員独立型のフランチャイズが増加してきている。従業員は本部での勤務経験から、当該フランチャイズのノウハウを習得し、加盟店として独立するのである。

加盟希望者にとって社員独立フランチャイズを利用するメリット・デメリット
メリット ① 本部の資産を利用して独立する場合、初期投資(開業資金)が少なく
  て済む場合がある。
② 開業までに十分な時間をかけてノウハウを習得することができる。
③ (従業員への報奨を目的とする社員独立フランチャイズの場合)外部
  加盟と比較して加盟金やロイヤルティが免除・軽減される場合がある。
④ 従業員として勤務中に自己資金を形成することができる。
デメリット ① (本部設備を利用する場合)高額な利用料またはロイヤルティを徴収される。
② (本部設備を利用する場合)長期の契約に拘束されることがある。
③ 加盟希望者の意思よりも本部の都合や事業計画が重視される場合がある。


社員独立フランチャイズのタイプ

 このような社員独立フランチャイズは、その制度の目的に応じて、大きく二つのタイプに分けて考えることができる。

 先ず一つは、フランチャイズ本部で働く従業員を対象に、「モチベーションの向上」「起業家精神の高揚」「従業員の会社に対する長年の貢献への報奨」等を図る目的で行われる社員独立フランチャイズである(本稿では以下このタイプを「キャリアプラン型」という。)。
 キャリアプラン型の社員独立フランチャイズは、フランチャイズ本部の労働政策の一環として、飲食業等、従業員の独立志向が比較的強い業界において従来から行われてきており、最初に述べた「のれん分け」と同種の社員独立制度である。

 これとは別に、フランチャイズの加盟希望者が、最終的には本部とフランチャイズ契約を締結することを目的とするものの、その前に本部と一時的に労働契約を締結し、本部の従業員として稼働した後に加盟店として独立するタイプの社員独立制度がある(本稿では以下このタイプを「ステップ型」という。)。
 ステップ型の社員独立フランチャイズでは、加盟希望者は本部従業員として働くことで当該チェーンの精神や運営ノウハウを習得し、他方、本部は加盟希望者の稼働状況を観察することで、当該加盟希望者を加盟させるべきか否かを判断する。
 これは、フランチャイズ契約締結のための過程として社員独立制度を利用するものであり、カレーハウスCoCo壱番屋が採用する「ブルームシステム」が著名であるが、近年ではコンビニフランチャイズ等でも多く利用されるようになってきている。

キャリアプラン型で独立する際の注意点

 キャリアプラン型の社員独立フランチャイズでは、従来、本部と雇用関係にあった従業員がフランチャイズ加盟店として独立し、本部と対等な事業者となる。
 ところが、長年の雇用関係で培われた上下関係を解消することができず、本部と独立従業員の関係がなれ合いになることがしばしば起こる。例えば、フランチャイズ加盟の際の説明がおざなりにされたり、本部の不採算直営店を独立従業員に押し付ける等、本部の都合が優先される危険がある。
 そこで、独立従業員としては、独立した事業者となるのだという自覚を持って、本部と対等に交渉する必要がある。
 また、独立従業員は、経営者として店舗を経営するための税務、会計、資金調達に関する知識等、従業員時代には特に必要とされなかった知識についても積極的に習得する必要がある。

ステップ型で独立する際の注意点

 ステップ型のフランチャイズでは、加盟希望者は通常数カ月から2年程度の短期間の労働契約を本部と締結し、一時的に本部の従業員として稼働する。この労働契約の期間を経ることで、加盟希望者はそのチェーンの事業を理解し、本部は加盟希望者の適性を判断することが可能となり、両者のミスマッチが防止されるメリットがある。
 しかし、労働契約期間が長期に及ぶことで、最初は高かった加盟希望者のモチベーションが低下し、フランチャイズ加盟にまで至らない危険があるので、加盟希望者としては、常にモチベーションを高める努力が必要となる。
 また、ステップ型の場合、最終的な目的はフランチャイズ契約の締結であるものの、その前に労働契約を締結するので、労働条件について本部とトラブルになる危険がある。加盟希望者は、フランチャイズ契約についてのみならず、労働条件(待遇、雇用期間、雇止めなど)についても、本部から十分に説明を受ける必要がある。

(弁護士 井嶋倫子)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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